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MAINTENANCE REPORT

ラジエターの構造役割

何故か、ここ数年冬場にラジエタートラブルによる交換が頻発して出るので
今回は水廻りの中のラジエターのお話しです。OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA5394e60434d68733OLYMPUS DIGITAL CAMERA冷却水はチューブと呼ばれる配管を通過する最中にエンジンから受け取った熱を
チューブを取り囲むフィンと呼ばれる放熱板に受け渡す事により冷却するという運動を常に行なっています。
フィンは前方からの風やファンによる風の力で大気中にその熱を逃がします。
そんな冷却にはかかせないラジエターに種類があるのはご存知でしょうか。
まず形状の違い。大きく分けるとダウンフロー型、サイドクロスフロー型の2種類に分かれます。
そして、フィン形状の違い。コルゲートフィンとプレートフィンに分かれます。
最後に素材の違い。一般的に銅かアルミを使用。
ダウンフロー型は冷却水が上部からチューブ内を通りフィンを通過し熱交換作業を行ないながら
下部に落ちていくと言う重力に逆らわない縦流れ構造のラジエターです。
サイドクロスフロー型は冷却水がサイドタンクからチューブ内を通り
フィンを通過し熱交換作業を行ないながら反対側のタンクに流れていくという横流れ構造。
熱の交換効率は同じ体積で考えるとサイドクロスフロー型(横流れ)が
優れています。BMWで使用されているラジエターはほとんどがサイドクロスフロー型(横流れ)になります。
但し、E30/M3はダウンフロー式(縦流れ)のラジエターが採用されています。
熱の交換効率がサイドクロスフローの方が優れているのであれば
何故、この方式を選択しなかったのか。
日本での夏場に電動ファンを追加しないと明らかにオーバーヒート気味になる
M3が多いのでちょっと疑問に思います。
E30スタンダードモデルではサイドクロスフロー方式が採用されているので
設置が不可能と考えるのは不自然ですが、、、どうなんでしょうか。
これは調べる時間も少なく推測の話になってしまいますが
ホモロゲ-ションモデルとしてDTMに参加していた為、耐久性を重視して採用されていたか。
高速状況下が長く続く事によってサイドクロスフロー型では
エンジンにダメージを与えてしまうほどのオーバークールを引き起こす可能性があったから
使用しなかったのか。ただ単に設計が古かっただけなのか。
もし、ご存知の方いましたら教えて下さい。2324e60435473744OLYMPUS DIGITAL CAMERA次にフィン形状。左がコルゲートフィン。右がプレートフィン。
コルゲートフィンは素材が銅、アルミを使用しており
軽量、性能も良く、量産が容易で安価な為良く見られます。
プレートフィンはヒーターラジエターやエバポレーターで良く見られる形状ですね。
高性能ですが衝撃に弱く、素材も銅や真鍮を使用する為重くなりがちですが
カビ等の殺菌効果もある為使用されています。1594e6043432e7b2次に冷却するにあたり忘れてはいけない冷却水ですが、エンジンを冷却するにあたり
相当に酷使されているにも関わらず交換されていない車輌も多く見受けられます。
冷却水はLLC(ロングライフクーラント)と呼ばれ、
冬場に凍らないようエチルグリコール等が入れられています。
冷却水のエンジン~ラジエター間の循環は簡単に説明すると下記のような運動を繰り返しています。
ラジエターで放熱→シリンダー内のウォータージャケットで沸騰し泡化→液化→ラジエターへ
(厳密にはサーモスタットの動きもありますがここでは無視します。)
ウォータージャケット内で沸騰し泡化するという事はエンジンブロック内の熱をしっかりと吸収しているという
事なので問題は無く正常な状態です。ウォータージャケットを抜けると液化し、
ラジエターに送られ放熱され、またエンジンに送られるといったサイクル運動を続けます。
①全くLLCが交換されていない車輌
②クーラントチェックが点灯しているのにも関わらず気にせずに乗ってしまっている車輌
上記条件の車輌に乗っているとどうなるか。
すぐ分かるとは思いますが、オーバーヒートを起こす可能性がグッと上がります。
何故かと言うと
①に関しては古くなったLLCがウォータージャケットを通り泡化その後液化しなくてはいけないのですが
泡が消えずに、正常に圧力がかからないことにより冷却水の循環が行なわれずオーバーヒート。
②に関しては、単純に水量が減ってしまって循環が困難になってしまいオーバーヒート。
また、蒸発を伴った漏れの場合にエチルグリコーゲンの濃度が上がりすぎて冷却水の沸点が
ウォータージャケット内の表面温度よりも高くなってしまい、泡化せず熱の吸収が出来ずに
オーバーヒートを起こすという現象。冷却水濃度を上げすぎると車に良くないと言われるのは
この事ですね。また安易なLLCの注ぎ足しもこれに当てはまりますので
①微量であっても水漏れは原因を特定し、早期に直す事。
②水廻りの点検。冷却水の交換は1年に一度適正な方法で行なう事。
ラジエターのドレンコックを外しただけの交換では、ただの注ぎ足しにしかなりませんので注意しましょう。
ラジエター、エンジン、ヒーターコア、各冷却水ホースその全ての冷却水を排出し
その車輌の特性、運転される地域を考え冷却水をチョイスする事が大事なのではないかと思います。
上記の2点だけで不具合の出る確率も相当に下がるかと思います。

2009年01月23日