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MAINTENANCE REPORT

【E36 M3B】足廻りフルブッシュ交換【150,000Km】

北海道からフルブッシュ交換の為、E36 M3Bが入庫しました。走行距離は約150,000Km。
雪が降る地域の路面は舗装道路でも、フラットなアスファルトではなく
深い轍やデコボコな悪路になってしまっている事も多く、
ブッシュの消耗速度などは雪の降らない地域に比べ早くなる傾向にあります。
今回はバック時にリア廻りから異音がするという事でお預かりし、
前回のブッシュ交換時期から6年経過している事もあり、
オーナーと相談した結果フルブッシュ交換と前後のハブベアリング交換を軸に作業を実施する事に決まりました。
先ずはフロントセクションのブッシュを交換していきましょう。外したフロントショックアブソーバー一式。
今回は前後のショックアブソーバーは減衰力に問題が無かった事もあり、そのまま使用します。
フロントスタビブッシュ・フロントスウィングサポートの状態を確認。フロントスタビブッシュ。
捻じれにより多くの負担が掛かる為、徐々に変形して画像の様に劣化が進みます。
フロントハブベアリングは交換していきます。
フロントコントロールアームも交換。外したフロントコントロールアーム。
ボールジョイントブーツの破れとボールジョイント自身の動きも安定性を欠いており
十分にその役割を果たしてくれたので、新品に交換しましょう。
ブーツ部が破れてしまうとグリスが飛び出てしまうだけでなく、
内部に異物が混入する事でボールジョイントに傷が入ったり、
グリス切れによる金属疲労でボールジョイントの動きが悪くなったり、逆に遊びが大きくなったりしますので
ブーツが切れているのを確認した際には、出来るだけ早めに対処した方が良いでしょう。
新旧のフロントコントロールアーム。
フロントロアアームコントロールブッシュの交換。
SSTを使用してコントロールアーム本体からブラケットごと取り外します。外したフロントロアアームコントロールブッシュ。
圧入されているブッシュのみを新品へ交換。
エンジンマウントの交換。新旧のエンジンマウント。
エンジン本体の重量と振動を常に受け止め軽減している為、徐々に劣化していく重要なブッシュのひとつですね。
交換時期は定期的な点検の中で見極めていった方が良いでしょう。
新しいエンジンマウントを装着して交換が完了。交換したロアコンブッシュをSSTでフロントコントロールアームへ圧入後、車体へ装着して交換が完了。スプリングコンプレッサーを使用してスプリングを縮めてからアッパーマウントなどを交換していきます。ストラットケースに付着した汚れや、スプリング受け部分に堆積した泥汚れなど
全て綺麗に洗浄し、新しいアッパーマウントなどを組み付けしていきましょう。
新旧のフロントアッパーマウント。
ハブベアリングの交換。外したハブベアリング。
ハブベアリングの交換時期を聞かれることがありますが、
目視で状態を確認するには外さなくてはならず、外してしまえば再使用が出来ないパーツでもありますので
10万kmを超えた車などは二度手間にならないようなタイミングで交換するのをおすすめしてはいます。
異音もしておらず正常だと思って乗っていた車でも、交換してみるとそのスムーズさに驚かされる事もしばしばです。
新旧のハブベアリング。
ハブベアリング、ダストキャップ、ナット、ハブキャップを全て新品に交換。
ハブベアリングのパーツも全て同時に交換する事が基本で再使用は不可。
トルクレンチを使用して規定のトルクで装着。290Nm。装着後はナットが緩まない様にツメを折り曲げておきます。ハブキャップを装着しフロントハブベアリングの交換が完了。新旧のフロントスタビブッシュ、フロントスウィングサポート。
フロントセクションはこれで完了ですね。リアセクションに移行していきます。
リアのハブベアリングを外すので、キャリパーローター共に取り外し。
SSTを使用し取り外しますが、まずはドライブシャフトを抜いていきます。
リアアクスルキャリアを降ろす準備。
マフラープロペラシャフトを外します。ドライブシャフトを外してブーツに亀裂やオイル漏れが無いか確認。
スプラインに出ていた錆は綺麗に落としてグリスアップを行います。センターベアリングは交換します。
ユニバーサルジョイントも交換。
プロペラシャフトはあとで作業します。リアハブベアリングを引き抜きます。車体から降ろしたリアアクスルキャリア。スチーム洗浄で綺麗にしてから各部に分解して点検・交換を行います。
洗浄は汚れを落すだけでなく、作業効率をUPさせて汚れで見えなかった問題箇所の発見もしやすくなるので
点検・作業の前に必ず行います。作業の前にアームの状態やブッシュの状態を確認。寒冷地で使用している場合、下廻りのパーツは融雪剤による錆の発生や
溶接部のクラックの発生などが出ていないかどうか良く確認しておきます。内・外筒部に大きな亀裂が入ってしまいブッシュとしての機能を果たしていない状態。リアアクスルキャリアのブッシュは各部同じような状態で大きく亀裂が入っていました。洗浄を終えたアッパーコントロールアーム・ロアコントロールアーム・トレーリングアーム一式。
全体的に亀裂や歪みが無いものの若干の錆の発生がみられます。リアアクスルキャリアのボルトはロックタイトを塗布し、車体に取り付けしておきます。アクスルブッシュを交換。SSTを使用してアクスルブッシュを交換。SSTで抜けない場合はプレス機を併用してブッシュを打ち抜きます。固着しているブッシュがほとんどなので抜くのも一苦労です・・・
新旧のリアアクスルブッシュ。トレーリングアームのブッシュ交換。
上下左右に負担の掛かる場所なので劣化の進行は比較的早くなります。SSTを使用してブッシュを外します。新旧のトレーリングアームブッシュ。トレーリングアームのボールジョイントを交換。新旧のトレーリングアームのボールジョイント。SSTを使用して交換。装着の際に異物の侵入や垂直に圧入しないと劣化が早まる為、慎重な作業が必要です。ナックル部のマウントブッシュの交換。新旧のナックル部のマウントブッシュ。装着部は綺麗にして異物の挟み込みに注意。SSTを使用して圧入。ロアコントロールアームブッシュの交換。プレス機で打ち抜きます。新旧のロアコントロールアームブッシュ。
取り外した逆の手順でブッシュを圧入し、ロアコントロールアームブッシュの交換が完了。アッパーコントロールアームのブッシュ交換。プレス機で打ち抜きます。新旧のアッパーコントロールアームのブッシュ。
慎重に圧入し、アッパーコントロールアームのブッシュの交換が完了。プロペラシャフトを分割してセンターベアリングを交換。スプライン部に錆が多く発生していたので、錆を落としてスプライン部にグリスアップ。新旧のセンターベアリング。センターベアリングの交換が完了。ユニバーサルジョイントの交換。
ユニバーサルジョイントの交換が完了。
エンジンの動力をプロペラシャフトへ伝える際の振動を抑えるパーツなので亀裂が入りやすく、
交換の頻度は高いパーツのひとつです。定期的な点検と交換を行って下さい。
残りのアクスルブッシュを交換ブッシュを抜き取りと圧入を繰り返し行います。新旧のアクスルブッシュ。リアアクスルキャリアのブッシュ交換が完了。デフマウントブッシュを交換する為、デファレンシャルオイルを排出。同時に内部のギアに問題が無いかも確認。デフカバーに付いているデフマウントをプレス機で打ち抜きます。新旧のデフマウント。
取り付ける前に綺麗に洗浄。新旧のデフカバーガスケット。
ガスケットは自身が潰れる事でパーツの密着性を高めているので一度使用した物は再使用不可。
デフカバーを装着する前に双方の接着面に残った汚れやガスケット等をオイルストーンで綺麗に削り落としておきます。
この作業をしっかり行わないとパーツの密着性が薄れてオイル漏れに繋がってしまうので要注意。
装着の際は液体ガスケットを併用してオイル漏れを防ぎます。新旧のスプリングパッド。
スプリングパッドはアッパー・ロア共に新品へ交換。
コイルスプリングは機能的に問題無いのでそのまま使用。
リアアクスルキャリアを元通りに組み立て直し、車体へ装着してリアアクスル廻りのブッシュ交換が完了。
装着時は車輌を降ろした際に新しいブッシュを馴染ませる為に一気にボルトナットを締める事はせずに
仮組みで留めておき、軽くテストランを行った後に規定のトルクで締め直します。リアのスタビブッシュ・スウィングサポートの交換。新旧のリアのスタビブッシュ・スウィングサポート。
リアスウィングサポートはASSY交換。
プロペラシャフトの装着時には必ず新しいガスケットへ交換します。新旧のリアハブベアリング一式。
ハブナットやスナップリングも新品へ交換。ハブベアリングの装着面に塵や埃が混入しない様に注意。SSTを使用してハブベアリングを装着。ハブベアリングの装着。アウトプットフランジを装着しハブベアリングの交換が完了。ミッションマウントの交換。新旧ミッションマウント。リアアッパーマウントの交換。
新旧のリアアッパーマウント。
リアアッパーマウントの中心部から亀裂が入り分解してしまうと
ショックアブソーバーを保持する事が出来なくなりリアからゴトゴトと異音を発生させ、
ボディ側のマウント装着部にも負担を掛ける事になるので、
異音等の症状が出る前に問題が無くても経年や走行距離を考慮して交換した方が良いでしょう。トルクレンチを使用し、規定のトルクでハブナットを装着。ナットの緩み止めのツメ折りを行ってリアハブベアリングの交換が完了。全ての作業を終えたら最後に4輪ホイールアライメント調整を行います。
調整は同じモデルでも経年やタイヤの摩耗、その他のパーツの消耗具合によりそれぞれ数値が違うので
メーカーの基本値を元に何度かのテストランを行いながらその車輌に適した数値を導き出していきます。
入庫された時はかなり不安定なフィーリングが気になりましたが、
作業後にはキビキビとしたM3本来の性能を体感出来る様になりました。

経年車や走行距離が10万Kmを超えた車などは、今回のようなブッシュ交換作業や
その他、手間のかかる作業が発生する事もありますが、その車本来の性能を十分に味わう為には
避けて通れない作業でもあります。そういった車を乗り続けたいと思っているオーナー様達の
お手伝いが出来ればと思いながら私たちも一台一台をしっかりとメンテナンスさせていただいております。

2018年01月29日