【ALPINA B10 V8S】12ヶ月法定点検&各部メンテナンス【65,000Km】
12ヶ月法定点検&各部メンテナンスの為、ALPINA B10 V8Sが入庫です。走行距離は65,000Km。
ラジエターのトラブルでオーナーが応急処置をしているとの事なので
その点も注意しながら各部の点検・修理を進めます。
アンダーカバーを外すと内側は水漏れとオイル漏れでかなり汚れた状態でした。
特にアンダーカバーが装着されている車輌はオイル漏れや水漏れに気付き難く、漏れに気付いた時には
大掛かりな修理が必要な事になるケースがあるので注意が必要です。
下廻りを確認すると漏れた冷却水やオイル、砂埃等が付着してかなり汚れていました。
ラジエターの応急処置された箇所。
エキスパンションタンクが樹脂製になっている為、劣化による破損が多くこのあたりのモデルでは定番のトラブルです。
冷却水が漏れた跡が残り、カムカバーからのオイル漏れが酷いようですが
チェーンカバー・クランクシャフトシールからもエンジンオイルが漏れているようです。
ウォーターポンプ・クランクプーリーを取りはずし。
エンジン下部は漏れた冷却水やオイルでかなり汚れているので作業の前に洗浄を行い綺麗にしておきます。
オイルまみれだったアンダーカバーをスチーム洗浄。
下廻りもスチーム洗浄を行い綺麗にしておきます。
オイル汚れも無く綺麗な状態になり、これで作業も捗ります。
まずはカムカバーを外してしていきます。
V8エンジンなので×2箇所。
左バンク。
カムカバーを外し、フロントチェーンカバーを外していきます。
V型エンジンはバンク角がキツイ事もあってカムカバーからのエンジンオイル漏れは定番と言っても良いですね・・・
チェーンカバーを外してガスケットの交換。
同時にチェーンの張りも確認しておきます。
クランクシャフトのオイルシールを外し、新しいオイルシールを装着します。
新旧のチェーンカバーガスケット・フランジガスケット。
新旧のクランクシャフトのオイルシール。
新旧のカムカバーガスケット一式。
漏れやすい箇所には液体ガスケットを併用しながら装着します。
チェーンカバーを綺麗に洗浄してからガスケットを装着。
漏れやすい箇所には液体ガスケットを併用し、
こびりついた古いガスケットは漏れの原因になる為、綺麗に取り除いておきます。
カムシャフトセンサーのOリングを交換。
新旧のカムシャフトセンサーのOリング。
ウォーターポンプの交換。
新旧のウォーターポンプ。
ウォーターポンプは経年劣化により異音や水漏れ・錆等を発症します。
限界まで使用する・・・という箇所では無いので交換のタイミングをお伝えするのも僕たちの仕事ですね。
新旧のサーモスタット。
ウォーターポンプの交換と同時にサーモスタットを交換。
サーモスタットは冷却水の温度管理をしているパーツなのですが不具合が起きると温度調節が適切に出来なくなり
エンジンのオーバーヒートやオーバークールを発生させるので水廻りのパーツは経年を考慮して
同時に交換した方が良いでしょう。
ウォーターポンプの取り付けはトルクレンチで各ボルトを均一のトルクで締め付けていきます。
均一のトルクで装着しないと接着面が均等にならず、再び漏れを発生させる事があるので注意が必要です。
新しいラジエターへ交換。
新しいラジエターを装着。
新旧のラジエターアッパーホースとロアホース。
ゴム製のホース類は耐熱性・耐圧性を考慮されて作られているのですが、常に高温に晒されるだけでなく
水圧等の影響も受けている為、経年劣化により徐々に性能が低下、ホース本体や接続部の破損等で
水漏れを発生させます。経年・走行距離を考慮してラジエター交換と同時に新品へ交換。
新旧のラジエターキャップ。
ラジエターキャップは冷却系統の圧力を制御し圧力による冷却系統の破損を防いでいます。
加圧弁がラジエター内の圧力を制御する事で冷却水の沸騰を抑え、冷却水が冷えて圧力が低くなった場合は
負圧弁が制御して負圧になる事を防いでいます。
ラジエターキャップが破損してしまうと圧力の制御が出来なくなる為、冷却水が沸騰して気泡を発生させ、
それが原因となって冷却効果が低下しオーバーヒートに繋がります。
問題が無くても定期的に交換が必要なパーツでしょう。
冷却水の交換。
専用の機械を使用してフラッシング剤を注入し冷却経路内の錆や水垢等を車外へ圧送させます。
その後に規定量の冷却水を注入して冷却水の交換が完了。
冷却水の交換は年に1回のペースで行い、その際に冷却経路の点検をする事でオーバーヒートや冷却水漏れの
トラブルの発生率を大幅に下げる事が可能になります。
定期交換としてATFの交換を行います。
当社の交換方式は全量交換です。
閉店間際に排出を行い、一晩掛けてじっくりと排出を行うので交換日程は作業状況にもよりますが
最短でも2日間のお預かりとなります。
圧送方式はスラッジが経路に目詰まりしてしまう危険性が高く、当社では施工しておりません。
更にオイルパンを外します。
中央の黒いパーツがATエレメントです。
ATエレメントを外し、この状態で一晩を掛けてATFの排出を行います。
外したオイルパンの磁石に付いたスラッジを確認してAT機構に問題が無いか内部の状態を探ります。
問題が無ければ、綺麗な状態に洗浄して車体へ装着します。
新旧のATエレメントとオイルパンのガスケット。
外したATエレメントの黒い汚れは内部で発生したスラッジによるものなので、これだけの汚れ具合を見るだけでも
ATF交換の重要性が判るのではないでしょうか?
装着するガスケットは自身が潰れる事で密着性を高めるので再使用は出来ません。
新旧のドレンボルト。
パッキンと一体型なので再使用せずに新しい物へ交換。
新品のATエレメントを装着。
オイルパンを装着しFUCHS ATF4000を注入。
オイルゲージは付いていないのでテスターを使用して油温を確認しながらテストランを行いながら油面調整をします。
量が多くても少なくてもATの不具合に繋がるので慎重な作業が必要になります。
新旧のリアスタビライザーのブッシュとブッシュホルダー。
画像の通りブッシュホルダーが破損していたのでブッシュとセットで交換します。
新しいスタビライザーブッシュとスタビライザーホルダーを装着。
破損していたホルダー上部には破損した影響で擦れたと思われる傷がありました。
今回はホルダーの不具合でその他のパーツが破損する等の二次被害に繋がらなくて良かったと思います。
ブレーキフルードの交換。
ブレーキフルードはタンク内のフルードの色を見るだけで劣化具合の判断が可能です。
新品のフルードの色は無色透明なのですが、吸湿性が高く劣化していくと透明から徐々に紅茶色へ変化していきます。
画像の色ではそろそろ交換が必要な状態なのですが、酷い物になると赤黒く変化し吸湿した水分がブレーキの際に
沸騰してしまいその際に発生した気泡がブレーキの圧力を妨げてブレーキが利かなくなるベーパーロック現象を
発生させるので非常に危険です。
ブレーキラインに圧力を掛けてブレーキ経路内の錆や汚れ等を古いフルードと共に排出します。
その際に不自然なエアの混入や排出したフルードに異常な錆や汚れ等が無かったか確認します。
もし異常が見つかれば、原因を突き止める為にブレーキシステム全体を点検するので
大掛かりな作業になる事があります。
古いフルードを排出したら新しいブレーキフルードを規定量注入し、
エア抜きを行ってブレーキフルードの交換が完了。
新しいブレーキフルードは画像の様に無色透明なので、定期的に劣化具合を確認して交換する様にして下さい。
全ての作業を終えたら、最終チェックとしてテストランを行い作業箇所やその他に問題がないか確認します。
走行中に違和感を感じれば原因を探り、テストランを何度も行ってベストな状態へ調整していきます。
今回は基本的な作業の他に水漏れやエンジンオイル漏れの修理を行いました。
水漏れやエンジンオイル漏れはトラブルの中でも非常に多い症例になるのですが、
日頃の確認や定期的なメンテナンスを行う事で発生率を低下させる事が可能です。
経年劣化で不具合を起こすパーツは問題が起きる前に経年を考慮して事前に交換する事でトラブルを回避出来るので
ご自身の車輌の状態を把握しておく事は非常に重要です。
車輌のメンテナンスに不安な方は、修理履歴や交換履歴等を一度確認して
工場の方と相談をしながら長期のメンテナンスプランを立ててみてはいかがでしょうか?
2017年06月30日