【ALPINA B3 Bi-Turbo】各部メンテナンス【100,000Km】
7月になりました。毎日忙しくさせてもらっていますが、
ここ最近は雨ばかりで外での作業が進まずに頭からカビが生えてきそうです・・・
梅雨明けが待ち遠しい今日この頃です。
久しぶりにPC前に長く座れる時間が作れたので、これからレポートをまとめてUPしていきましょう。
今日だけで出来れば2~3本はアップしたいところです。頑張ります。
さて、本日のメンテナンスレポートはALPINA B3 Bi-Turbo Coupeの各部メンテナンスです。走行距離は100,000Km。
BMW3シリーズE90 335iをベースにALPINAチューンを施し、搭載する直列6気筒DOHCツインターボエンジンは
306psから370psと大幅にUPし、ハイパワーなターボ車でありながらしなやかに走るALPINAらしさは
単なる移動手段として使用するのではなく、運転を楽しむ魅力を感じさせてくれるモデルですね。
登場から10年以上が経過しているモデルの為、消耗品だけでなく各部の経年劣化にも注意が必要なので
基本的な油脂の交換を行いながら経年を考慮した各部の点検を行います。
オイル漏れを発見。調べていくとエレメントベースとカムカバーからのエンジンオイル漏れでした。
漏れたオイルに砂埃等の汚れが多く付着している所をみると結構前から漏れていた事が考えられます。
冷間時にベルト廻りから音が出ていたので、ベルト類も同時に交換していきます。
オイルエレメントベースへアクセスする為、インテークマニホールドを外します。
このモデルのカムカバーやエレメントベースの取り外しはインテークマニフォールド脱着前提なので
少々お時間かかります。
吸気ポートの内部を確認すると、かなりのカーボンが堆積していました。
これはちょっと酷いのでのちほど除去していきましょう。
直噴エンジンやターボ車はカーボンが非常に溜まりやすい傾向なのでこういった際に
状態を確認しておくと良いでしょう。オイルエレメントベースを取り外します。
少々オイルが汚れすぎでしょうか。
オイルエレメントベースの装着面に異物が残っているとしっかりと密着させる事が出来ず、
再びオイル漏れの原因になる為、装着面に残ったガスケット跡はオイルストーンで除去し、
表面を綺麗に整えておきます。カムカバーを外していきましょう。
パパっと・・・とはいかず、
インジェクターの取り外しなどもあるのでこちらのモデルのカムカバー脱着は時間がそれなりに必要です。
カムカバーを外したら内部に異常は無いか各部の点検を行います。取り外したカムカバー。
異常が無いか状態を確認。
このくらいのモデルからでしょうか、カムカバーの熱変形によるオイル漏れの症例も見られます。
しっかり状態を確認し、問題があれば新品のカムカバーを用意した方が良いです。
今回はガスケットの問題のみでカムカバー本体の問題はなかったので綺麗に洗浄を行います。
新旧のカムカバーガスケット。
新旧のプラグホールスリーブ。
こちらはカムカバーを外した際には再使用しないように。
新しいプラグホールスリーブを装着。
ファンベルトやファンベルトテンショナー等も外して交換準備。
取り外したオイルエレメントベース
新旧のエンジン側のオイルエレメントベースガスケット。
新旧のサーモスタットハウジング側のガスケット。
ガスケットの交換を終えたら、オイルエレメントベースをエンジンへ装着。
新旧のファンベルト・ファンベルトテンショナー・アイドラプーリー。
新しいファンベルト・ファンベルトテンショナー・アイドラプーリーを装着。
堆積していたカーボンを除去した事で綺麗になった吸気ポート。
若干残っていますが、エンジン始動時に全て燃焼室に吸い込まれ燃えてしまうでしょう。
これは、かなりエンジンのフィーリングが良い方向に変わるのが期待できます。
取り外したインジェクター。
Oリングは新品に交換です。
新旧のスパークプラグ。
問題無く使用されていたのか焼け具合や電極の消耗状態を確認しておきます。
仮に1本だけ問題が発生していたとしても単品での交換は行わず、同時に全てのスパークプラグを交換して下さい。新旧のインテークマニホールドガスケット。
こちらも再使用不可です。
冷却水の交換。
専用の機械を使用してフラッシング剤を注入し冷却ラインで発生した錆や
水垢等の汚れを浮かせて古い冷却水と共に車外へ圧送させます。
通常冷却水の交換は車検の際に交換される事が多く、この交換サイクルでも性能的には問題無いのですが、
特に経年車は冷却水だけでなく水廻りに関連するパーツ等の経年劣化にも注意が必要なので、
年に1回の交換を目安に水廻りのパーツの点検を同時に行っておく事が大切です。
エンジン始動。吸気バルブのカーボン燃焼でかなりの白煙でした・・・
エンジンオイル交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し、エンジン内部で発生し堆積してしまったスラッジやカーボンの汚れを落とします。
10分~15分程アイドリングを行ってエンジン内部の手の届かない箇所までフラッシング剤を浸透させ汚れを落し、
古いエンジンオイルと共に一気に排出させます。
出来るだけエンジン内部に古いオイルを残さない為にも時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで排出を行い、
同時に廃油に異常な汚れや金属片等が含まれて無いか確認を行ってエンジン内部の状態を探ります。
特に直噴エンジンやターボ車はエンジンオイルの性能や汚れによる影響が多い為、
しっかりと交換時期を管理しておく事が大切です。オイルエレメントの交換。
使用するパッキンやワッシャ等も新品へ交換。
新旧比較すると汚れの凄さが判ると思いますが、エンジンオイル交換を怠っていれば
汚れを除去しているオイルエレメントも当然汚れが堆積してしまいます。
汚れが堆積して目詰まりを起こせばオイル流入量が減ってしまう事を防ぐ為、
バイパス機能によりオイルエレメントを介さずに汚れたオイルをそのまま循環させてしまい
更に状態は悪化しエンジンへ悪影響を及ぼしてしまう為注意が必要です。
新しいエンジンオイルの効果を最大限発揮させる為にもエンジンオイル交換と同時交換をお勧めしています。今回チョイスしたオイルはLIQUI MOLY社の【SYNTHOIL HIGH TECH 5W-40】
LIQUI MOLY社はBMW認定のドイツのメーカーで全てのオイルがドイツで生産されており、
当然、ALPINAエンジンにも相性が良く、真冬の低温時の始動性の高さや炎天下の渋滞の走行時でも熱ダレせずに
低温時から高温時まで常に安定した性能を誇ります。
汚れの集約性が高くエンジン内部の摩耗を防ぐ事で燃費の向上やエンジンの寿命を延ばす効果が期待出来るので
BMWユーザーでまだ使用された経験が無い方には是非おすすめしたい高性能オイルです。
当社は今年から取り扱いを本格的に始めましたが、M3・ALPINAにお乗りの方にかなり評判の良いオイルですね。
新しいオイルエレメントを装着し、規定量のエンジンオイルを注入してエンジンオイル交換が完了。
ATFの交換。
当社は全量交換のみを行っており、閉店時に作業を開始し翌朝まで排出作業を行う為、
ATF交換は車をお預かりして最低でも1泊2日の作業になります。
アンダーカバーを取り外し、ATFを温めてからドレンボルトを緩めて排出を行います。ドレンからATFを排出した後、閉店時にオイルパンを外した状態で翌朝まで放置して残りのATFを排出させます。
コントロールハーネス部のシール スリーブを交換。
新旧のシール スリーブ。
よくATF漏れの原因になるパーツですね。例え漏れが無かったとしても
せっかくATF交換したのに・・・またATF交換・・・何て事にならないよう
ATFの交換時に同時に交換しておきます。新旧のATオイルパン。
オイルエレメントと一体式なので洗浄を行って再使用する事は出来ません。
E90系のモデルから樹脂製のATオイルパン・エレメント一体式タイプに変更された為、
熱変形で歪んでしまうとATF漏れを発生させる事があるので注意が必要です。
オイルパンの磁石には内部で発生したスラッジが多く付着していました。
スラッジは想定内の量なのですが、交換を怠るとエレメントで取り切れなかったスラッジが循環する事になり、
ATシステムにダメージを与えて不具合を発生させるのでATF交換がいかに重要な事なのかがお判りになると思います。
ATFを注入しエンジンを始動させて油面調整を行うのですが、
ATF温度が一定の値を超えて上昇してしまうと膨張してしまい
正確な調整が出来なくなってしまう為、ATF温度を管理しながら慎重に調整を行います。
何度か調整を繰り返し、テストランを実施し変速の確認を行ってATF交換が完了。
シフトのタイミングやシフトアップ・シフトダウンがカッチリと決まり、
体感出来る程にシフトフィーリングが向上しました。
ATのシフトタイミングがしっくりこない方や変速時のショックにお悩みの方はATFの劣化が原因のケースが多く
ATシステムの不調にも繋がりやすいので注意して下さい。
60,000km以上走行している過走行車は内部で溜まっていた汚れやスラッジが交換をきっかけに
ATF経路に詰まってしまい逆に不具合を起こすという理由で交換を断られる事が多いのですが、
状態により交換が可能ですので気になる方はお気軽にご相談下さい。デフオイル交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し内部で発生したスラッジを落とし易くします。デフオイルは粘度が高く低温の状態ではスラッジを上手く排出する事は出来ない為、
当社では排出は必ず温めた状態で作業を行います。
このモデルは排出口が無いのでデフカバーを緩めてスラッジと共に一気に排出を行います。しずくが垂れなくなるまでデフオイルの排出を終えたらデフカバーを外し内部のギアに異常は無いか状態を確認。
デフオイルにはエンジンオイルの様にエレメントは装着されておらず、
内部で発生したスラッジは除去される事無く内部で浮遊し、
研磨剤の様になってギアを傷める原因になる為、定期的な交換が必要です。外したデフカバー。
異常が無いかスラッジの発生量や汚れの付着具合を確認。特に異常が見つからなければ綺麗に洗浄して装着面をオイルストーンで整えておきます。
デフ側もオイルストーンで装着面に残った古いガスケット等を取り除き、表面を綺麗に整えておきます。
この作業を怠ると装着面に微妙な段差が出来てしまいデフオイル漏れに原因になる為、しっかりと行う事が大切です。このモデルは液体ガスケットを使用して装着する為、漏れやすい箇所に注意しながら均等に塗布していきます。
デフカバーを装着し規定量のデフオイルを注入してデフオイル交換が完了。
と簡単に書いていますが、デフカバーを取り付けするのもかなり大変で、
リアアクスルキャリアとのクリアランスが全く無いので、アクスルキャリアやマフラーをずらしたりと一苦労です。
本当に最近のモデルの整備性の悪さには辟易します・・・
パワステオイル交換。
このモデルは【CHF 11S】のみが指定されており、その他のオイルは不具合の原因になる為使用は厳禁です。
今回のモデルの様に使用するオイルが指定されているケースもあるので交換の際には注意して下さい。
専用の機械を使用してパワステ経路のフラッシングを行い、ギアボックスやパワステポンプで発生したスラッジと共に
古いパワステオイルを車外へ圧送させ、指定された新油を注入していきます。規定量を注入してパワステオイルの交換が完了。
ブレーキフルード交換。
ブレーキは油圧を利用して操作を伝えているのですが、使用しているブレーキフルードは吸湿性が非常に高く
徐々に水分を含む事で錆を誘発するだけでなく、ブレーキの熱で含まれた水分が沸騰してしまうと
経路内に気泡を作り出しそれが原因でブレーキペダルを踏んでもスカスカと油圧が伝わらなくなる
ベーパーロック現象を引き起こす事があるのでブレーキフルードの状態の変化には注意が必要です。
車を使用しなくてもブレーキフルードの劣化は進行していく為、頻繁に車を使用されない方も
安全の為に定期的にメンテナンスを行って下さい。排出した古いブレーキフルードに異常な汚れや錆等が含まれて無いか確認を行い、
異常が見つかれば原因を突き止める為、ブレーキ経路全体の大掛かりな作業が必要になります。4輪全て同様に作業を行いブレーキブースターやマスターシリンダー、
ブレーキライン等からフルード漏れが無いか確認。ブレーキフルードの交換が完了。
新油は画像の様に透明なのですが徐々に水分を含んで劣化が進むと透明から紅茶色へ変化し黒味を帯びていくので
御自身でもリザーブタンクを確認し状態を把握しておくと良いでしょう。
ブレーキ系のトラブルはご自身だけでなく他人を巻き込む事故に繋がってしまう事もあるので
メンテナンスを怠らない事が大切です。
新旧のエアコンマイクロフィルター。
排気ガスの汚れや塵、砂埃、花粉や種子、虫の死骸等が付着している事が多く、
状態をみて定期的に交換しておきたいパーツです。
汚れを放置したままにしているとカビが発生する事があり、
車だけでなくご自身の体調不良の原因になる事もありますので注意して下さい・・・全ての作業を終えたら最終のテストランを行って作業箇所やその他に違和感が無いか確認を行います。
Bi-Turbo特有の加速感と滑らかなハンドリングでALPINAらしさを再び取り戻し、
入庫時との変化を体感しながら走行を楽しむ事が出来ました。
後日、オーナーへ分解整備記録簿をお渡しして作業内容や今後のメンテナンス等を伝えて納車となりました。
今回はATF交換を含む基本的な油脂系の交換とオイル漏れの修理や直噴エンジンに関連したメンテナンスを行いました。
オイル漏れはガスケットの経年劣化が原因になる事が殆どなのですが、
オイル交換を怠った結果ガスケットの劣化を進行させてしまい
オイル漏れに繋がったケースを多くみるので、油脂系の管理には注意が必要です。
直噴エンジンは出力アップや低燃費等のメリットもあるのですが、
デメリットによるメンテナンスが必要な箇所等もある為、ご自身の車輌のウィークポイントを把握する為にも
掛かりつけの主治医と相談しながら、計画を立ててメンテナンスを進めて行くと良いでしょう。
2019年07月02日