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MAINTENANCE REPORT

【E30 M3】エンジン不調修理【120,000Km】

1ヶ月少々ぶりのメンテナンスレポート更新。
今年の8月はここ数年で一番の積載車稼働率でした。
全国津々浦々、近場から遠方まで随分頑張ってくれたので、ただいま日野自動車にてリフレッシュ中。
週明けには戻る予定なので、また頑張ってもらいましょう。
今回はE30 M3のエンジン不調修理です。
エンジン不調で自走する事が出来ない状態だった為、茨城まで積載車で車輌を引き取りに行って来ました。
今回の様に自走出来ない為、修理にお悩みの方や長年不動車として眠っていた車輌でもご連絡を頂ければ、
積載車での引き取りが可能ですので修理や不動車の買取り査定等問わずに気軽にご相談下さい。往復約4時間程のドライブを終えて無事入庫したE30 M3。走行距離は120,000Km。
エンジン不動の原因を突き止める為、点火系統と燃料系統のチェックを行います。
DMEの電気信号をチェックしてみるとどうも点火信号も安定しないので
点火系周辺から点検を開始していきましょう。
取り外したスパークプラグはご覧の通り左から2番目の1本だけ綺麗な状態で正常に点火が行われていないかな・・・
といった状況。ただその他のプラグもちょっと汚れすぎですね。
テスターで電気信号が来ているか・断線の可能性や抵抗値など確認していき、原因を絞り込んでいきます。
エンジン側の点火系統に問題は見られなそうなので、次は燃料系統を確認していきましょう。
インジェクター直近のデリバリーパイプ部分での燃圧測定。しっかり数値は出ているので
ポンプなどには問題無さそうです。
ここまでの検査で2・4番のインジェクターに正常な信号が行っていない事
2番の燃焼室に燃料が全く噴射されていない事などから
DMEの点火信号不良とインジェクター不良の可能性が高く、まずはそこから手を入れていき
経過を観察したところ、綺麗に4気筒が動き始めたので一安心。
ただ、どこからか2次エアを吸っているようなので、そういった点も今回直していきましょう。
DMEは廃番で新品での入手は難しいですが、修理は症状にもよりますが可能な事が多いです。
2次エア吸いを追っていくと、複数箇所からのエア吸いを確認できた為、
スロットル廻りのインシュレーターやホースなどまとめて交換していきましょう。スロットルボディを外します。スロットルボディを取り外し、吸気ポート側に残ったインシュレーターの残りを綺麗に除去し、
オイルストーンで装着面を綺麗に整えておきます。
同時にインテーク部のカーボンの状態を確認。取り外したスロットルボディ。
新旧のインシュレーター。
インシュレーターは経年劣化で硬化してしまう事で亀裂が入って2次エア吸いを発生させる為、
消耗品として経年・走行距離を考慮して定期的に交換が必要です。
2次エア吸いが起こると余計なエアを吸い込んでしまう事で空気と燃料の混合比が変わってしまう為、
燃料が薄くなって爆発力が弱くなりハンチングを発生させてアイドリングが不安定になるので要注意。スロットルボディの装着面の汚れをオイルストーンで綺麗に整えてからインシュレーターを装着。
プレッシャーレギュレーターとインジェクションデリバリーパイプをつなぐ短いホースなのですが、
劣化が酷く硬化して割れてしまう程の状態になっていました。
見逃しがちな箇所なので状態の変化には注意を払い、ホース断面に亀裂が入っていたら交換が必要です。新旧のインジェクター。
新旧のアイドルバルブ・アイドルバルブ下側のホース。
アイドルバルブが不調になるとアイドリングが不安定になりハンチングを起こしたり、エンジンの出力や燃費の低下、
症状が悪化するとエンジンストールしてしまう事がある為、
不安定なアイドリングが発生したら症状が悪化する前に掛かりつけの主治医へ相談して下さい。
新旧のアイドルバルブ上部ホース。
新旧のバキュームホース。
ゴム製のホースは各部に使用されているのですが、経年劣化で油分が抜けると弾力性がなくなり硬化する事で
エンジンの振動等で亀裂や破損する事がある為、点検の際に状態を確認し経年を考慮して交換が必要です。エアファンネルに新しいOリングを装着。
一度使用したOリングは劣化が進行している為、状態が良かったとしても再使用は出来ません。スロットルボディのOリングを新品へ交換し、エアファンネル、サージタンクを装着したら
エンジンを始動させてアイドリングやエンジンレスポンス、エンジンの安定性等を確認。
S14エンジン独特のレスポンスの良さが戻りました。
オーナーから4輪ホイールアライメント調整を依頼されたので計測・調整を行います。
足廻りパーツの脱着等を行った際は必ず4輪ホイールアライメント調整が必要なのですが、
経年・走行距離などを重ねるとブッシュの劣化やタイヤの摩耗等で徐々に数値が変化したり、
激しく縁石を乗り上げたりするだけでもアライメント数値が変わってしまう為、
ステアリングを維持してないと左右に流れて真直ぐに走らない、ハンドルのセンターがズレてしまっていたり
タイヤが偏摩耗している等の症状が出ていたら再調整が必要です。
同じモデルだとしてもブッシュの劣化やタイヤの摩耗だけで調整がそれぞれ違う為、同じ数値にはなりません。
熟練のスタッフがメーカーの基準値を元に何度もテストランを重ねながら
その車輌に最も適した数値を導き出していきます。全ての作業を終えたら最終のテストランで修理箇所やその他に不具合や違和感が無いか確認を行います。
エンジンの始動も問題無く不安定だったアイドリングも安定し、低速域から高速域までストレスの無い吹け上がりで
躍動感のあるM3らしい本来の走りだけでなく、人気の高さを再認識させるドライビングを堪能する事が出来ました。
後日、オーナーへ整備記録簿をお渡しし修理箇所や今後のメンテナンス等をお話しして納車となりました。

今回はE30M3のエンジン不調修理を行ったのですが、流石に30年以上の時間や走行距離によって
一つの要因だけでなく複数の要因が積み重なって不調になってしまう事がある為、
安定した状態を維持していく為にも経年劣化を含めた定期的な点検と整備が重要になります。
一度に全てのパーツを交換していくには時間だけでなく予算も多く掛かってしまう為、
掛かりつけの主治医と相談しながら長期のメンテナンスプランを立てて少しずつリフレッシュを進めると安心ですね。
当社でも50項目の無料点検を行っており、普段見る機会がない下廻りをオーナーと一緒に確認する事が可能ですので、
今回の記事を読んでE30M3のメンテナンスなどお考えの方はコチラからお気軽にご利用下さい。

2019年09月07日