【E91 320i Touring】ショックアブソーバー交換【100,000Km】
今回のメンテナンスレポートはE91 320i Touringのショックアブソーバー交換です。走行距離は100,000Km。
E90系の3シリーズとして第五世代のモデルになり、それまでの足廻りから
フロントはダブルピボットスプリングストラット、リアはインテグラルアームに変更され
随分乗り味に変化が出たな・・・とデビュー当時に感じたモデルでもあります。
正直、E46モデルまでのシングルジョイントに比べて、ちょっとクイックさが無いというか・・・
3シリーズらしい軽快さを失いゴージャスな乗り心地になったというか・・・
このあたりは乗り手の好みもあると思うので、何とも言えませんが・・・
足廻りの構造などの蘊蓄を文面にしても、伝わりづらいですし、検索すればいくらでも詳しい説明が
出て来ると思いますので、割愛しますが、やはり自分は3シリーズに関してはE46までの軽快さを感じられる
足廻り構造が好きだな・・・と当時感じたものです。
あくまで主観の話しでありますので、その点ご了承下さい。
初期モデルは登場から12年が経過しており、今回の車輌も走行距離が100,000kmとなれば、
様々な箇所の状態の変化には注意が必要です。
特に足廻りのパーツは乗り心地に変化をもたらすだけでなく、直進性や安定性、制動時の挙動の変化、異音の発生、
タイヤの偏摩耗等、生産から10年、50,000km以上走行している車輛は各パーツの経年・走行距離による
劣化にも注意が必要です。今回は足廻りの状態を確認しながら
ショックアブソーバーの交換をメインに作業を進めていきましょう。
まずはフロントセクションから作業を進めますが、パーツを外す前に各パーツの状態を確認。
今回はオーナーとの打ち合わせでアーム類の交換は無し。ショックとアッパーマウントの交換を進めていきます。
ブレーキシステムとショックアブソーバーを外します。
ショックアブソーバーを外し、通常の状態では確認しにくい箇所をチェック。
ここで異常が見つかれば、当然オーナーにお伝えし、交換すべきものは交換しますが
今回は異常無しでした。
取り外したフロントサスペンション。
各パーツに分解して交換を行い、フロントコイルスプリングは再利用するので洗浄しておきます。
スプリングコンプレッサーを使用して各パーツに分解。
取り外したアッパーマウント、コイルスプリング、フロントサスペンション。
コイルスプリングは特に状態に問題は無いので洗浄して再使用します。
新旧のフロントサスペンション一式、アッパーマウント、スプリングパッド(アッパー・ロア)。
ショックアブソーバーはBILSTEINのエグゼクティブツーリングをチョイス。
Mスポーツのゴツゴツとした突き上げ感を無くし、マイルドさをブレンドしたショックですね。
交換後のテストランが楽しみです。
取り外した逆の手順で各パーツを組込み車体へ戻します。
フロントセクションのショックアブソーバーの交換作業が完了。
装着時は前後共に本締めを行わずに仮止めの状態で軽めのテストランを行って
馴染ませた後で規定のトルクで本締めを行います。
引き続きリアセクションのショックアブソーバーの交換作業を行います。
新旧のリアアッパーマウント、スプリングパッド(アッパー・ロア)、バンプラバー
コイルスプリングは性能に問題が無い為、洗浄して再使用します。
新旧のリアアッパーマウント。
経年・走行距離による劣化は見られますが、大きな亀裂や破損等はありませんでした。
基本的に異常が無くてもショック交換では必ず交換がセオリーのパーツになります。
ゴム製のパーツは見た目に問題が無くても経年により油分が抜けて
材質が固くなって衝撃を吸収出来ずに破損してしまう事があるので
見た目だけの判断はせずに経年や状態の変化に注意して下さい。
新旧のスプリングパッド(アッパー・ロア)
酷いケースでは千切れてしまって効果を果たしてない状態の物もあり、関連するパーツに負担を与える為
状態に関わらず経年を考慮して交換が必要です。
新旧のバンプラバー
必ずセットで交換します。
リアショックアブソーバー、コイルスプリング等を装着。
ブレーキシステムを装着してリアのショックアブソーバーの交換が完了。
こちらも前輪側と同じく仮止めの状態でテストランを行って馴染ませてから既定のトルクで本締めを行います。
4輪ホイールアライメント調整を実施。
今回はショックアブソーバーを交換したので4輪ホイールアライメント調整が必要なのですが、
走行によるタイヤの摩耗やブッシュの消耗・縁石へぶつけたり、
乗り上げたり車高の調整時等、様々な要因でアライメントは変化してしまいます。
数値が変化してしまうと直進性が失われて走行中に左右に車が流れたり、タイヤが偏摩耗する等、
不安定な走行に繋がるばかりかタイヤにも負担を掛けてしまいます。
経年によっても徐々に変化してくる為、2年に1度のペースで調整を行う事で直進性やコーナーリングでの安定性、
タイヤの偏摩耗防止等に大変有効な作業なので、症状が出てしまう前に車検時等に行っておくと安心です。
ブッシュの状態やタイヤの空気圧、摩耗の状態だけでも調整の数値は変わってしまうので
同じ車種だからといって同様の数値でセッティングをしたり、
前回と同じ数値で調整を行っても適正な調整にはなりません。
必ず現在の状態を把握しながらセッティングを行う事が大切です。
メーカーの基準値を元に調整とテストランを繰り返し行いながら現状に最も適した数値を導き出していきます。
全ての作業を終えたらテストランを行って修理箇所やその他に違和感を感じないか最終チェックを行います。
Mスポーツの足廻りの独特の固さはお乗りになられている方であればご存知だと思いますが
今回、装着したショックは固すぎず柔らかすぎず、綺麗に足が動いてくれているのが分かり
かなり乗りやすい印象を受けました。
オーナーへ分解整備記録簿、4輪ホイールアライメントデータをお渡しして
今後のメンテナンス等を伝えて納車となりました。
今回はショックアブソーバーの交換を行ったのですが、日々使用していると車輌の状態の変化に気付きにくく、
ショックアブソーバーからオイルやガス漏れを起こした状態でも気付かずに走行しているケースもありますね。
もちろん走行中のちょっとした違和感には注意が必要なのですが、
何となく大丈夫だろうと根拠の無い安易な判断で見逃してしまうと
症状が悪化して更に被害が拡大してしまう事もありますので、
ちょっとした違和感を感じたら早急に掛かりつけの工場へ相談する事が大事になってきます。
常に安心して安定した走行を楽しむ為にも定期的な点検を行って、
経年や走行距離を考慮した整備を行う事が大切ですね。
2018年11月11日