【ALPINA B12 6.0】各部メンテナンス【90,000Km】
雪予報でしたが、朝起きると冷たそうな雨だったのでホッと一息。
開店後からチラホラと白いものが舞い降りてきていますが、積もる感じでは無いですね。
本日も通常営業になりますが、納車や入庫などちょっと予定が狂いそうです。
自然には抗えないので致し方ないと諦めモードの中ブログアップです。
今回のメンテンナンスレポートはALPINA B12 6.0の各部メンテナンスです。走行距離は90,000Km。
入庫時はフロント部から異音が発生している状態で、不安定なアイドリング、
エンジンチェックランプとABSチェックランプが点灯しているetc,,,
今回は問題の箇所だけでなく走行距離・経年による劣化などを考慮した総合的なメンテナンスを行っていきましょう。
ABSチェックランプ点灯。
ABSユニットやセンサー等に異常があると点灯しますね。
どこに原因があるか精査していきましょう。
エンジンチェックランプ点灯。
イグニッションをONにすると点灯し、エンジン始動後にランプが消灯すれば問題ありません。
エンジンチェックランプはエンジンに関する異常を感知するとイエローやレッドに点灯するのですが、
主にセンサー系の異常ではイエローに点灯する事が多く、
走行中に点灯したとしても直ぐにエンジンに支障がでる訳では無いので
慌てずに安全な箇所へ停車させて掛かりつけの主治医に相談して下さい。
レッドの点灯はエンジンに重大な異常が発生している事が多く、
走行は不可なので直ぐに停車させた方が良いでしょう。
どちらにしてもテスターから故障コードを拾い出す必要のある症状なので、
しっかりと検査し原因を探っていく必要がありますね。
アイドリングを行いながらテスターで各部の正常な数値が出ているかを確認したしていき
原因箇所などを特定していきます。もちろんテスターの数値だけでなく、直接目視可能な箇所であれば
分解点検し異常が無いか関連するパーツを一つ一つ点検していきます。
このモデルはメインバッテリーとサブバッテリーの2つを使用。サブのバッテリーは社外品に交換されていますね。
メインのバッテリー電圧が非常に低いので、今回交換します。
この時点でサブバッテリー電圧は基準値が出ており特に異常は見つかりませんでしたが、
最終的には交換が必要になりました。
スパークプラグを取り外して確認して見ると…
画像の様な状態でオイル・燃料かぶりやカーボンが多く付着している事から
ミスファイヤーを起こす等、正常に機能していなかった事が伺えます。こちらも交換です。
今回のABS点灯の原因はユニットでした。新品交換ではなく、
内部基盤修理で対応していきます。
ブレーキフルードはかなり汚れており交換が必要な状態だったのであとで交換を行います。
取り外したABSユニット。分解基板修理を行っていきます。
ユニットの修理中にフロント廻りからの異音を解消していきましょう。
フロントショックアブソーバー本体からの異音が酷かったので、ショックアブソーバーを交換。
フロント足廻りパーツを外して劣化や異常が無いか状態を確認しつつ取り外し。
取り外したナックル、ガードプレート、ロアアーム、コントロールアーム、ブレーキローター、スタビリンク等
アーム類は交換履歴があり問題は無さそうなので、ショックの他にスウィングサポートとスタビブッシュを交換。
取り外したフロントショックアブソーバー。
スプリングコンプレッサーを使用してショックアブソーバーを分解。
スプリングはそのまま再利用になります。
新旧のフロントショックアブソーバー。
ここまで消耗する前に交換しないと駄目ですね。
ショックアブソーバー本体から異音が出てしまっている状態で走り続けるのは、
正常箇所にも悪影響が出る可能性大になります。
新旧のサポートベアリング、アッパーマウント、バンプラバー、アッパー・ロアスプリングパッド。
ショックアブソーバーに新しいパーツを組込みます。
新旧のフロントスウィングサポート、フロントスタビブッシュ。
これでフロント廻りはある程度リフレッシュ出来ているはずです。
ユニバーサルジョイントやプロペラシャフトのセンターベアリングなどの交換の為、車体からマフラーを降ろします。
V12エンジンのエギゾーストも重量級ですね。
プロペラシャフトとトランスミッションを繋ぐユニバーサルジョイントに大きく
亀裂が入り、これでは正常な動力を伝える事は困難どころか、走行時に振動が発生する原因となります。
かなり症状が酷く、このまま劣化が進行し破損して大きな事故へ発展…と考えると何事も無くて良かったと思います。
ハイパワーなエンジンからの力を受け止めている為、劣化が進行すると一気に症状を悪化させてしまうので
点検の際は症状が悪化しやすい箇所には注意を払い、多少の変化も見逃さない事が大切です。
取り外したプロペラシャフト。
スプライン部のガタツキ等、各部にダメージが出てないか確認を行います。
センターベアリングも同時に交換します。
新旧のユニバーサルジョイント。
亀裂が入るだけでなく破損している箇所もあり非常に危険な状態でした。
ミッションやプロペラシャフト、デファレンシャル等にも悪影響を与える為、
各部への影響も考慮すると亀裂が入ってから交換するのでは無く、
経年劣化を見極めて多少早目に交換してしまった方が不安を抱える事もなくなるので
掛かりつけの主治医と相談して交換のタイミングを見誤らないように。
センターベアリングを交換する為、プロペラシャフトを分割するのですが、
その際も接続部のスプラインにガタつきや焼き付き、摩耗等が発生してないか確認を行います。
スプライン部は気になる焼き付きや摩耗もなく特に問題はありませんでした。
新旧のプロペラシャフトセンターベアリング。
劣化が進行するとセンターがズレてしまい、異音の発生やプロペラシャフト本体へダメージを与えるので
ユニバーサルジョイントと同様に消耗品として定期的な交換が必要です。
新しいセンターベアリングを装着しプロペラシャフトを組み立てます。
プロペラシャフトの接続部には新しいガスケットを装着・古いグリスは綺麗に拭き取り
新しいグリスを充填しておきます。
デファレンシャル側も同様にグリスを充填しておきます。
ユニバーサルジョイント脱着時に確認したところミッションマウントの消耗も酷かったので交換。
新しいミッションマウントを装着。
小さなパーツなのですが変速時の振動を軽減させる為、想像以上に走行が安定します。
ミッションマウントと同時にエンジンマウントも交換。
反対側のエンジンマウントも取り外します。
新旧のエンジンマウント。こちらもお疲れ様でした・・・といったところでしょうか。
パワステホースのオイル漏れが酷かったので関連するホースを一式交換。
使用するシールリングやホースバンド等も新品へ交換。
パワステと油圧を共有しているEDC(エレクトロニックダンパーコントロール)の
レベライザーホースにも所々滲みや漏れがあったので交換していきます。
レベライザーホースはタイヤハウス内に装着されている為、雨水や泥ハネ等の汚れの影響を受けやすく
各部の劣化には注意が必要です。
レベライザーホースだけでなく装着部付近もオイル漏れや噴き出した形跡が無いか確認。
経年劣化でホースが痩せてしまうとカシメ部分からオイルが噴き出す事があるので
状態や経年を考慮して交換しておくと安心です。
取り外したレベライザーホース一式。
各部に新しいレベライザーホースを装着。

各ホースを装着し、パワステフルードを交換
エア抜きを行い、最後にEDCのコーディングを行って交換作業が完了。
ABSユニットも修理完了したので、点火系修理を行っていきましょう。
取り外したディストリビューターローター。
点火系パーツはエンジンが動いている間は常に使用されており、電極等が消耗していくと不具合を発生させる為、
消耗品として定期的に交換が必要です。
取り外したディストリビューターキャップ・イグニッションケーブル。
ディストリビューターキャップ内部の電極はディストリビューターローターと接触する事で画像の様に消耗していき、
消耗が進んで接触不良を起こすとエンジンの吹けが悪くなったり、アイドリングが不安定になり、
燃費の低下やエンジン始動が困難になる等の症状を引き起こします。
経年劣化等でディストリビューターキャップにクラックが入ってしまうと
雨の日の走行や洗車時にディストリビューターキャップ内部に浸水する事でエンジンが不調になったり、
エンジンが始動しなくなる事があるので、エンジンの調子や状態の変化には注意が必要です。
今回は完全に焼けてしまっていますね。
12気筒エンジンなのでディストリビューターキャップ・イグニッションケーブルは2箇所の交換が必要です。
新しいイグニッションケーブル×2
新旧のディストリビューターキャップ・ディストリビューターローター。
新旧スパークプラグ。見た目から完全にアウトですね。
このエンジンのスパークプラグ交換は非常に時間がかかります・・・
冷却水の交換。
専用の機械を使用してフラッシング剤を注入し冷却ラインの錆や水垢等の汚れを浮かせて
古い冷却水と共に車外へ圧送。
冷却システムは定期的に点検や交換を行う事が大切なのですが、
走行距離や経年によるパーツの劣化等も同時にチェックし
交換の必要性がある場合は先延ばしせずに交換した方が良いでしょう。
特に熱量の発生が大きいエンジンを搭載しているモデルの
エンジンルーム内は想像以上の過酷な環境にさらされていますので樹脂製の部品などの消耗スピードは早く
走行中に突然クラックが入りオーバーヒートするなどの事が無いように私たちも細かくチェックを行っています。
ABSユニットを取り付けし、ブレーキフルードの交換とエア抜きを行います。
専用の機械を使用してブレーキラインの水垢や錆汚れ等を古いフルードと共に車外へ圧送させます。
ブレーキフルードの劣化はフルードの色を確認し無色透明から徐々に紅茶色へ変化して黒味を帯びて来るので
リザーブタンクのフルードの色をチェックして紅茶色へ変化していたら劣化が進行している為、
出来るだけ早目に交換して下さい。
オイル漏れなどで汚れてしまっていた下廻りをスチーム洗浄で綺麗に洗い流します。
アンダーパネルも同様に。
新旧のエアエレメント。
エンジンが稼働する為には燃料の他に空気が必要なのですが、
不純物を含んでしまうとエンジンにダメージを与えてしまう為、
空気をエンジンへ送り込む前に不純物を取り除く役割を担っているのがエアエレメントです。
空気中には様々な汚れが浮遊しているのですが、走行環境の違いによっても汚れ方に違いがあり、
渋滞地区の走行が多い方は排気ガスの影響で油分の汚れが多く、
自然が多い地区での走行では小さな木の葉や虫の死骸等が
通常よりも多く含まれる等、ご自身の走行環境により汚れ方や交換時期は様々に違う為注意が必要です。
メインバッテリーの交換。
オーディオシステムが組まれており、サブバッテリーを設置するのに純正のバッテリーラックを加工しているようです。
何気にアンプの電源ラインなども多いので整理しながら交換します。
いつ交換されたかは不明。
VARTA l1 110Ahを装着し、バッテリー交換は完了。
最後に4輪ホイールアライメント測定と調整を行います。
足廻りを脱着した際にはアライメントの数値が変わってしまう為、必ず再調整が必要になるのですが、
ブッシュの劣化やタイヤの摩耗によって少しずつ数値が変わってしまうので、
長い間調整していない方も再調整が必要になる作業ですね。
その他にも駐車の際に縁石に激しく当ててしまった方や激しく縁石を乗り越えてしまう等でも
数値が変わってしまう事があるので注意が必要です。
ステアリングを維持してないと左右どちらかに流れてしまって真直ぐに走行が出来無かったり、
ステアリングのセンター位置のズレやタイヤの偏摩耗等の症状が発生していれば
掛かりつけの主治医に相談し、何処に原因があるのかを判明させ最適な作業を進めて行きましょう。
テストランを繰り返しながらその車に最も適した数値を導き出していきます。
全ての作業を終えたら最終のテストラン。修理箇所やその他に問題等が無いか確認を行って
特に問題が見つからなければ後日オーナーへ分解整備記録簿、
4輪ホイールアライメントデータをお渡しして納車となります。
今回は各部メンテナンスとしてアイドリングの不調やABSユニットの修理、
フロントのショックアブソーバー・ブッシュ類交換、
パワステオイル漏れ修理、点火系パーツの交換等…と基本的な作業の他にも様々な修理・メンテナンスを行いました。
経年車の維持は難しい、直ぐに故障してしまう…と敬遠してしまう方が多いと思いますが、
ポイントを押さえしっかりとメンテナンスを行っていれば問題無く十分に楽しめます。
最新モデルと比較すればある程度の手間は掛かると思いますが、
ドライビングフィールやボディのデザイン等、今だからこそ新鮮に感じ楽しめるモデルも多いのではないでしょうか。
2020年01月18日