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MAINTENANCE REPORT

【E36 M3C】24ヶ月法定点検&車検整備【70,000Km】

今回はE36 M3Cの24ヶ月法定点検と車検整備をレポートしていきたいと思います。走行距離は70,000Km。
なかなかこの距離のM3も見なくなってきて、初度登録から考えると距離の走っていない印象を受けますね。
E36 M3Cは初代E30M3から2世代目のマイナーチェンジモデルで1995年~1998年まで生産され
マイナーチェンジ後は3シリーズのコンパクトなボディに3.2L 直列6気筒DOHCエンジンを搭載し321馬力を発生。
エンジンパフォーマンスが非常に高い分、車体に掛かる負担も多い為、
定期的に各部のメンテナンスを行っていないと本来のパフォーマンスを発揮出来無くなってしまいます。
生産終了から20年が経過しているモデルということもありますので
各部のチェックを行いながら今回は基本的なメンテナンスをメインに作業を進めましょう。
まずはエンジンオイル交換。
車は燃料だけでなく各部にオイルが無いと走行する事が出来ません。(当たり前の事なのですが…)
これは極端な話しですが…車はガソリンを入れさえしていれば走行する、オイル交換は車検整備の時だけ(2年に1回)、
そもそもオイル交換は25,000Kmまで大丈夫だと言われた・・・って方も稀にですが実際にいらっしゃいます。
ただ動く移動の手段という目的で乗っていくのか、車本来のもつフィーリングをキープしながら乗っていくのかで
このあたりの感覚は随分変わってくるでしょうね。

エンジンは走行していると内部でカーボンやスラッジ等の汚れが発生し、
その汚れを集約しているのがエンジンオイルなのですが、
その他にも潤滑や冷却、防錆、気密性を保つ等、様々な役割を担っています。
オイルエレメントで濾過する事で汚れを取り除いているのですが、
汚れが酷くなると濾過し切れなくなった汚れがエンジン内部を循環する事になり
エンジンにそれがやさしいか・厳しいかで言えばやはり厳しいのは誰でもわかる事かと思います。
エンジンの基本構造は昔から変わっていませんから、いくらロングライフのオイルだろうと
汚れるものは汚れますので、3,000~5,000Kmに一度は交換してあげても良いのではないでしょうか。
定期的に交換する事は勿論なのですが、当社ではエンジンオイル交換の前にフラッシング剤を注入して
内部に堆積してしまった汚れを落としやすくし、
保護被膜を形成する再着防止効果で一度落した汚れを寄せ付けなくする事で新しいオイルの再汚染を防ぎます。
10分から15分程アイドリングを行って、
エンジン内部の手の届かない箇所までフラッシング剤を浸透させて汚れを落とし、
古いオイルと共に車外へ排出させます。
排出には時間を掛けて雫が垂れなくなるまで行い、
同時に廃油に金属片や異常な汚れが出てないか確認しエンジン内部の状態を探ります。
新旧のオイルエレメント。
装着に使用するパッキンやOリング、ワッシャは再使用不可なので必ず新品を使用します。
オイルエレメントはエンジンオイルを濾過して汚れを取り除いているのですが、
汚れたまま使用していると目詰まりを起こしてしまいます。
そうするとオイルの流入量が減ってしまうので、
そうなる事を防ぐ為にオイルエレメントはバイパス機能を備えており、
濾過を行わずに汚れたオイルをそのまま戻すのでエンジンに悪影響を及ぼす為、
オイルエレメントの交換時期にも注意が必要です。
新品のエンジンオイルの性能を発揮させ、
再汚染を防ぐ為にもエンジンオイルとオイルエレメントの同時交換をお勧めしています。
古いオイルの排出を終えたら新品のオイルエレメントを装着し、
規定量のエンジンオイルを注入してエンジンオイル交換が完了。
FUCHS TITAN 5W-50
特にM3やALPINAのオーナーはエンジン性能を生かす為にも適した
エンジンオイルのチョイスと定期的な交換を行う事が大切です。
あまり乗らない方や短距離の走行しかしない方は走行距離に関係無く、半年を目安に交換をおすすめしています。
ミッションオイルの交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し、内部で発生したスラッジを落としやすくします。
排出時は必ず温めた状態で行い、スラッジと共に一気に排出。
ミッションオイルの交換を行わないと
内部で発生したスラッジが研磨剤の様になってギアにダメージを与えて最悪の場合
ギアを破損させてしまう為、ギアが入り難くなったり異音が発生していたら交換が必要です。
エンジン性能が高くてもスムーズな変速が出来ないと不安定な走行になってしまうので、
エンジンオイルと同様に定期的な交換が必要で、普段から余程ハードな走行をしていない限り
車検の際に交換を行っていれば安心です。
排出は完全にオイルが垂れなくなるまで時間を掛けて行います。
ドレンワッシャにシールテープを巻いてから装着します。
シールテープの巻き方にも向きがあり、
テープの施工ミスにより緩みが出てオイル漏れを発生させてしまう事があるので要注意。
規定量のオイルを注入し、ミッションオイル交換は完了です。
FUCHS 5SPEED 75W-90
デフオイルの交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し内部で発生したスラッジを落とし易くします。
粘度が高いので温めた状態でデフオイルを排出しないと
排出に時間が掛かるだけでなくスラッジも上手く排出されないので注意して下さい。
デフ内部にもギアが噛み合わさっており、
スムーズにコーナーを走行出来るのもこのギアが可動しているからなのですが、
ミッションやエンジンと同様に内部ではギアが噛み合う事でスラッジが発生しており、交換を怠っていると
スラッジが原因でシールを傷めてオイル漏れを発生させたり、ギアを傷めて破損に繋がる事がある為、
こちらもミッションオイルと同様に車検毎に交換をおすすめしています。
排出を終えたら適量のデフオイルを注入し、デフオイルの交換が完了。FUCHS HLS90 75W-90パワステオイルの交換。
専用の機械を使用してパワステライン内のフラッシングを行い、
パワステポンプやギアボックスで発生したスラッジと共に古いオイルを車外へ排出。
排出を終えたら規定量のパワステオイルを注入し、エア抜きを行って交換作業が完了。
E36のパワステシステムはウィークポイントとして知られ、交換を怠っているとホースやタンクの接続部分や
カシメ部分からオイル漏れを発生させる等注意が必要で、
ウィークポイントだからといってオイル漏れを放置してしまうと
更に被害が拡がってしまう為、オイル漏れの放置は厳禁です。
パワステのオイル漏れはオイルの汚れが原因でホース類にダメージを与える事が多く、
汚れ具合の変化に注意が必要で新品の状態は赤く透明なオイルなのですが
透明度が無くなって黒味を帯びていたら交換して下さい。
FUCHS ATF4000
ブレーキフルードの交換。
ブレーキは命を守り、逆に失わせない為にも十分なメンテナンスが必要で定期的に交換しなければなりません。
ブレーキフルードは吸湿性が非常に高く、劣化が進むと水分を含んでしまう為、
沸騰してしまうとブレーキシステム内に気泡を作り出し
ブレーキペダルを踏んでも油圧が伝わらずにブレーキを操作出来無くなる
ベーパーロック現象を発生させるので注意が必要です。
水分を含む事で錆が発生し易く、ブレーキシステムを固着させる原因になるので交換を怠っている方は要注意。
基本的に車検時に交換されていると思いますが、
御自身で車検を取る方の中では長期に交換を怠っているケースもあり、
安易な交換時期の引き延ばしは大事故に繋がる事があるので、劣化に注意し定期的に交換して下さい。
専用の機械を使用してフラッシングを行い、内部で発生した錆や水垢等の汚れを古いフルードと共に車外へ圧送。
排出されたフルードに異常な錆や汚れが無いか確認し、ブレーキシステムの状態を探ります。
問題が見つかれば原因を特定する為、ブレーキシステム全体の調査をするので大掛かりな作業が必要になります。
新しいブレーキフルードを注入し、エア抜きを行って交換作業が完了。
新品のブレーキフルードは画像の様に無色透明なのですが、
劣化が進むと徐々に紅茶色に変化し色味が濃くなっていくので
ブレーキのリザーバータンクの色の変化にも注意が必要です。
OMV Racing DOT4
冷却水の交換。
専用の機械を使用してフラッシング剤を注入し、
内部で発生した錆や水垢を浮かせて古い冷却水と共に車外へ圧送させます。
排出を終えたら新しい冷却水を規定量注入し、エア抜きを行って冷却水の交換が完了。

今年は猛暑だったせいか、水廻りのトラブル入庫の多い年でした・・・
ゴム製のホースや樹脂製のパーツを使用している事もあり経年劣化等で徐々に水漏れを発生させる事があれば、
一気に破損して冷却水が吹き出してしまう事もある為、定期的な点検と交換が必要になります。
1年に1度はこの様な作業を行っていれば、かなりトラブルを軽減する事が可能なので、
水廻りトラブルに悩まされている方はお気軽にご相談下さい。
助手席のグローブボックス蓋が剥がれて浮き上がっていたので交換していきましょう。
経年劣化で内装の各箇所が剥がれ落ちる事が多いのですが、放置していると更に症状が悪化する為、
気が付いたら早急に対応した方が良いでしょう。
新品に交換します。
綺麗になると気分も違います。
全ての作業を終えたら最後にテストランを行って
修理箇所やその他に問題や違和感を感じないか各チェックを行って問題がなければ
最寄りの陸運支局へ車輌を持ち込んで車検を取得します。
後日、車検証、定期点検記録簿、車検ステッカー、定期点検ステッカーをオーナーへ渡し、
今後のメンテナンス等をお伝えして納車となりました。

今回はE36 M3Cの24ヶ月法定点検と車検整備を行ったのですが、
20年前の経年車であっても大きなトラブルも無く、基本的な作業のみで作業を終える事が出来ました。
日頃からのオーナーの管理の良さが出た結果なのですが、
管理が良くても避けられないのが経年劣化によるパーツの劣化で
各部のチェックを行って優先順位をつけて徐々にパーツを交換しなければなりません。
これはどの車にも言える事なのですが、定期的な油脂系メンテナンスとパーツの状態の確認、
日頃からの状態のチェックを行っていればトラブルを軽減する事は十分に可能です。
経年車だから…トラブルが多いのでは無く、メンテナンス不足の為トラブルが発生してしまうという
認識を持つ事が大切でウチの車は今まで壊れた事が無いから大丈夫という考え方では、
いつ大きなトラブルに巻き込まれるか判りません。
今回の車輌の様に20年が経過しても管理状態が良ければトラブルなく走行を楽しむ事が可能です。
これからも大切に楽しんで頂きたいですね。

2018年09月18日