【E30 M3 SportEvolution】エンジンストール・ミッション異常・ステアリングギアボックスオーバーホール【66,000Km】
今回はE30 M3 SportEvolutionが修理の為入庫です。
高速走行中に突然エンストして走行不能になってしまったそうで、緊急入庫となりました。
エンストの原因は様々有るので状態を確認し原因を探りながら作業を進めます。
エンジンは何とか始動出来るのですが4,000回転ぐらいになるとミッションからの振動がビリビリとシフトノブへ伝わる様になり
これ以上回転数を上げるのが怖いぐらいですね・・・
更にエアコンをONにするとエンジン回転数がかなりラフになりストールする状態。
まずは各エアホースなどの亀裂などでエアを吸っていないかを疑いサージタンク・スロットルボディを外して確認します。
スロットルボディを外し確認していきます。
外したスロットルボディ。
スロットルインシュレータは硬化し、全体的にクラックが入っているので交換が必要です。
E30M3では定期消耗パーツと考えて良いでしょう。
今回のように劣化する事で密着性が薄れクラック部分から余計なエアを吸い込んでしまう事で
空気と燃料の混合比率が変わり、燃料が薄くなる事で正常に爆発が出来なくなり
ハンチングを起こしてアイドリングが不安定になります。
新しいインシュレータへ交換。
新旧のインシュレータ。
インシュレータの装着は単にボルトを締めるのではなく、各ボルトを均一に締めて装着。
ボルトを均一に締めないとインシュレータに歪みが応じ密着性が薄れ破損に繋がる場合が有るので注意が必要です。
インジェクションパイプを取り外したので、インジェクターOリングは必ず交換します。
再使用は余程新しい場合を除いてNGです。
新旧のインジェクターOリング。
インジェクションパイプをつなぐ短いフューエルホースを外して確認。
パッと見た限りでは判断しにくい部分ではありますが画像の様に亀裂が多数入っており交換が必要な状態。
このセクションのフューエルホースはM3専用部品であることがほとんどです。
長さ・角度がそれぞれ決まっていますので、汎用のホースを短く切って使用する事は出来ません。
稀に、汎用ホースを短く切り取り無理矢理装着している車を見かけますが、燃圧不良などトラブルの大小はありますが
不具合が出ている事がほとんどです。
新旧のアイドルバルブホース。
ブローバイホースもバンド締め付け部分から断裂が始まっていたので交換します。
ブレーキを踏むと、微妙に踏み代が深く効きにくいので
ブレーキ廻りを点検したところ、バキュームチェックバルブ不良だったので交換。
乗り比べが出来れば気付くのでしょうが、ご自身の車だけだと気付きにくいものです。
新旧のチェックバルブ。
プレッシャーレギュレーターとインジェクションパイプをつなぐフューエルホースも交換します。
こちらもM3専用部品ですね。
サージタンク・エアファンネルに新しいOリングを装着。
こういったOリングからもエアを吸い、アイドリング不調につながります。
Oリングをずれない様に丁寧に装着。
ずれたまま装着すると装着されていたOリングのように潰れてしまうので注意です。
新旧のエアクリーナー。
汚れて目詰まりしてくると十分な空気が得られないばかりか砂や埃を含んだ汚れた空気をエンジンへ送り込む事になり
様々なトラブルの原因になるので御自分の走行状況を考慮して適切な交換時期を見極める事が大切です。
クリーナーボックス内は汚れている事が多いので交換の際は清掃も忘れずに行いましょう。
アクセルワイヤーケーブルの交換。
アウターケーブルが劣化している影響でワイヤーが引っ掛かりアクセルが戻らなくなる等のトラブルを発生させます。
アクセルの反応が鈍くなったり、写真のように破損が見られた場合は即交換しましょう。
新旧のアクセルワイヤーケーブル。
ワイヤーだけでなく、ホルダーに固定する為のグロメット部分の破損にも注意が必要です。
交換後はスムーズな操作が可能になりアクセルレスポンスが向上しました。
その際にエアフロとスロットルを調整すると気持ちの良い走行を楽しめる様になります。
現在の車はアクセルワイヤー方式から電子制御化され調整は非常に難しい物になっておりますが、
E30 M3の場合はM3を熟知したメカニックが調整すると走りが見違えますね。
各パーツの経年劣化等で調整が変わってくると走行にも影響を及ぼすので、加速が鈍ったり反応が悪かったり
軽快に走れなくなるのは調整が上手くされていない場合も多く、
しっかりとした調整を行えば見違える程の走行を取り戻す事が可能になります。
次はマフラー、遮熱板、プロペラシャフト等を外しミッションを降ろして4,000回転以上回した際の
シフトに伝わる振動の原因を探っていきます。
外したプロペラシャフト。
特に問題は無さそうです。
シフトレバー本体を外して消耗パーツを交換。
内部に不具合が無いか確認しましたが、内部シンクロに問題がありました。
内部パーツの交換・オーバーホールも考えましたが、廃番パーツもあり、コストを考慮すると
中古ミッションを用意してもあまり変わりはなかった為、ミッションASSYで交換する事に。
新旧のシフトレバーベアリング。
シフト廻りのブッシュやカラーなど全て交換していきます。
シフトレバーブッシュ交換。
ブッシュ類は経年劣化で固くなり破損する場合があるので注意が必要です。
シフトアームはブッシュが組み込まれているのでASSY交換。
新旧のシフトロッドジョイント。
E30のパーツが廃番になっていたので代替パーツを使用。
シフトリンケージのプラスチックディスクを交換。
クラッチカバー・クラッチディスクの状態を確認。問題は無さそうです。
フライホイールを歪みや偏摩耗等が無いかダイヤルゲージを使用して確認します。
パイロットベアリングは要交換ですね。
新旧のパイロットベアリング。
ベアリングは経年劣化でグリス切れを起こす事でスムーズな可動が出来なくなり摩擦が増える事でゴロゴロと異音を発生させ
そのまま使用していると最悪の場合ベアリングが破損してしまいます。
クラッチを組んで再びボディへ戻した後に規定量のミッションオイルを注入してミッション部作業は終了。
おそらく、これでレブリミットまでアクセルを踏み込んでも、振動は出ないでしょう。
今回の最後の作業になります。
ステアリングギアボックスからオイルが漏れているので取り外してオーバーホールを行います。
タイロッドエンドを外し分解していきます。
しっかりと固定してから各パーツをそれぞれ分解。
オイルシール劣化の為オイル漏れを起こしていました。
Oリングなど全て新品へ交換。
分解が終了。
各パーツを綺麗に洗浄して消耗品はオーバーホールキットを使用して全て交換。
シャフト部分など腐食痕も無いので、まだまだ現役で使用できます。
折角なので、ケースなどはブラストで汚れを落とし綺麗なアルミの梨地が出る様に洗浄します。
ピニオンのOリングは全て新品へ交換。
新旧のOリング。
細いリングも有るので傷を付けない様にピックツールやピンセットを用いて慎重に装着していきます。
ラック側も分解して中のOリングやオイルシールを交換。
新旧のOリング。
見た目に劣化を感じなくても確実に経年劣化しているので新しいパーツへ交換する様にしましょう。
Oリング、オイルシール等全て交換。
ギアボックス本体のオイルシールも交換。
ギアボックスへラックを戻し、Oリングを装着したピニオンを組み込みます。
ステアリングの位置に注意して装着する事が大切です。
パイプラインのOリングも交換済。
ホローボルトのワッシャも新品へ交換。
新旧のタイロッドブーツ。
装着に使用するパーツも全て交換。
タイロッドエンドを装着してステアリングギアボックスを車体へ戻します。
最後に、パワステオイルを注入しギアボックスやポンプ内のエア抜きを行い作業は完了。
負圧計を使用して4連スロットルのエア流入量を適切な位置で一定にしエアフロ調整を行い、全ての作業が完了になります。
作業終了後にテストランを行い、走行中に各部に不具合や違和感が無いか確認をします。
テストランと調整をを行いながら最適な状態を導き出していき、後日オーナーの元へ納車となりました。
入庫時とは違い、アクセル全開で駆け抜けられるコンディションは気持ちの良いものですね。
SpEvoらしい軽快な走りを楽しめるコンディションに復活しました。
またの御来店をお待ちしております。
2017年01月06日