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MAINTENANCE REPORT

【E34 M5 Touring】各部メンテナンス【120,000Km】

各部メンテナンスの為、E34 M5 Touringが入庫です。走行距離は120,000Km。
初めての来店という事で詳細が判らず各部の細かいチェックをし、メンテナンスメニューを作成し
優先順位を決めてオーナーと相談しながら作業を行っていきましょう。
まずはデフオイル漏れ修理。
ドライブシャフトのサイドフランジからのオイル漏れを発見。
これは内部にあるサイドフランジに圧入されているオイルシールの劣化が原因で
オイル漏れを発生させるのですが、漏れ方があまりにも酷いと車検は通りません。
今回は運転席側からの漏れが多く、助手席はさほどではありませんでしたが
今後を考え、左右同時にオイルシールを交換します。
オイル漏れ修理の前にデフオイルを排出。
デフオイルは粘度が高い為、必ず温度を高めた状態で内部で発生したスラッジも一気に排出させます。
デフオイルの交換を怠るとオイルシールの劣化を早める原因にもなりますので
ご自身の走り方や期間を定めて、定期的にチェックをし、適切な交換時期を把握しておきましょう。
デフオイルの排出を終えたら左右のドライブシャフトを外します。外したドライブシャフト。
ブーツ等に破れや劣化が無いか確認。
経年劣化だけでなく何らかに接触する等でブーツが破損しているケースがあるので注意が必要です。サイドフランジを外します。アウトプットドライブフランジを外します。取り外したアウトプットドライブフランジ。
各パーツに異常が無いか状態を確認。
新旧のオイルシール。
ベアリングキャップOリングもセットで交換。新しいOリングを装着。
オイルシールを圧入する際には異物の付着や斜めに入らない様に注意を払い水平に慎重に装着します。両サイドのオイルシールの交換を終えたらドライブシャフトを元に戻してサイドフランジのオイル漏れ修理が完了。センターシールの劣化も考慮して交換する為、プロペラシャフトを外します。外したプロペラシャフト。
センターフランジを外します。センターシールを交換。
外したセンターフランジのスプラインに大きな傷やガタなど無いかを点検。新旧のセンターシール・ロックプレート。
フランジを止めるロックプレートは再使用せずに新しいパーツを使用。フランジを戻し、新しいシールガスケットを装着してセンターシールの交換が完了。
グリスを塗布してプロペラシャフトを装着。マフラーハンガー(吊りゴム)は劣化の為、千切れて破損していました。マフラーは2ヶ所の吊りゴムでで支えられているのですが両方共破損していました。
この状態ではマフラーの振動を抑えられずにボディと接触する等して異音を発生させたり、
中間触媒などに負担がかかりますので、こちらも定期チェックパーツのひとつですね。
このタイプの吊りゴムはすぐに断裂する事が多いので、車検毎の交換と考えても良いかも知れません。新旧のマフラーハンガー。
ユニバーサルジョイントの交換。新旧のユニバーサルジョイント。
いつ交換したかなどが不明な場合には、こういった箇所のパーツは同時に交換してしまった方が良いでしょう。
ユニバーサルジョイントを交換するだけでもマフラーやプロペラシャフト脱着する工程がある為、
今回の様に効率良く一緒に作業してしまう方が、
故障の度に作業を行うよりもメンテナンスコストの削減に繋がります。センターベアリングも同様に交換。新しいセンターベアリングを装着。プロペラシャフトのメンテナンスが完了。
元通りに組み付けます。
新旧のドレンボルトワッシャ。
ワッシャは自身が潰れる事で密着性を高めている為、一度使用した物は再使用不可。デフオイルを規定量注入してデフオイル漏れの修理と交換が完了。エンジンマウントは漏れたオイルの付着で変形しているのと、ヒビ割れが目立ったので交換します。新旧のエンジンマウント。
重いエンジンを支えるだけでなく高温にも晒される為、
劣化には注意が必要でヒビ割れを見つけたら交換をおすすめしています。新旧のミッションマウント。
新旧を比べてみると、縦方向の潰れだけでなく、捻じれて消耗しているのが分かります。
トランスミッションの縦方向の振動を常に吸収している箇所で、消耗のスピードはエンジンマウントより
少々早めですね。一見、問題なさそうに見えても横に割れて乗っかっているだけというようなケースもあります。
新旧のファンベルト・ACベルト・オルタネーターベルト。
かなり痩せてしまっており、エンジン始動時やアクセルを踏み込んだ際に音が出ていたので交換です。
Vベルトはその構造上どうしてもプーリー接触面から徐々に削れていき、
このように痩せていきますので平ベルトより寿命は短めです。ステアリングを切る際に異音がするという事なのでチェック。
エアバックコンタクトリールのグリス切れ。ステアリングを外してエアバックコンタクトリールにグリスを注油。
ステアリングからの異音はステアリングシャフトや今回のようにコンタクトリールからの異音など
様々な原因がありますので、一箇所一箇所を細かく調べ的確に作業ポイントを絞っていきます。
新旧のフロントブレーキローター。
マイクロメーターでの数値確認とダイアルゲージでの歪み測定の結果、
交換時期だと判断したのでフロントリア共に交換。かなり粗く消耗しているのが分かりますね。
新旧のブレーキパッド。
新しくローターを交換する際には、パッドの残量が多い場合でも出来るだけ新品に交換した方が
装着後のブレーキ鳴きや、パッド・ローターの偏摩耗を防止出来ます。
新旧のリアブレーキローター。
こちらもレコード盤の様な状態なのですが、小石を挟んだのか一部が筋状に削れていました。新旧のブレーキパッド。リア側もブレーキローター、ブレーキパッドの交換が完了。
あわせてサイドブレーキの調整も行います。オーナーからのリクエストで、Newタイヤへ交換。ホイールバランス調整もしっかりと。
全ての作業を終えたら最後にテストランを行い、同時にブレーキの摺り合わせと焼き付け作業を実施。
ブレーキ交換後はアタリを付ける為の慣らし運転が必要なのですが、通常の走行なら約300km~1,000km程で
完了する為、その間は急ブレーキや急ハンドル等の操作は出来るだけ控えた方が良いでしょう。

今回のE34M5は最終モデルでも20年以上が経過しており
初期モデルなら約30年になるので経年や走行距離による消耗は避けられません。
安心してより長く楽しむ為にも定期的なメンテナンスを行い各部の状態を見極めながら整備を行い、
大掛かりな作業が必要な場合は周辺のパーツを二度手間にならないよう交換してしまう等、
相談・打ち合わせをしながら作業をしていく事が大切ですね。

2018年01月19日