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MAINTENANCE REPORT

第72回 138,614Km

M3SIL.2138,614Km。
日本人の感覚でいけば、ここまで良く走っているなぁと言う距離ですね。
車輌はE36 M3C。
オーナーはこの車のトータルコンディションを整える為、当社へお越しになられました。
E30はもちろんの事ですが、最近では100,000Kmを超えるE36 M3も多く目に付くようになりました。
購入してから3年程(確かこれくらい。)オーナー自身は納車されてから
特別にメンテナンス作業を施工していないという事をお伺いし車輌確認に入りました。
まずは最初にテストラン。
キーを捻るとM3特有のメカノイズの入り混じったアイドリング音に混じって
ガチャガチャ。カチャカチャと色々な異音が混じっています。
ステアリングを握り、走り始めると・・・・
そのガチャガチャ音はエンジンノイズにかき消されますが
ファーストインプレッションとしてまず感じた事は
遅い。
レブリミットまでの到達時間が異常に長く感じる。
アクセルを踏んだ時のピックアップが悪い。
アクセルを踏み込んだ時に後頭部がヘッドレストにもって行かれない。
段差を乗り越えるとバンプが酷い。
コトコトコト・・・・・
リアの足廻りからも音が聞こえます。
変速時の振動も非常に大きい。
どこかが故障して悪くなっているという訳では無く、
車輌全体に万遍無く疲れが見え隠れしている状態。
元々の車輌の持つポテンシャルが高いですから、いきなり動かなくなってしまうという事はあまり無いのですが
コンディションの比較の出来ない一般の方達は、どうしてもこういった状況に陥ってしまいがちになります。OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA
エンジンオイル漏れとパワステオイル漏れのおかげで下廻りはドロドロの状態。
スタビライザーが随分汚れているのが分かりますね。
普段はアンダーカバーが取り付けられているのでオイル漏れをしていても
気が付かない方が殆どです。
エンジンマウントも大きな割れやヒビは見られませんでしたが、交換が必要なようです。
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パワステはタンクとホースからの漏れ。デフのサイドシールからもオイル漏れ。
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ショックは足廻り分解時に、減衰を調べ交換の必要性の有無をオーナーに伝えます。
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ミッションとプロペラシャフトをつなぐユニバーサルジョイント。
本来であればここまで使用してはいけませんね。
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ミッションからも何箇所からかオイル漏れ。
ここまでは無料点検の範囲内で分かった状況です。
ここから車輌をお預かりし、オイル漏れ箇所の特定と各部の異音。
フィーリングを取り戻す為のメンテナンスを考えていきます。
まずオイル漏れはスチーム洗浄で良く洗い流します。
漏れ箇所特定の為でもありますが、オーナー自身が、以前修理しているのを把握していないケースもあります。
修理はされているんだけれども、修理前のオイル汚れがそのまま残っていたなんてことも少なくないのです。
その後、高速と一般道を使い分けテストランです。
時には今持つポテンシャルのギリギリの所まで走り込み、何処に改善の余地があるかを見極めます。
テストランと並行して、各部の目視と分解によるチェックをし、
現状で確実にメンテナンスが必要な箇所。
半年、1年後くらいにメンテナンスが必要な箇所。
等々
メニューの絞込みをしていきます。
もちろん1ヶ月にどれくらいに乗っているのか?
通勤で使っているのか?週末だけなのか?等の使用用途や走り方はあらかじめオーナーに確認しています。
そうして、メンテナンスメニューを作り、オーナーにご提案し、相談の上施工内容が決まっていきます。
勝手に作業を進めていくという事は御座いません。
話しは変わりますが、電話やメールでお問い合わせいただくのは非常に有り難い事なのですが
『こんな症状なんだけど、どこが悪いのでしょうか?』
『これを直すにはどれくらい時間や金額がかかりますか?』
という内容でお問い合わせ頂く事が多いのですが
全てのお客様に『実車未確認ではお答えの仕様が御座いません。』
と答えさせていただいております。
その車輌のコンディションも全く分からないですし、
同車輌で同じような症状であってもその原因は違う場合も多いからです。
その全ての原因を口頭やメールでお伝えする事は不可能ですしね。
もちろん話の内容や遠方にお住みの方で中々ご来店出来ないお客様もいらっしゃいますので
『多分アソコが駄目なんだろうなぁ・・・・』と思い、『参考程度に聞いて下さいね。』
とお話しする事はあるのですが。。。
簡単にお話しだけで故障原因やその現象に対しての修理金額はお答え出来ないケースの方が
多いですからご理解頂けると助かります。
何度もお預かりしているオーナーの車輌であっても何かあれば上記のような点検分解作業を実施し、その後
メニューを作成、ご提案をさせていただいております。OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERA話しを戻して、M3Cのメンテナンスに入りましょう。
まずはアンダーパネル類の交換。
下廻りを擦り過ぎてバンパーがズレているのが分かりますね。
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軽度であればプラパテ等で修正も可能ですがこうなってしまうと交換するしかありません。OLYMPUS DIGITAL CAMERA足廻りのブッシュはフロントリアアッパーマウウント。ロアコンブッシュ。
フロントリアスウィングサポート。フロントリアスタビブッシュを交換します。
元々付いていたビルシュタインのショックの減衰は正常でしたのでこのまま使用させて頂きました。OLYMPUS DIGITAL CAMERAフロントショック部。
アッパーマウントはガタツキが出てきて使用限界を超えていました。
ショックは途中で交換されたと推測できますが、
同時にアッパーマウントは交換されていなかったようです。
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リアショック部。
こちらのアッパーマウントは中心にある軸が抜けてしまっていた状態。
ですからコトコトと走行中に異音が聞こえるわけです。
フロントリアショックは綺麗に洗浄し、各パーツを組み込み作業を進めます。OLYMPUS DIGITAL CAMERAロアアームコントロールブッシュ。
スタート時、ストップ時に一番力が加わる箇所になります。
すぐりの部分から上下に亀裂が入っているのが分かります。OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA
フロントスウィングサポート、スタビブッシュ。
スタビブッシュも随分と変形が進んでいます。OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA
リアスウィングサポート、リアスタビブッシュはパックリと変形しているのが分かります。
手で触るとグニャッと柔らかく、長い間交換されていないのが分かります。OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA
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エンジン、ミッションマウント、ユニバーサルジョイントも交換。
エンジンからの振動や変速時のガタツキ等感じたら一度点検すべき箇所です。OLYMPUS DIGITAL CAMERA4輪アライメント測定と調整を実施し、足廻りに関しては終了。
コトコト音もなくなり、ショックアブソーバー本来の粘りがブッシュ類を交換することにより甦りました。
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エンジン始動時にガチャガチャと鳴っていた異音の一つにベルト部の消耗が見られました。
ベルト自体ももちろん消耗が進んでいましたが、テンショナー、プーリー、ローラー全てにガタが見られましたので
全て交換させていただきました。OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA
エンジンオイル漏れはプレッシャーバルブとカムカバーガスケットから見られました。
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R2000にてエンジン内のスラッジを除去。
使用オイルはFUCHS 5W50
もちろんエレメントも交換。
施工後は気になる異音も収まり、フィーリングの回復に期待が持てます。
OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAパワステ部はホースの交換。
元々入っていたオイルは量が少なかった上に、真っ黒の状態。
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ミッションオイル漏れは3箇所から。
シャフトシール、バックランプスイッチ、シフトポジションインジケータースイッチを交換。OLYMPUS DIGITAL CAMERA同時にオイル交換。使用オイルはFUCHS ATF4000
街中の使用であればATFの柔らかさで十分でしょう。
ギアオイルは冬になると1速が入りにくくなったりと街中では不向きなケースが多いです。
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デフオイルはやはりサイドシールからの漏れ。
オイルシールを交換。
アウトプットフランジ等に異常が無いかも確認し組み上げていきます。OLYMPUS DIGITAL CAMERAデフオイルの交換。
FUCHS HLS90を使用。
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ブレーキオイルも交換。
1年に一度くらいはチェックをしてあげても良いかと思います。OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA
フューエルライン~インジェクターの洗浄、バルブ廻りの洗浄をし、
アクセルのツキの良さを甦らせます。
フューエルフィルタとスパークプラグを交換し、作業は完了。
プラグはオイルまみれで前回の交換時の締め付けトルクが適正でなかった為、
ガスケットが緩んできてしまっている状態でした。
機関のメンテナンスが終わり、最終確認の為のテストラン。
どのギアからもヘッドレストに頭が張り付くようなトルクとクイックなアクセルのツキが甦りました。
140,000Km近い車輌とは正直思えないフィーリング。
手前贔屓に聞こえてしまうかも知れませんが、この車輌に関してはこちらが予想していた以上のコンディションを取り戻しました。
足廻りも若干硬いかな?と思いましたが
コーナーリング時にかなり粘ってくれるのはさすがビルシュタインというべきでしょうか。
納車時、オーナーにも乗って頂きましたが、その違いにすぐに気付いてくれこちらとしてもうれしい限りです。OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA
最後にお色直しでヘッドライトの清掃。
見た目だけではなく夜間の視認性も変わって来ますので、汚れてるなぁという方は一度清掃してみては?M3SIL.64今回のレポートとは全く関係有りませんが、通勤途中で見かけたセリカ。
コンディションも良さそうで大事にされているのが各所に見られました。
味があって非常に良いですね。

2007年08月29日