【E46 M3】フルブッシュ交換【59,000Km】
E46 M3がフルブッシュ交換の為入庫しました。走行距離は59,000Km。
E46 M3はM3の3代目として2000年~2006年まで生産され、今見ても古さを感じさせないデザインと
自然吸気エンジン特有の官能的なドライバビリティを感じさせてくれる非常に魅力的なモデルなのですが、
経年や走行距離が増えるにつれ、やるべきメンテナンスは増えてきますね。
今回は、更に10年M3らしさを楽しめるよう
ショックアブソーバーをはじめ、フルブッシュの交換作業をしていきます。
今回交換するブッシュ等パーツ一式。
全て純正品を使用。
基本的にブッシュはゴム製でショックを吸収しているのですが、
硬化がはじまると当然衝撃を吸収出来無くなり徐々にクラックが広がっていきます。
ブッシュ交換は総合的に施工した方が成果が高く、交換に掛かる時間や工賃等の費用も総合的に考えれば
一部だけを交換するよりもメリットが高いので、メンテナンスプランを立てまとめて行った方が良いでしょう。
まずは現状の状態を確認。一度外してショックの状態や減衰等を確認しますが、オーナーからさらに10年は調子良く。との要望もありましたので、今回はサスペンションも同時に交換という方向で作業を進めていきます。
フロントロアアームコントロールブッシュの交換。
フロント部はエンジンの重さや停止時の反動等で負担が多く掛かる箇所なので他よりも劣化が早い傾向です。
E46の中でも交換頻度が高く、ロアコンブッシュの劣化は早いものだと10,000km~20,000Km
毎に交換が必要なケースもあり、発進時や停車時にアクセルペダル付近からゴトゴトと異音を感じる様になったり、
ステアリングがガクンと振れてしまう様な振動が出る様になったら交換が必要です。
SSTを使用してブラケットごと取り外します。
圧入し交換。
プレス機を使用してブラケットから古いブッシュを打ち抜き、新しいブッシュを圧入。
アルミブラケットなので、圧のかけ方を注意し新しいブッシュを入れていきます。
取り付ける際もSSTを使用して装着するのですが、無理に押し込むとブッシュが傷んでしまうので要注意。
ブッシュブラケットを固定するボルトはセルフロックボルトの為、再使用不可なので新品へ交換する事が大切です。
車体からフロントのショックアブソーバーを取り外します。
この際に表から見えにくい箇所に異常等は無いか状態を確認。
取り外した左右のフロントショックアブソーバー一式。
スプリングコンプレッサーを使用し、アッパーマウントやバンプラバー、スプリングパッドなどを交換していきます。
新旧のフロントショックアブソーバーパーツ。
ショックアブソーバーの他にフロントアッパーマウント・スプリングパッド・バンプラバー・ダストブーツは
新品へ交換。コイルスプリングはそのまま元のパーツを使用。
新旧のフロントアッパーマウント。
アッパーマウントは路面からの振動や衝撃を常に吸収している為、
劣化が進むと異音が発生したり乗り心地が悪化します。
M3の様な走行性能が高いモデルは比較的劣化が進んでしまう為、乗り心地が悪くなる前に定期的に点検を行って
状態を判断して交換した方が良いでしょう。
新旧のスウィングサポート。
リアと違ってフロントのスウィングサポートはボールジョイントになっているので、
ブーツが破れてしまったら当然交換なのですが
動きが渋くなってしまっている物も交換をおすすめしています。
新旧のスウィングサポート・スタビブッシュ。
特にゴム製のパーツは経年や走行による劣化で硬化したり断裂が進むと
本来の機能を果たす事が出来なくなるだけでなく、
M3としてのパフォーマンスを十分に発揮出来無くなってしまうので細かく見すぎて悪い事はありません。
リアアクスルキャリアを降ろす為、マフラー・プロペラシャフトを外していきます。
外したユニバーサルジョイントとプロペラシャフトのセンターベアリング。
エンジンの大きな回転力をプロペラシャフトへ伝える際に振動を吸収するパーツなので経年で亀裂が入ったり
ベアリングが摩耗して異音を発生する事があるので経年を考慮して交換が必要なパーツです。
リア足廻りの各ブッシュを交換するので、リアアクスルキャリアをボディから降ろす為
ワイヤーハーネス・ブレーキメカニズムやサイドブレーキワイヤーなども取り外し、準備を進めます。
四点支持で固定されているキャリアボルトとトレーリングアームボルトを外し
デファレンシャルごとリアセクションを取り外します。
そこから個別のパーツに分けていき、各ブッシュの脱着を開始していきます。
リアアクスルキャリアを外したボディ側も同時に問題が出て無いか各部を点検。
トレーリングアーム・・・ラバーマウント×1・ボールジョイント×2
アッパーコントロールアーム・・・ラバーマウント×1
ロアコントロールアーム・・・ラバーマウント×1
左右セットで交換。
リアアクスルキャリア×5
デフマウント×2
を交換。
SSTを使用してトレーリングアームのボールジョイントを交換。
新旧のボールジョイント。
M3では片側ナックル部の上下2箇所に装着されているのですが、負担が多く掛かり想定以上に
消耗している事があるので注意が必要です。
トレーリングアームブッシュの交換。
SSTを使用して古いブッシュを引き抜きます。
新旧のトレーリングアームブッシュ。
亀裂も無く状態も悪くなさそうに見えますが、経年による硬化は避けられません。
グッと押し付けると細かなヒビ割れが多く発生していました。
SSTを使用して新しいブッシュを圧入。
圧入の際に気を付けなくてはならないのが、無理な力を加えずに均等な力で圧入を進めるという事です。
せっかくの新しいブッシュが無理な力を加えた事で、断裂しそのまま取り付けされているなんて事も
少なくありません。
ロアコントロールアームブッシュの交換。
こちらはプレス機を使用してブッシュを打ち抜きます。
新旧のロアコントロールアームブッシュ。
このブッシュは亀裂もそうですが偏芯の進み具合も交換の目安になります。
アッパーコントロールアームブッシュの画像は有りませんが…同様にプレス機で打ち抜いて交換済。
リアアクスルキャリア本体のブッシュを交換。
新旧のリアアクスルキャリアブッシュ、リア側。
装着もSSTを使用して慎重に圧入します。
取り外しにSSTが使用出来無い箇所はプレス機を使用してブッシュを打ち抜きます。
新旧のリアアクスルキャリアブッシュフロント側。
フロント側デフを支えているブッシュを交換。
新旧のデフマウント。
各ブッシュの交換を終えたら、ボディへ戻す前にスチーム洗浄を行ってパーツに付いた汚れを落とします。
各アームを戻す際、ボルトナットは本締めせずに一旦仮締めで固定。
リアコイルスプリングは交換せず使用します。
スプリングパッドはアッパー・ロア共に新品へ交換。
新旧のスプリングパッド(アッパー・ロア)
リアスウィングサポートはプレス機で前処理をしておきます。
新旧のリアスウィングサポート・スタビブッシュ。
リアスウィングサポートはブッシュのみの交換では無く本体ごと交換。
新旧のセンターベアリング・ユニバーサルジョイント。
プロペラシャフトを装着する際のガスケットは新品を使用。
新旧のリアショックアブソーバー・リアアッパーマウント・バンプラバー・ダストブーツ。
ショックアブソーバーは前後共にオーナーの希望でBMW純正ショックアブソーバーを使用。
ショックアブソーバー・ブッシュ交換等の作業を終えたら4輪アライメント調整の前に
軽くテストランを行ってブッシュを馴染ませてから、仮締めをしていた各アーム部のボルトを
トルクレンチで規定のトルクで本締め。本締めを行った後に再びテストランを行ってから
4輪アライメントの測定検査を開始。
フルブッシュ交換の際のセッティングは非常にシビアでメーカーの基準値を元に何度も調整とテストランを行って
その車輌に最適な数値を導き出していきます。
同モデルであってもパーツの劣化やタイヤの摩耗一つで数値は変化していく為、
数値だけの調整ではベストなフィーリングは出せません。
アライメント調整を終えたら最終のテストランを行って作業箇所やその他に不具合や違和感が無いか確認を行い
特に問題が無い事を確認し、納車となりました。
フルブッシュ交換をする事で乗り心地だけでなく高速走行での安定性やスムーズなコーナーリングが可能になり
今まで感じていたものと全く違うドライブフィーリングの変化に驚かれると思います。
2017年10月11日