【E46 330iCabriolet】足廻りフルブッシュ交換【150,000Km】
E46 330iCabrioletが足廻りのブッシュ交換の為入庫しました。
走行距離は約150,000kmで当店で10年程整備を担当させてもらっている車輌です。
今回は各種のオイル交換作業と走行距離も考慮して足廻りのフルブッシュ交換をメインに行います。
まずはリフトアップをしてからリアアクスルキャリアを降ろす準備をします。
下廻りを確認すると大きなトラブルなどは無さそうですが・・・
マイクロメーターを使用して前後のブレーキローターの計測を行います。
摩耗限界値だったので前後共に交換。
リアアクスルキャリアを降ろす前にデフオイルを排出。
デフオイルは粘度が高いので事前に油温を上昇させ粘度を下げてから排出させる事で
内部で発生したギアスラッジも同時に排出させやすくします。
古いオイルが残らない様にしっかりと排出させる事が大切です。
マフラー、プロペラシャフト等を取り外し本体からリアアクスルキャリアを降ろします。
リアアクスルキャリアを降ろしました。
各パーツ毎に分離させてそれぞれ装着されているブッシュの交換を行います。
アームやブッシュ周辺に堆積した砂埃や錆などは作業効率が悪くなるばかりか新品のブッシュ圧入時の噛み込みなど
その時には、表面化しなくとも長く装着していく上で、ジワジワとボディブローのように悪影響を及ぼす事も考えられますので
作業の前には必ずスチーム洗浄をしてしっかりと異物は取り除いておきます。
それぞれ各パート毎に分けブッシュ交換を行います。
先ずはリアアクスルキャリア本体からブッシュ交換を始めます。
アクスルキャリアのブッシュを交換する前に、キャリア本体にクラックなどが入っていないか、
メーカー既定の寸法を保っているかを測定し、問題が無い事を確認し作業を進めていきます。
リア廻りの支点となるパーツなので丈夫に作られていますが、溶接部のクラックや変形など
今まで何度か見てきておりますので、手軽に交換出来ない箇所だからこそ、しっかりと見ておきたいところでもあります。
交換の際にも各ブッシュに異常な変形や負荷が掛かっていないか確認します。
ここでブッシュの異常な偏心や断裂などが見られる場合は、車体側に問題がある可能性を疑います。
今回は特に異常は確認できなかったので、ブッシュの交換を進めていきましょう。
SSTを使用してブッシュを外します。
取り外したブッシュにはご覧の通り亀裂が入っています。
未交換の場合、経年と走行距離を考えれば、このような状態になるのは当然でしょう。
新品のブッシュを圧入し装着していきます。
ブッシュの装着の際には向きや位置など決まり事が多い事もありますし、
無理矢理入れようとするとせっかくの新品のブッシュがいとも簡単に引き千切れます。
デフマウントもSSTを使用し慎重に外します。
新旧のデフマウント。
劣化具合は写真の通りです。
ゴムの特性でもある柔軟性が失われる事で衝撃を吸収・分際する事が出来ずにクラックが発生。
リアアクスルキャリア本体のブッシュ交換が完了。
次にトレーリングアームブッシュの交換。
片側2箇所にラバーブッシュと1箇所にボールジョイントが装着されているのでそれぞれSSTを使用して交換を進めていきます。
新旧のトレーリングアームブッシュ。
SSTを使用してナックル部分のマウントブッシュを交換。
新旧のマウントブッシュ。
新旧のボールジョイント。
ボールジョイントはリアの足廻りでは重要な役割を持つパーツですが見た目以上に消耗している事が多く注意が必要です。
ボールジョイントを圧入。
ボールジョイントを装着してトレーディングアームのブッシュの交換作業は完了。
ロアコントロールアームのブッシュ交換。
新旧のロアコントロールアームブッシュ。
ロアコントロールアームは変形している事も多いので、寸法確認と材質自体の劣化を見極めて
Assyで交換するか、ブッシュのみで大丈夫かを見極めるのがポイントです。
ロアコントロールアームブッシュの交換が完了。
アッパーコントロールアームのブッシュ交換。
このブッシュも偏心の進み具合に注意が必要です。
ブッシュの取り付けも方向性があるので間違えない様に圧入します。
取り外したリア廻り各ブッシュ。
負荷の掛かり方によって亀裂等の劣化が見られる場合やパッと見た感じ劣化が感じられないブッシュもありますが
その見た目以上に劣化している事がほとんどで、何処かをそのまま残すような事はせずに・・・
リアのスタビブッシュ・スウィングサポートの交換。
新旧のリアスタビブッシュ・スウィングサポート。
スウィングサポートは本体ごと交換。
新旧のアッパー・ロア―のスプリングパッド。
それぞれ新品に交換。
各パーツのブッシュ交換が完了後、元通りに組み直して車輌へ取り付けます。
ここでポイントになるのが各ボルトナットは仮止めに留めるという事でしょうか。
接地してから既定トルクで固定しないと異音が出たり、ブッシュ本来の性能が発揮できない事もありますので注意です。
新旧のリアブレーキローター。
リアアッパーマウント・プロテクションチューブや補助ダンパーを交換。
ショックアブソーバーは一度交換されており、減衰値も問題無かったのでそのまま使用します。
新旧のリアブレーキパッド。
新しいパッドはそのまま取り付けてしまうと音鳴りする事が多いので面取りをします。
面取りをする事で鳴きを抑えるだけでなくブレーキの利きも向上させます。
車輌本体にリアアクスルキャリアを装着後、規定量のデフオイルを注入しデフオイルの交換、リア廻りのブッシュ交換が完了。
ここからはフロントセクションの作業に入ります。
フロントロアアームコントロールブッシュの交換。
E46モデルの中で交換頻度が一番高いブッシュになるのですが
発進時や停止時にステアリングが左右どちらかにガクっと振られたり、
荒れた路面を走行中にゴトゴトというような異音が出るような場合は要交換です。
ホルダーごとロアアームから引き抜いていきます。
新旧のロアコントロールアームブッシュ。
こちらはブッシュホルダーごとの交換。
取り付けの前にロアアーム本体の変形など出ていないか確認を行い装着。
装着の際には真直ぐに圧入しないとブッシュの破損の原因になるので慎重に作業を行います。
フロントストラットのアッパーマウント・スプリングパッドなどを交換していきます。
新旧のフロントアッパーマウント・スプリングパッド。
乗り心地の変化を体感出来るパーツの一つですね。
フロントのスタビブッシュ・スウィングサポートの交換。
スウィングサポートのボールジョイントの動きが悪くなるとスタビが上手く機能せず
コーナーリング時の車体の傾きが大きくなってしまいハンドリングが安定しなくなってしまいます。
新旧のフロントのブレーキローター。
新旧のブレーキパッド。
前後全てを新品へ交換。
ATフルードの交換。
当社の交換方法は全量交換です。
走行距離が多い車輌はATフルードの交換には注意が必要ですが、当社で定期的に交換をしている車輌なので
10万Kmを超えていても全く問題はありません。
出来るだけ古いオイルを排出させる為、閉店前に作業を行い一晩かけ出来るだけ排出させます。
交換の際にはオイルパンに溜まったスラッジの状態を見てAT機構に不具合が出ていないかも確認。
ATエレメント・ガスケットは新品へ交換。
新品のATエレメントとガスケットを使用して装着。
FUCHS ATF4000(DⅢ)
油面調整は油温を確認しながら行い、テストランをしてシフトアップダウンに問題が無いかを確認します。
低温時の油面が基準になるので、テストラン終了後は再び冷却させてから再度、
油量に問題が無いかを確認します。
パワステオイルの交換。
専用の機材を使用してフラッシング。
パワステポンプやギアボックス、パワステラインに堆積したスラッジを古いオイルと共に排出させていきます。
交換完了です。
ブレーキフルードも交換時期ですね。
フルードを圧送させブレーキラインに溜まったスラッジを古いフルードと共に排出。
排出されたフルードに異常な量のスラッジやエア噛みなど無いか確認しながら進めていきます。
ンン?と感じた時は直感に従い、詳しく見ていくようにしています。
ヒーター効かず・・・
ソレノイドが通電しても動かなかったので交換。
新旧のヒーターバルブ。
ソレノイド(電磁スイッチ)の不良・バルブ自体の固着など、その原因は様々ですが
トラブルの出やすい箇所でもあります。
ヒーターバルブの脱着でエア噛みもしていますので、エア抜きはしっかりと。
エンジンオイルの交換。
交換の際にはフラッシング剤を注入しエンジン内部に堆積したスラッジやカーボンの汚れを浮かせ
古いオイルと同時に排出させやすくします。
アイドリングを10分から15分程行いオイルを排出。
新旧のオイルエレメント。
フラッシングされた汚れもあり、オイルエレメントも真っ黒な状態です。
オイル交換後はオイルインスペクションのリセットをします。
リセットせずにオイル交換されている車輌も見ますが、
リセットをしっかり行なう事でオイル交換のタイミングを把握できやすくなりますので行った方が良いでしょう。
リセット完了。
オイル交換は一般に言われている交換時期がありますが、乗り方によってベストな交換時期は様々です。
数値を目安としてご自分の走行方法や年式・走行距離等を把握してオイル交換を行う様にしましょう。
規定量のオイルを注入してエンジンオイルの交換は完了。
4輪アライメントの測定と調整。
数値はメーカー基準値を元に車輌に最適な数値をテストランを繰り返しながら導き出していきます。
カブリオレモデルは通常の車輌とはボディ剛性や重量等が違いますのでその事も考慮して
直進性、コーナーリングでの安定性等、テスト走行を繰り返しながら調整します。
調整が完了後、アライメントデータ・分解整備記録簿をオーナーへ渡して納車になります。
今回、フルブッシュ交換をした事で劇的な乗り心地の変化に喜んで頂けたのではないでしょうか?
150,000kmを超える車輌になりますがまだまだ元気な車輌ですのでより長く楽しんで下さいね。
またの来店をお待ちしております。有難うございました。
2016年12月07日