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MAINTENANCE REPORT

【E86 Z4 M Coupe】12ヶ月法定点検&各部メンテナンス【35,000Km】

今回はE86 Z4 M Coupeが12ヶ月法定点検と各部のメンテナンスで入庫です。
購入されて間もないのですが、整備は当社でという新オーナーのリクエストに応えるべく
しっかりと点検・整備を行っていきたいと思います。
走行距離は35,000Kmと低走行なので、オイル交換を中心とした基本整備を進めつつ、
バックカメラなどの取付も行っていきましょう。
エンジンオイル交換。
車はエンジンが作り出す動力によって走行出来るのですが、エンジンは人間に例えると心臓の役割をしており、
エンジンオイルはエンジンをスムーズに動かす為に重要な潤滑油で、こちらは血液に例えられます。
血液がドロドロな状態では健康とは言えない様にエンジン内部に汚れが堆積したりオイルが汚れている状態では
本来の性能を発揮する事が出来ず、燃費の低下や更にオイル漏れ等も併発して重症になってしまうケースもあります。
基本的に定期的なエンジンオイル交換を行っていればオイルの清浄効果でエンジン内部を常にクリーンな状態に
保つ事が可能なのですが、定期的な交換を行っていないとエンジン内部にスラッジやカーボンが堆積してしまい
エンジンオイル交換だけでは汚れを落とせなくなってしまう為、当社ではフラッシング剤を注入し
出来るだけエンジン内部で発生したスラッジやカーボンの汚れを落とし古いオイルと共に排出するようにしています。
使用するフラッシング剤は汚れを素早く落とすだけでなく洗浄の際の摩擦を抑え、
保護被膜を形成し再付着防止効果で一度落した汚れを寄せ付けず、新しいオイルの再汚染を防ぐ効果が期待出来ます。
約10分~15分程アイドリングを行ってエンジン内部にフラッシング剤を浸透させて
汚れを落とし古いオイルと共に一気に排出。
古いオイルは画像の様に真っ黒な状態になって排出され、エンジン内部に汚れが堆積していた事が想定出来ます。
排出には時間を掛けてエンジン内部に古いオイルを出来るだけ残さない様にしずくが垂れなくなるまで行い
排出したオイルに異常な汚れや金属片等が混ざってないか確認しエンジン内部の状態を探ります。
新旧のオイルエレメント。装着に使用するパッキン等も全て新品へ交換。
取り外したオイルエレメントは内部の汚れを吸着して真っ黒な状態でした。
今回使用したオイルは【FUCHS TiTAN SuperSyn 5w-50】。
M3やALPINA等のハイパフォーマンスエンジンを搭載するモデルのオーナーから支持が高い高性能オイル。
Z4 M CoupeはE46M3と同じ3.2L直列6気筒DOHC 300馬力オーバーのエンジンを搭載しており
低回転域から高回転域までストレスなくスムーズに吹け上がるオイルフィーリングの良さに驚かされると思います。
背中をググッと押し付けられる様な加速感はこのモデルならではですね。
オイルエレメントを装着後、規定量のエンジンオイルを注入してエンジンオイル交換が完了。
ミッションオイル交換。
ミッション内部では複数のギアが組み合わされ作動しており、その潤滑をする役割がミッションオイルです。
MT車を乗っている方なら経験があると思いますが、ギアの入り方がスムーズに入らなかったり、
ギアが固いとかギアが重い等と表現する方もいるのですが、
ミッションオイルは使用していくと温度の変化やギアから発生したスラッジが混ざり合う事で劣化していき
古いギアオイルのままミッション操作を続けるとギアの噛み合わせが悪くなり、上記のような症状をもたらします。
一般的に20,000km~30,000km程度を目安に交換と言われているのですが、その距離に満たなくても
ギアの入り方に違和感を感じたり異音が発生する様な場合は早目のチェックと必要があれば交換が必要です。
特にMTの中古車を購入する際には、試乗の際の変速の違和感には注意が必要です。
排出後に規定量のミッションオイルを注入して交換作業が完了。
FUCHS 5SPEED 75W-90
デフオイルの交換。
ミッションオイルと同様にデフ部分にもギアが使用されており、
コーナーリングをスムーズに走行出来るのはデファレンシャルが作用しているおかげです。
カーブが多い道など差動運動を多用すれば必然的に交換時期がが早くなるわけですから
デフオイル交換はご自身の走行の仕方によって交換時期を定めた方が良いでしょう。
排出後に規定量のデフオイルを注入してデフオイル交換が完了。
FUCHS HLS90 95W-140 LSD対応
パワステオイル交換。
しっかりとギアボックス・ポンプ内のフラッシングを行って堆積したスラッジと共に古いオイルを
完全に車外へ圧送します。
単に古いオイルをタンクから抜いて新油を注入しただけでは充分な効果は得られないばかりか、
内部に残ったオイルや汚れと新油が混ざり合う事で劣化を早め、
パワステラインへの弊害も発生させる要因になるので要注意です。
交換前のパワステオイル。
黒く劣化していて交換が必要な状態。
ポンプやギアボックスへ負担をかけるだけでなく、ホースやガスケットの劣化を早め、
異音やオイル漏れを発生させる原因になるのでオイルの変化には注意して下さい。
交換後のパワステオイル。
新油は透明な赤い色なのですが、パワステラインのフラッシングを行っていないと
残っていた汚れが新油と混ざり合う為、ここまでの透明度にはなりません。
単に交換するのではなく、どの様に交換を行う事が最適なのかを考慮しながら作業を進める事が大切です。
ブレーキフルードの交換。
状態の変化はブレーキフルードのリザーバータンクを開けて確認し、紅茶色になっていたら交換が必要です。
稀にフルードが黒くなっている車輌を見るのですが末期状態で各部に不具合を抱えている事が多く、
ブレーキの不具合は命に関わる事なので状態の変化には十分注意して下さい。
古いフルードを圧送してブレーキラインで発生した錆や水垢等の汚れを車外へ排出。
排出したフルードに異常な汚れや錆が発生してないか確認する事が大切で、異常な汚れや錆が発生していた際は
原因を突き止める為、ブレーキラインの交換等の大掛かりな作業が必要です。
交換の際にはブレーキブースターやマスターシリンダーからのフルード漏れ等の異常が無いか確認します。
MT車はクラッチを操作してギアの変速を行う為、クラッチフルードの交換が必要です。
交換を怠るとレリーズシリンダー内に錆が発生しフルード漏れを起こすとクラッチ操作が出来なくなってしまいます。
非常に吸湿性が高く錆を誘発するので定期的な点検と交換が必要です。
交換後のブレーキフルード。
新油は無色透明なのですが劣化していくと徐々に紅茶色になって更に色が濃くなります。
吸湿性が高く水分を含んでいく為、ブレーキシステムに錆や水垢を発生させ、更に含んだ水分が
ブレーキの熱で沸騰する事で気泡を作り、油圧を妨げる事でブレーキが利かなくなる
ベーパーロック現象を発生させます。スポーツ走行をしたり高性能エンジンを搭載している車輌等は
状態を確認して交換の必要があれば適宜交換をしていれば問題無いでしょう。
冷却水の交換。
フラッシング剤を注入してウォーターポンプや冷却ラインの錆や水垢等を浮かせて古い冷却水と共に車外へ圧送します。
ロングライフクーラントはエンジンを冷却しオーバーヒートを防ぎ防錆効果で錆の発生を抑えているのですが、
劣化してしまうと効果は薄れオーバーヒートの原因や冷却ラインに負担をかけたりする事で
冷却メカニズムのトラブルを引き起こしますので注意が必要です。
交換時期は、1年に1回を目安に行って、同時に冷却ラインの点検も実施する事で
オーバーヒートや冷却水漏れ、ウォーターポンプの不調等の早期発見・回避率が高くなるので
1年毎の交換をおすすめしています。
バックカメラの取り付け。
純正のナビモニターにバックカメラの映像をうつす・・・という今となっては珍しくもない作業で
AVインターフェースがあったような・・・という朧げな記憶と共に調べてみると生産中止らしく手に入らず・・・
i/k-bus接続時代の車なので、何とかなると信じながら
ナビからの映像ラインを引っ張り出して配線図とにらめっこしながら回路作成。
心配していたノイズも映像に入らずに無事にうつりました。もちろんバック連動です。
全ての作業を終えたらテストランを行って作業箇所やその他に不具合や違和感が無いか確認を行い、
作業内容を定期点検記録簿に記入しオーナーの元へ納車となりました。

2018年01月20日