【E36 M3C】各部メンテナンス 【116,000Km】
今回のメンテナンスレポートは、E36 M3Cの各部メンテナンス です。走行距離は116,000Km。
E36 M3Cは、2世代目のM3の後期モデルとして、1995年~1998年まで生産されました。
前期モデルのスペックは、3L 直列6気筒DOHC 286PS/32.7kgf·m の5速MTに対し、
後期型では3.2L 321PS/35.7kgf·m にパワーアップされ、6速MT、もしくは6速SMG(セミAT)が選択可能になりました。
オプションで設定されたSMGは、基本的にマニュアルトランスミッションに電子油圧式のクラッチを組み合わせたもので、
クラッチペダルがなく、ドライバーはステアリングホイールのパドルシフターまたは、シフトレバーを使ってギアチェンジを行い、
従来のクラッチの操作は車輛のコンピューターが自動で行っています。
F1で培った技術をフィードバックし、初めて市販車に搭載した技術は当時としては非常に挑戦的な試みだったのですが、
開発が初期段階であった為、特に発進時の半クラッチの制御や、低速走行時のギクシャク感等、耐久性や信頼性の問題が指摘されました。
当時は換装キットも販売され、SMGをMTへ換装してしまうオーナーも少なくなかった印象です。
初代SMGは2000年代初期に良く修理しましたが、なかなか手強かったのも良い思い出です。
今回は、経年による劣化の症状が各部に出ていた為、見落としがない様に各部の点検・修理を進めていきましょう。
操作パネルのエアコン操作スイッチの反応が悪かった為、外して操作パネルユニットの配線基板を取り出して修理を行います。
E36モデル後期のパネルでは良くあるトラブルのひとつで、経年で配線基板が剥離等の影響で接触不良を起こし、
反応が悪くなって操作が出来なくなってしまう症状になります。
配線基板の修理方法は秘密です。
インテーク周辺の劣化を点検していると…
インマニのエアガイドのジャバラ部に亀裂を発見。
この頃はこのインテークパイプが生産中でメーカー在庫なかった為、補修で対応。
昨年の夏前頃からデリバリー始まったので10個ほど在庫しました。
ゴムの弾性もまだあった為、熱溶着
エンジンマウントに複数の亀裂が入っており、交換が必要な状態。
エンジンマウントは、エンジンを車体(ボディ)に固定するための部品で、重いエンジンを支えて振動を吸収したり、
加速・減速時にエンジンの回転方向の揺れ(トルク反動)を抑えています。
これによって乗り心地や操作性を向上させており、エンジンの振動等で他の部品に掛かる負担を軽減する効果もあります。
劣化が進行すると、信号待ち等で停車中にハンドルやシート、フロアから強い振動が伝わるケースや、
劣化が酷くなれば、車全体がガタガタと揺れる様に感じたり、
加速・減速時に「ゴトゴト」「ガツン」といった衝撃音や、異音等が発生する事があります。
エンジンの揺れが大きくなった影響で金属部分がどこかに接触してしまうケースや、AT車の場合、
PからDやRにシフトを入れた際の「ガクン」という衝撃が大きくなったり、MT車の場合では、
低速でのシフトチェンジがスムーズに行き難くなる等の症状を感じます。
エンジンが大きく揺れて不安定になる事で、安定した操作が出来なくなってしまう為
この様な症状を感じた際は、早めに掛かりつけの工場等に相談する事が大切です。
逆側のエンジンマウントにも同様に多数の亀裂が出ており、交換が必要な状態。
片側ずつエンジンマウントを外し交換を行います。
新旧の助手席側のエンジンマウント。
新品と見比べて見ると、亀裂だけでなく弾力性が失われてエンジンマウント全体が潰れて厚みが変わってしまっています。
劣化の影響でマウントが潰れてエンジンの位置が下がってしまうと、下廻りやスポイラーを擦ったり、
エンジンとミッションの位置関係が変わる為、プロペラシャフトやドライブシャフトの角度に無理が生じ
回転バランスが狂ったり、オイルシールが劣化する原因になる為、注意が必要です。
また、エンジンの位置が変わってしまう事で、エンジンとボディを繋いでいるラジエーターホースや
各種配線が引っ張られ、破損や水漏れ、断線といったトラブルに繋がったり、
冷却ファンがシュラウド(ファンカバー)に接触、プーリーが他の部品に干渉したりする恐れがある為
こまめなチェックを心がけましょう。
拡大して見ると、細かい亀裂だけでなく広範囲に亀裂が広がっている事が判ります。
片側に新しいエンジンマウントを装着。
次に逆側の古いエンジンマウントを外します。
新旧のエンジンマウント。
こちらも同様に細かい亀裂や厚みの違いが判ります。
拡大して見ると、こちらには大きな亀裂はありませんが、劣化の影響で多くの細かい亀裂が発生。
新しいエンジンマウントを装着し、交換作業が完了。
エンジンマウントは、明確な交換時期は決まっておらず、走行距離や年式、運転方法や走行環境によっても劣化の進行速度は異なる為、
一般的に走行距離3万〜4万km、または10年・10万kmを超えた車輛では交換を検討する方が良いとされており、
特に不具合を感じていなくても、細かい振動や音が気になったり、車輛の年式が古い場合等は、予防的なメンテナンスとして、
不具合が出てしまう前に経年を考慮して交換しておくと安心です。
ステアリングラックブーツの断裂
ホコリ等の侵入からラックギアなどを守っているのがステアリングラックブーツです。
このような状態になるとラックに砂などの汚れが付着し、ラック自体に傷が入ります
そうなるとパワステオイル漏れが発生しますので、要注意ですね。
ギアボックスは廃番、分解オーバーホールは可能ですが、ラック・ピニオンにあまりにも傷が多い場合は不可になりますので
こういった箇所も定期的なチェックが必要です。
尚、ダストブーツの破れは車検不適合項目に該当するため、破れたままでは車検を通す事は出来ません。
新旧のステアリングラックブーツ、ブーツバンド。
どちらか片側だけが劣化していたとしても、必ず左右セットで交換が必要です。
ブーツバンドは、劣化により加締める力が弱まってしまっている事が殆どの為、再使用はせずに必ず新品への交換が必要です。
たまにタイラップで固定されている車も見ますが、ずさんな整備に呆れます。
ラックに摩耗や錆の発生、損傷等がないか確認し、問題がなければ汚れなどを綺麗に取り除き、
新しいブーツバンドを使用してステアリングラックブーツを装着。
左右のステアリングラックブーツを装着し、交換作業が完了。
全ての作業を終えたら最終のテストランを行い、修理箇所やその他に違和感等がないか確認し、
特に問題がなければ全ての作業が終了。
後日、オーナーと交換したパーツを確認しながら、
修理内容や今後のメンテナンス等をお話し、納車となりました。
2026年02月08日