【E30 325i】24ヶ月法定点検&納車前整備【62,000Km】
2月半ばになりました。2月8月は暇だ・・・という事も無く
今年に入ってからも整備入庫車輛がコンスタントに入ってきており、忙しくさせてもらっております。
レストア各モデル5台・E30 320iエンジン・トランスミッションオーバーホール・
E30 M3ボディレストアなど長期作業もあり、日々楽しく仕事をさせてもらっています。
本日のメンテナンスレポートはE30 325iの24ヶ月法定点検と納車前整備です、走行距離は62,000Km。
こちらの新オーナーは20代前半の将来有望な若者でした。
今回は当社管理の車輌なので特に大掛かりな作業は必要無いのですが、
基本的な油脂の交換作業の他、長く安心して楽しんで頂く為のメンテナンスを行っていきましょう。
約30年が経過しているエンジンなのですが、大きな不具合もなく非常に良い状態をキープしています。
現状でも特に走行には問題はないのですが、納車後に不具合が発生する事がない様に定期交換部品の交換を行います。
水廻りの消耗品としてウォーターポンプを交換する為、
ホース類・冷却ファン・各種ベルト、カバー等を外していきます。
ウォーターポンプを取り外して確認すると、ウォータージャケットにも錆の大きな発生は無く内部も綺麗な状態です。
冷却水の管理がされてない車輌はウォータージャケット内部に錆が発生している事が多く、
冷却水に含まれた錆の影響でシールを傷めて冷却水漏れを発症したり、
錆がラジエターやヒーターコアを詰まらせてしまい故障の原因となったり、
錆が堆積して冷却水が上手く循環出来なくなる事でオーバーヒートを引き起こす為、錆の発生には注意が必要です。
装着面のガスケット跡等はオイルストーンを使用して綺麗に整えておきます。
新旧のウォーターポンプ、タイミングベルトテンショナー、タイミングベルト。
消耗品として経年や消耗状態により交換が必要なのですが、何らかの不具合で異音が発生していれば交換が必要で、
交換は単体で行わず必ず3点セットで交換する事が基本です。
当社の納車整備メニューとしては新オーナーに切り替わるリセット作業として必ず行う作業のひとつになります。
新旧のサーモスタット。
サーモスタットは冷却水の温度管理をしており、
エンジン始動時等で冷却水が冷えている時はエンジンのみを循環させ、
エンジンが暖まって冷却水が一定の温度になると冷却水をラジエターへ循環させて高温になった
冷却水の温度を下げてから、再びエンジンへ循環させる役割を担っています。
サーモスタットは経年劣化や錆等の影響で機能しなくなってしまうと、冷却水の温度管理が出来なくなり、
オーバークールやオーバーヒートを引き起こしエンジンに致命的なダメージを与える恐れがある為、
車検時等の冷却水を交換する際に点検しておくと安心です。
いつまでも水温が上がらなかったり、異常に温度が高くなる等の症状が出ていたら車の使用は避け、
掛かりつけの主治医に相談して下さいね。
新しいウォーターポンプを装着。
タイミングベルトテンショナー、タイミングベルトを装着。
新旧のファンベルト・パワステベルト・エアコンベルト。
こちらも消耗パーツとして経年や状態の変化により交換が必要で、こちらも3点セットで交換。
単体で交換してしまうと交換時期がそれぞれ変わってしまい、交換の度に掛かる作業時間や工賃等が必要になり、
メンテナンスコストを削減する為にもセットで交換する事が大切です。
新しいサーモスタットを装着。
タイミングベルトを交換したのでステッカーに交換した走行距離と日付を記載。
一般的に約40,000~50,000kmを目安に交換をお勧めしているのですが、
国産車では100,000km毎の交換を推奨している事も多く、交換時期を国産車と同様に考えている方は要注意です。
エンジンオイル交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し内部で発生したスラッジやカーボンの汚れを落します。
フラッシング剤は【wynn’s OIL SYSTEM CLEANER】を使用しており、汚れに素早く浸透して汚れを落すだけでなく、
洗浄時の摩擦を抑え、汚れの再付着防止効果で新しいオイルの再汚染を防ぐ効果が期待出来ます。
10~15分程アイドリングを行ってフラッシング剤をエンジン内部の手の届かない箇所まで浸透させて
汚れを落とした後に古いオイルと共に一気に排出を行います。
エンジン内部に古いオイルを残さない為にも排出には時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで行い、
同時に廃油に異常な汚れや金属片等が含まれて無いか確認しエンジン内部の状態を探ります。
新旧のオイルエレメント。
古いオイルの排出を終えたら新しいオイルエレメントを装着し、
規定量のエンジンオイルを注入してエンジンオイル交換が完了。
デフオイル交換。
デフオイルは主に内部のデファレンシャルギアの潤滑を行っているのですが、
交換を怠っているとギアが噛合う事で発生したスラッジがオイルに含まれる事で、
オイルシールやギアを傷付けてオイル漏れを発生させ、
最悪の場合ギアが欠けてしまう事がある為定期的な交換が必要です。
デフオイルは粘度が高く、冷えた状態では排出に時間が掛かるだけでなく
内部のスラッジを上手く排出する事が出来ない為、必ず暖めた状態で作業を行う事が大切です。
しずくが垂れなくなるまで排出を行い、規定量の新しいデフオイルを注入してデフオイル交換が完了。
パワステオイル交換。
画像の様になるまで使用したパワステオイルには多くのスラッジが含まれており、
このまま使用していけば各部にオイル漏れを発生させ、
ギアボックスやパワステポンプにもダメージを与えてしまう為、
交換を怠っている方やパワステオイル漏れに悩まされている方は交換時期を見直し、
パワステオイルの状態の変化に注意して下さい。
専用の機械を使用してパワステラインのフラッシングを行い、
ギアボックスやパワステポンプで発生したスラッジと共に古いオイルを車外へ圧送させます。
排出を終えたら規定量のパワステオイルを注入してパワステオイルの交換が完了。
パワステオイルの新油は画像の様に透明な赤色なのですが、
減った分を継ぎ足したり、排出して交換するだけの施工では内部のスラッジが上手く排出されず、
交換しても直ぐに汚れて透明度は薄れてしまう為、施工方法にも注意が必要です。
ご自身でも色の変化を見れば劣化の判断が可能なので
リザーバータンクのパワステオイルの状態を確認しておくと良いでしょう。
ブレーキフルード交換。
ブレーキは油圧を利用して作動させており、その役割を担っているのがブレーキフルードなのですが、
非常に吸湿性が高く劣化が進むと吸湿した水分が含まれる事でブレーキシステムに錆を誘発したり、
ブレーキが発する熱で含まれた水分が沸騰してしまうと、ブレーキラインに気泡が出来る事で油圧が伝わらなくなり、
ブレーキペダルを踏んでもスカスカとブレーキが利かなくなるベーパーロック現象を発生させる事がある為、
劣化した状態での走行は非常に危険です。
劣化は無色透明な状態から紅茶色へ変化し徐々に黒味を帯びてくる為、色の変化で確認する事が出来るので、
御自身でもブレーキフルードのリザーバータンクの色の状態を確認しておくと安心です。
基本的に車検時に交換していると思いますが、
ブレーキフルードは車を使用するしないに関わらず劣化は進行していく為、
走行距離が少ないからと交換を怠る事はNGです。
特に渋滞地区や山道、峠道を多く走行する方はブレーキに多くの負担が掛かる為、
通常よりも劣化が早まる傾向なので車検毎に交換というよりも状態の変化を見て交換を行って下さい。
専用の機械を使用してフラッシングを行い、
ブレーキラインで発生した錆や水垢等を古いブレーキフルードと共に車外へ圧送。
排出されたフルードに異常な汚れや錆等が含まれて無いか確認を行います。
異常が見つかれば原因を特定する為、ブレーキブースターやマスターシリンダー等も含めた
ブレーキシステム全体を取り外す等の大掛かりな作業が必要になる事があります。
新しいブレーキフルードを注入し、エア抜きを行ってブレーキフルードの交換が完了。
スパークプラグの交換。
マニホールドゲージでエアコンの高圧・低圧の数値を確認した所、若干冷媒不足だった為、漏れ確認をしたところ
漏れ箇所は見つかりませんでしたので、真空引きを行って冷媒を充填。
冷媒は多く充填しても性能が上がる訳では無いので数値を確認しながら適正値にセットします。
サーモメーターを吹き出し口にセットして適正値の温度になっているか計測を行い、
特に異常が無ければエアコンの作業が完了。
全ての作業を終えたら最終のテストランを実施し、修理箇所や気になる点、その他に問題は無いか確認。
特に問題が無ければ車検に備えて下廻りの汚れをスチーム洗浄で綺麗に洗い流し、
最寄りの陸運支局へ車輌を持ち込み車検を取得します。
車検証、定期点検記録簿、車検ステッカー、定期点検ステッカー等をオーナーへお渡し、
今後のメンテナンス等をお話しして納車となりました。
是非、これからの車人生を楽しんでいただきたいですね。
2020年02月16日