【E30 320i Cabriolet】24ヶ月法定点検&車検整備【90,000Km】
11月に入って急に寒くなってきましたね。
デスクワークから作業などちょっと慌ただしく一日24時間だとちょっと少なく感じる今日この頃です。
メンテナンスレポートも、もっとアップしたいのですが気軽にアップできるインスタグラムに
逃げてしまう今日この頃です。
本日のメンテナンスレポートはE30 320i Cabrioletの24ヶ月法定点検と車検整備です。走行距離は90,000Km。
車検が切れてから、車庫に置きっぱなしになってしまい、乗り続けるか、手放すかという
状況だったようでしたが、やはりこの車を乗り続けていきたいというオーナーの意向の元で
当社で車検や整備を任されましたので、頑張って仕上げていきましょう。
ステアリングギアボックスのオーバーホールやエンジンマウントの交換の為
ハンガーでエンジンを吊り上げて固定しておきます。
ステアリングギアボックスからのオイル漏れ
ステアリングギアボックスを車体から降ろしてオーバーホールを行います。
取り外したステアリングギアボックス。
ギアボックス内は各部にOリングやパッキン等でシーリングされているのですが、
経年劣化により弾力性が失われるとオイル漏れを発生させる為、こうなるとオーバーホールが必要になるわけですが
内部のベアリングやラック、ピニオンの腐食痕などが大きい場合は、ギアボックスアッセンブリでの
交換が必要になってくるケースもあります。こればかりは内部部品を確認しないと我々も判断が出来ませんので
オーナー了承の元作業を進めて行きます。
分解を進めて行きます。多少の錆などによる崩れなどは綺麗に錆を取ったのちに溶接にて肉盛りし
研磨再生をかけていきますので、この程度の錆は問題無しです。
各部品に分けてからそれぞれの状態を確認し、全体を洗浄し各部をチェック。
ラックのオイルシール、Oリングは新品へ交換。
シリンダーケース内部のベアリングの摩耗状態を確認しオイルシールを取り外します。
取り外したオイルシール。
内部腐食も無く、これであれば完全に再生できるでしょう。
とにかく内外の汚れをしっかりと洗浄し綺麗にしていきます。
洗浄を終えたステアリングギアボックスケース、ラック、ピニオン。
ピニオンはステアリングコラムと繋がり、ラック側はシリンダー内で可動して、
丸ギア(ピニオン)と平ギア(ラック)が噛み合う事でハンドル操作(回転運動)を
平行運動(タイヤの向き)に変えて作動させています。
ギアが噛合う事でスラッジが発生する為、パワステオイルの交換を怠っていると内部にスラッジが堆積して
オイル漏れを発生させたりギアの摩耗や固着に繋がってしまい、最悪の場合破損してしまう事もあるので、
パワステオイルの管理には注意が必要です。
交換するオイルシール、Oリング一式。
交換する数やサイズが複雑なので各パート毎にチェックをしながら作業を進めます。
新しいオイルシール、Oリングを装着。
見た目に使えそうだとしても古いパーツは劣化が進行している為、再使用はNGです。
ピニオン側のOリングを交換し丸ギアにグリスアップ。
ラックをシリンダーケースに装着。
テンショナー部のパーツも状態を確認し、洗浄後にOリング等のパーツを新品へ交換。
テンショナー部のパーツをシリンダーケースへ装着。
各部のオイルシール、Oリング等を交換し、ステアリングギアボックスのオーバーホールが完了。
新旧のエンジンマウント。
古いマウントはお饅頭のように潰れてしまっていますね。

交換時期としては遅いくらいでしたね。
新しいエンジンマウントを装着し交換作業が完了。
重いエンジンを支えたり振動を軽減しているパーツなので劣化が進行してしまうとエンジンの振動が大きくなり
その影響でエンジンだけでなくその他のパーツへ悪影響を及ぼす可能性が高くなる為、
走行時やアイドリング時のエンジンの振動や異音等の違和感など感じたら一度チェックですね。
ステアリングギアボックスを車体へ装着。
新旧のステアリングラックブーツ。
使用するロックプレート、ブーツバンドも新品へ交換。
ミッションを支えているミッションマウントも劣化している為交換。
新旧のミッションマウント。
新旧比較してみると、元々は同じ形状の筈なのですが大きく変形してしまっている事が判ります。
新品と比較してみると大きく潰れてしまっています。
エンジンマウントと同様に振動を吸収出来無くなる事で他のパーツへ悪影響を及ぼす為注意が必要です。
小さなパーツなのですが、エンジンマウントと同時に交換するだけで想像以上に変速時の振動が軽減されるので
エンジンマウントを交換する際はセットで交換するケースが多いですね。
ミッションとプロペラシャフトを繋ぐユニバーサルジョイントも亀裂が発生している為
プロペラシャフトを降ろして各部の状態を確認しユニバーサルジョイント、センターベアリング等を交換します。
プロペラシャフトを降ろして各部に問題が無いか確認を行って、
ユニバーサルジョイント、センターベアリングを交換。
取り外したユニバーサルジョイント。
全体的に亀裂が入っています。
エンジンからの回転力をミッションを通じてプロペラシャフトへ伝え振動を抑える部品なので負担が多く、
劣化が進むと写真のように亀裂が入り、振動を吸収出来無くなってプロペラシャフトへ悪影響を及ぼします。
更に異音の原因や出力を上手く伝えられなくなる事でパワーロスしてしまいます。
こちらもここまで使用してはいけない見本です。
シャフトを抜いてプロペラシャフトサポート、センターベアリングを交換。
ユニバーサルジョイントと同様に定期的な点検と経年・走行距離を考慮した交換が必要です。
フロントロアアームコントロールブッシュ(ロアコンブッシュ)の交換。
使用されているブッシュの中でも交換頻度が一番多く、劣化してしまうと走行時や停車時、
ハンドリング等にも影響を及ぼします。
発進や停車時にステアリングが左右どちらかに振られたり、荒れた路面を走行した際に
ゴトゴトと異音が発生していたら交換が必要です。
車輌の挙動に違和感を感じたら状態が悪くなる前に掛かりつけの主治医に相談するのが良いでしょう。
プレス機を使用して、ブラケットからブッシュを打ち抜いて新しいブッシュを圧入します。
ロアコンブッシュの圧入が完了。
装着の際は無理な力を掛けてロアアームに圧入すると破損してしまう恐れがある為、
SSTを使用してロアコンブッシュをロアアームに対して垂直に慎重に圧入していきます。
斜めに装着してしまうと新品に交換しても短期間で破損してしまう為、装着時は注意が必要です。
入庫時に現状を把握する為テストランを行った際にブレーキの状態が悪く効きもイマイチだった為、
計測してみた所ブレーキローター、ブレーキパッド共に交換が必要な状態で前後輪全て交換を行います。
サイドブレーキの調整とブレーキシューの表面を研磨して整えます。
サイドブレーキシューはディスクブレーキのパッドと違って、
基本的に駐車の際に固定する意味で使用される為、大きく消耗する事は殆ど無いので
長期に使用する事が可能なのですが、どうしても表面が錆などで荒れてしまうと
ローターとの密着性が低下してしまう為、写真の様に定期的に研磨が必要になります。
正常に調整がされていないと車検には通らないのですが、
定期的に点検を行って通常通りに使用していれば特に問題が出る事はありません。
新品の前後のブレーキローター。
今回はオーナーの意向でスリット入りのブレーキローターをチョイス。
ブレーキローターはノーマルの他にスリットが入ったスリットローターや多数の穴の開いたドリルドローター、
両方の特性を生かしたスリットと多数の穴が開いたドリルドスリットローター等があるのですが、
ブレーキの利きや冷却効果を高めたり軽量化等のメリットの反面、ブレーキパッドの消耗を早めたり
歪みや亀裂が入ったりする耐久性の低下等のデメリットも考慮しなければなりません。
この様に一長一短はありますが、ブレーキは車のパフォーマンスに大きな影響を与える為、
ご自身の走行方法に適したブレーキローターをチョイスする事は、
更に走行を楽しむ事にも繋がりますので様々なタイプの物から選択し、
自身にあったものをチョイスしてみても面白いですね。
取り外した前後のブレーキローター。
使用していた物はスリットや穴も空いていないノーマルタイプだった為、
交換後は以前とはまた違ったパフォーマンスを楽しめると思います。
新しいブレーキローターを装着。
新旧のブレーキパッド。
ブレーキパッドはそのまま装着するのではなく、
面取り処理を行って偏摩耗を防止しブレーキ鳴きを軽減させます。
ブレーキパッドセンサーはブレーキパッドの残量が少なくなると
同時に削れていく事でセンサーが反応して警告灯を点灯させて
ドライバーへブレーキパッドの交換時期を知らせています。
点灯した時点で既にパッドの使用限界が来ている為、無理に走行を続けてしまうと
ローターに悪影響を及ぼしてしまうので早急な交換が必要です。
センサーは経年で故障してしまう事も多く、誤作動を起こしたりセンサーのみを頼りにしていると
摩耗に気付かずにローターを駄目にしてしまう事がある為、
定期点検の際に目視でパッドローターの状態を確認しておく事が大切です。
尚、ブレーキの警告灯が点灯するまでパッドを使用する事は稀で、
基本的に使用状況を確認して早めに交換してしまう事が殆どなので
ブレーキパッドセンサーはブレーキパッドを管理する補助的な機能として捉えておいた方が良いでしょう。
新しいブレーキパッドを組んだブレーキキャリパーを装着してブレーキローター、ブレーキパッドの交換が完了。
最終のテストランの際にブレーキローターとブレーキパッドの擦り合わせや焼き付け作業を行います。
新旧のファンベルト・パワステベルト・エアコンベルト。
基本的に3本ワンセットで交換します。
単体交換してしまうと新品と劣化しているベルトが混在する事になり、それぞれを劣化の度に脱着をしていると、
メンテナンスコストが余計に掛かってしまう事になるので、
一度に交換してしまった方がコスト的にも、車輛管理の点から言ってもベストな選択かと思います。
ベルトは劣化して亀裂が入るとキュルキュルと異音を発生させる為、劣化に気付く事が多いのですが、
初期の段階だとエンジンが暖まると鳴きが収まるケースも多く、
そのまま放置して走行しているオーナーもおられますが、
何らかの原因で突然ベルトが切れてしまうとオーバーヒートに繋がったり、
切れたベルトがエンジンルームで暴れて、その他の部品に被害が出たりといった事もあるので、
異音を感じたら早めに点検・交換を行って下さい。
エキマニとマフラーを接続するガスケットを交換。
使用するナットは劣化を考慮して再使用せずに新品へ交換。
ブレーキフルードの交換。
ブレーキフルードは吸湿性が非常に高く、使用するしないに関わらず水分を吸湿する事で劣化が進行する為、
車を使用していないからと安心する事は出来ません。
水分を多く含んでしまうと水分の影響でブレーキシステムに錆を誘発させ、
ブレーキキャリパーのピストンが固着してしまうと
ブレーキが上手く作動しないばかりかブレーキの片効きや引き摺り等を発生させるだけでなく、
錆の影響でシールを傷めて漏れ出たブレーキフルードがボディなどに付着すると塗装面を傷めてしまいます。
更にブレーキが発生する熱で吸湿した水分が沸騰してブレーキライン内に気泡が出来てしまうと
ブレーキペダルを踏んでも油圧が伝わらなくなってブレーキが全く効かなくなる
ベーパーロック現象を発生させる為、劣化には十分な注意が必要です。
劣化具合はブレーキフルードのリザーブタンクを開ければフルードの色の変化で確認する事が可能で、
透明から劣化が進むと徐々に紅茶色へ変化し色味が濃くなっていく為、定期的にチェックをしておくと安心です。
基本的に車検毎に交換を行う事が多く通常の使用であれば問題は無いのですが、
スポーツ走行をする方や山道や峠道、渋滞地区等でブレーキを酷使する方は、
通常よりも劣化が進行する傾向なので劣化の進行具合には注意して下さい。
カムカバーからのオイル漏れ修理。
オイル汚れがカムカバー全体を覆っていたので、こちらも綺麗にしていきましょう。
カムカバーを外したのちカムやロッカーアームなどに問題が無いか状態を確認し、
装着面に残った古いガスケットは、オイルストーンで綺麗に除去をして表面を綺麗に整えておきます。
カムカバーガスケット、カムカバーを装着します。
カムカバーの装着が完了。
スパークプラグの交換。
フューエルラインがかなり劣化しているのを発見。
E30モデル定番のエア抜きホースの劣化です。この状態で満タンにするとかなりの確率で
ガソリン漏れとなります。
フューエルポンプ廻りのフューエルホースも状態を確認した所、こちらも劣化が進行して交換が必要な状態。
今まで一度も交換された形跡がありませんね。
ホースバンドも交換です。今回はカシメタイプでしたが
ネジ式でも劣化で締付ける力が弱くなったり破損してしまう恐れがある為、再使用は不可。
必ず新しいホースバンドを使用しております。
フューエルフィルターを交換。
フューエルフィルターは給油の際に混入する塵や埃、
タンク内で発生する錆や結露して含まれた水分等を取り除いていており、
汚れが堆積してしまうと目詰まりを起こして燃料の流出量が減少します。
結果、様々なトラブルを生み出す原因になりますので、定期的に交換しておきましょう。
新旧のフューエルフィルター。
外観だけでは詰まりの判断が出来ない為、フィルター二次側での燃圧測定結果や
経年・走行距離等を目安に交換を行います。
新しいフューエルフィルター、フューエルホースを装着し交換作業が完了。
フューエルタンクホースも交換。
こちらもE30モデルでは交換するケースが多いホースですね。
新旧のフューエルタンクホース。
接続に使用するホースバンドも新品へ交換。
新しいフューエルタンクホースの装着が完了。
エンジンルーム内のフューエルホースも交換を行います。
新旧のフューエルホース。ホースバンドも新品へ交換。
フューエルレベルセンサーを取り外し状態を確認。
装着に使用されているOリングを交換。
センディングユニットを取り外して状態を確認。
センディングユニットは特に異常が見られなかった為そのまま使用します。
関連するフューエルホースやホースバンド、装着に使用するOリング等を交換。
センディングユニット、各フューエルホースを装着。
コネクターは経年劣化により破損してしまう事がある為、脱着の際は断線や破損に注意しながら慎重に行います。
最後に適切な値の燃圧が出ているか計測を行って燃料系のメンテナンスが完了。
フューエルポンプリレーは本体が焼付いている等の異常が出ている事が多いので問題が無いか確認を行います。
エンジンオイルの交換。
交換の前にフラッシング剤を注入してエンジン内部に堆積したスラッジやカーボン等の汚れを落します。
特に古いエンジンには汚れが堆積しているケースが多く、エンジンオイルの管理が不十分だと
想像以上にエンジン内部が汚れで酷い状態になっている事がある為注意して下さい。
10分~15分程アイドリングを行ってフラッシング剤をエンジンの手の届かない箇所まで浸透させて汚れを落し
古いエンジンオイルと共に排出を行います。
新旧のオイルエレメント。
E30のオイルエレメントはケースに入ったスピンオン式オイルエレメントの為、
汚れ具合は見た目では判断出来ないのですが、当社ではエンジンオイルの効果を発揮させオイルの再汚染を防ぐ為にも
エンジンオイル交換毎に交換をおすすめしています。
排出は内部に古いオイルが残らない様に時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで行い、
同時に廃油に異常な汚れや金属片等が含まれて無いかチェックを行ってエンジン内部の状況を探ります。
排出を終えたらオイルエレメントを装着し、規定量のエンジンオイルを注入してエンジンオイル交換が完了。
車検に備えてスチーム洗浄で下廻りの汚れを綺麗に落しておきます。
エンジンルームも当然スチーム洗浄を行います。
全ての作業を終えたら最終のテストランを行って修理箇所やその他に異常が無いか確認を行います。
同時にブレーキパッドとブレーキローターの摺り合わせを行って
パッドとローターの密着性を高めると共にローターの早期歪みを防止します。
テストランで特に問題が見つからなければ最寄りの陸運局へ車輌を持ち込み車検を取得します。
後日、車検証、定期点検記録簿、車検ステッカー、定期点検ステッカーをオーナーへお渡して納車となりました。
2019年11月11日