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MAINTENANCE REPORT

【E86 Z4 M Coupe】24ヶ月法定点検&車検整備【35,000Km】

本日のレポートは24ヶ月法定点検と車検整備の為、E86 Z4 M Coupeが入庫したので
ご紹介していきましょう。走行距離は35,000Km。
E86 Z4 M CoupeはZ3の後継・上位モデルとして2003年~2008年まで生産され、
2006年のマイナーチェンジ時にクーペモデルを追加し
搭載する3.2L 直列6気筒DOHCエンジンは343ps/37.2kgmを発生。
クーペモデルはロードスターモデルと比べて剛性が高く、スポーツモデル寄りな運転が楽しめるモデルですね。
因みにE85はロードスター、E86はクーペのモデルコードになります。

以前、当社でピロアッパーマウントを装着し、フルタップ式の車高調を組んでいますので
かなり乗り味はスポーツ寄りですが、ブレーキング時に若干振れることもあって
ロアコンブッシュを純正からウレタン製に変更していきます。
まずはミッションオイルの交換。
ギアオイル使用の為、粘度が高く冷間時では排出しにくい事もあり
必ず温めた状態で行い、内部で発生したスラッジと共に一気に排出。
出来るだけ古いオイルを内部に残さない様にしずくが垂れなくなるまで排出を行います。
排出を終えたら規定量のミッションオイルを注入してミッションオイルの交換作業が完了。
FUCHS 5SPEED 75W-90
デフオイルの交換。
スポーツモデルは、油脂系の交換は非常に大切で、常にハイプレッシャーに晒され酷使されている箇所も多く
しっかりと目視で現状のオイルの状態を確認し、交換時期を定めていく事がコンディション良く乗っていく上で
大事なポイントになりますね。排出を終えたら規定量のデフオイルを注入してデフオイルの交換が完了。
FUCHS HLS90 90w-140(LSD対応)
ロアコントロールアームブッシュ(ロアコンブッシュ)の交換。
アンダーカバーを外し、ロアコンブッシュの状態を確認し状態が酷い様であれば、異音や振動等で
その他のパーツにも悪影響を与えている可能性がある為、関連するパーツの確認も必要になります。
このブッシュが劣化してしまうと、直進性が失われてハンドリングが不安定になり、
ブレーキ時に振動がハンドルに伝わる様になります。
画像は右側なのですが、遮熱板で防いでいてもマフラーからの熱で劣化してしまうので
左側よりも右側の方のダメージが多い傾向ですね。
SSTを使用してロアアームからロアコンブッシュを引き抜きます。
劣化が酷いとクラックが入ったりガタが出てユルユルになっている状態の物もあるので
ハンドリングの挙動の変化には注意が必要でエンジンの重さやスポーツ走行時の挙動や制動等で
大きな負担が掛かる分劣化が早い傾向なので定期的に点検しておきたいパーツです。
取り外したロアコンブッシュ。
状態によりASSY交換やブッシュを打ち抜いてブッシュのみを交換するのですが、
今回は足廻りとの整合性を高める為に純正ではなく社外製のウレタンブッシュを圧入して使用します。
基本的に足廻りが純正であれば、純正のブッシュをおすすめしますが、
足廻りをそれなりにカッチリと固めていくと、純正のゴムの遊びが邪魔になって来るので
ウレタンブッシュのように遊びの少ないブッシュをチョイスする事で、更に安定性を向上させていきます。
プレス機で古いブッシュを打ち抜いて新しいブッシュを圧入。ウレタンブッシュの装着が完了。取り外した手順と逆の手順でロアコンブッシュを装着。ロアコンブッシュの装着が完了。
純正のブッシュと違い遊びが全く無いので、ホルダーを車体に固定するのに苦労しました・・・
4輪ホイールアライメント調整。
メーカーの基準値を元に、調整→テストラン→調整と繰り返しながら、
その車に最も適した数値を導き出していきます。
調整はタイヤの空気圧や摩耗状態、ブッシュのヘタリ等によっても変化してしまう為、
同モデルでもそれぞれに数値は違うので現状を把握して数値のみだけでなく
テストランを繰り返しながら調整する事が大切です。
また、今回のように極端に車高を落としている場合は、
その車高に合致したアライメント値に導き出すことが重要で、メーカー基準値はあくまで基準値でしかなく
車の特性と実際のコーナーリング時の挙動を計算しながら作業を進めていきます。
全ての作業を終えたら最終のテストランを行って修理箇所やその他に違和感等が無いか確認を行います。
ピロアッパー・フルタップ車高調・ウレタンブッシュの組み合わせによって
更にハンドリングにクイックさが加わり、ダイレクトな操作感で乗り心地を重視した柔らかさよりも
走りに寄せた固めの感じの尖った仕上がりになり、非常に面白い仕上がりになりました。テストランで特に問題が見つからなければ最寄りの陸運支局へ車を持ち込んで無事車検を取得。後日オーナーへ車検証、定期点検記録簿、車検ステッカー、定期点検ステッカー、
4輪ホイールアライメントデータをお渡しして納車となりました。

今回はE86 Z4 M Coupeのメンテナンスレポートだったのですが、
御紹介した作業内容は特にスポーツモデルには重要な工程で、ミッションオイル交換ではスラッジの排出を行って
内部システムの潤滑を効果的する事でスムーズで小気味良いシフトチェンジを可能にし、
デフオイル交換ではコーナーリングを素早く駆け抜ける爽快感を得られるだけでなく
デフに掛かる負荷を軽減させる効果もあるので性能を存分に発揮させ、
スポーツモデルを楽しむ為にも定期的に交換する事が大切です。
今回交換したウレタンブッシュはノーマルのブッシュより固めになり、乗り手を選ぶセッティングになったので
通常の走行をメインにしている方は乗り心地や操作感を考慮すると通常のブッシュで全く問題ありません。
特にスポーツモデルは乗り手によってセッティングの好みも様々に違うので、
ご自身が楽しむ為にはどの様なパーツが必要で、そのパーツを使用する事で得るメリットやデメリットも
考慮した上で購入・装着をする事が大切なのですが、それもまた車の楽しみ方のひとつですから、
ご自身に最も適したセッティングを模索してみるのも楽しいと思います。

2018年11月11日