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MAINTENANCE REPORT

【E46 M3】フルブッシュ・クラッチ交換etc,,,【65,000Km】

6月になりました。5月は関西・中部・東北などへと足を運び、忙しい毎日を送らせてもらいました。
緊急事態宣言の影響で、高速も空いており走りやすかったですね。
作業も色々と進めております、BMWジャパンへの本国オーダーは止まっていましたが
ドイツ・ラトビア・アメリカ・イギリスなどの部品商から、部品は入ってきているので
今のところは思った以上に大きな影響もなかったですね。
ジャパンからの便もそろそろ稼働しそうな情報も入ってきていますので、
そろそろ通常通りの流れに戻ってくれるかなと期待しています。

さて、本日のメンテナンスレポートはE46 M3のフルブッシュ・クラッチ交換です。走行距離は65,000Km。
E46 M3は2000年~2006年まで生産されたモデルで、初期モデルなら20年最終モデルでも14年となる為、
当然ブッシュ類の経年劣化は避けられませんね。
走行距離が6万Km台でどの程度の消耗が進んでいるのか、
もちろんここまでの走り方や管理状況によってすべての車が当てはまるわけではないので
参考としてご覧になって下さい。
まずはリアアクスルキャリアを降ろす為、
先にプロペラシャフト・遮熱板、マフラー等の排気システムを車体から取り外します。パパっと降ろしていきます。
車体から降ろしたリアアクスルキャリア。
ちょっと錆多めでしょうか。
車体側、アクスルキャリアなどで見えなかった箇所に異常がないか等
下廻り各部を点検していきます。
リアアクスルキャリア、アッパーコントロールアーム、ロアアーム。
綺麗に洗浄をし錆の発生やクラック等がないか現状を確認し、それぞれに装着されているブッシュを交換。
各ブッシュの状態をチェックしていきます。
クラックの入ったアクスルブッシュ。
自己修復はしてくれませんので、こういった形でクラックが入っていくと
くり抜いたような形状でひび割れが進んでいき、最終的にはしっかりとアクスルキャリアを保持出来なくなってきます。
メインの4箇所ともこういった状態でした。
SSTを使用してそれぞれのブッシュを抜いていきます。錆の影響でブッシュが固着してしまうと取り外すのも大変です…全てのブッシュを取り外し、装着面の錆や汚れを取り除いておきます。新旧のリアアクスルブッシュ一式。デフマウントを装着。
ブッシュを装着の際は異物を噛み込んだり斜めに入らない様に慎重に作業を行う事が大切です。取り外した逆の手順でリアアクスルブッシュを圧入していきます。リアアクスルブッシュの交換が完了。トレーリングアームの各ブッシュが適切に可動していたのか現状を確認し、新しいブッシュへ交換。ナックル部のボールジョイントは見た目以上に消耗が進んでガタついてしまっているケースもある為、
定期的に点検を行い経年や走行距離を考慮したメンテナンスが必要です。SSTを使用してボールジョイントを取り外します。 ナックル部上下に付いているボールジョイントを取り外し、装着面に付着した汚れや錆等を取り除いておきます。
通常のE46モデルはナックル部のボールジョイントが下側のみマウントブッシュなのですが、
M3は上下共にボールジョイントが装着されています。トレーリングアームブッシュに付いているブラケットを外しブッシュを交換。経年劣化により若干亀裂は見られますが、特に問題はなく正常に機能していた様です。SSTを使用してトレーリングアームブッシュを取り外し新しいブッシュへ交換。
錆による固着が厳しいM3でした・・・
新旧のトレーリングアームブッシュ、ボールジョイント。
トレーリングアームブッシュは対策品へ形状が変更され耐久性も向上しています。
SSTでナックル部へ新しいボールジョイントを圧入。ナックル部のボールジョイントの交換が完了。SSTで新しいトレーリングアームブッシュを圧入。トレーリングアームブッシュの交換が完了。アッパーコントロールアームブッシュ、ロアコントロールアームブッシュの交換。偏心しすぎていたり破損等していないか現状を確認し、それぞれのブッシュを新しいブッシュへ交換。ロアコントロールアームブッシュ交換。
プレス機を使用してブッシュを打ち抜いて交換していきます。アッパーコントロールアームブッシュ交換。
こちらも同様にプレス機で打ち抜いて交換するのですが、安易に交換するのではなく、
装着の際は斜めに圧入しない様に慎重に作業を行う事が大切です。リアスウィングサポートとリアスタビブッシュの交換。新旧のリアスウィングサポートとリアスタビブッシュ。今回はオーナーからの意向でリジカラを装着。
シャフトボルトで固定しているブッシュとボディの間にリジカラを装着します。勘合性と防錆効果を高める為、リジカラに付属している専用のグリスを塗布してから固定。新しいブッシュ、リジカラの装着が完了。アクスルキャリアを車体へ取り付けしリアセクションは終了。
ミッションを降ろしていきましょう。シフト部分のブッシュなども交換していきます。インプットシャフトが固着していると取り外すだけでかなりの時間を取られるケースも多く、
非常に重いパーツなのでミッションジャッキを使用して状態を確認しながら慎重にミッションを降ろします。降ろしたミッションハウジング。
使用状態や経年による劣化や消耗等、各パーツの状態を確認。レリーズベアリング、インプットシャフトのスプライン部のグリスが切れて錆が発生してしまうと、
スムーズに可動する事が出来なくなり、異音を発生させてやがてレリーズベアリングが固着し
クラッチが切れなくなり走行不能になるだけでなく、クラッチシステムの破損にも繋がってしまう事がある為、
操作時の違和感や異音等が発生していたら被害が拡大する前に掛かりつけの主治医へ相談して下さい。クラッチを取り外していきます。取り外したクラッチカバー、クラッチディスク。
適切に可動していたのか各パーツの状態や摩耗を確認。フライホイールの摩耗や歪み等を確認。
渋滞地区を多く走行する等で半クラッチを多用する方やスポーツ走行をする方は、
発生する高熱の影響でフライホイールが歪んでしまったり、偏摩耗してしまう事がある為注意が必要です。取り外したレリーズベアリング、レリーズフォーク、スプリングホルダー。ボールピンは樹脂製で消耗品の為、摩耗するだけでなく経年により先端から折れてしまう事がある為、
摩耗が無く見た目に異常が無くても、クラッチ交換を行う際は同時に交換が必要です。新しいパーツへ交換する前にスチーム洗浄で綺麗に汚れを落しておきます。シフトパーツを取り外し、各パーツの状態を確認。
シフトアームブッシュは大きな破損は無いのですが、かなり劣化が進行しています。ブッシュベアリング。
見た目以上に劣化が進行している事がある為、他のパーツとセットで交換する事が大切です。シフトアームの球体に付いているカラーは摩耗していくと隙間が開いてガタつく原因になったり、
割れて破損してしまう事がある為、消耗品として交換が必要です。新旧のシフトアームブッシュ、ブッシュベアリング、カラー。
一式をセットで交換。新しいブッシュベアリングを装着。新しいシフトアームブッシュを装着。フライホイールはダイヤルゲージで歪み等を測定し、特に問題が見つからなければ軽く面研磨を行い、
表面を綺麗に整えておきます。スプライン部は丁寧に研磨を行って錆を除去。綺麗に錆を除去したら防錆や動きをスムーズにする為に適量のグリスを塗布。新旧のスプリングホルダー、ボールピン。
何らかの原因でスプリングホルダーが折れてしまったり、
経年劣化でボールピンが摩耗して破損してしまう事もある為、
見た目に問題が無かったとしてもクラッチのメンテナンスの際には必ず交換しておきたいパーツです。スプリングホルダー、ボールピンの装着が完了。
小さなパーツなのですが、異常が出るとギアチェンジが出来なくなってしまうので要注意。新旧のレリーズベアリング、クラッチディスク、クラッチカバー。
クラッチカバーを固定しているボルトは再使用せずに全て新品へ交換。新旧のクラッチディスク。
センター出しを行ってクラッチを装着。レリーズフォーク、レリーズベアリングを装着。
適切に可動するか可動チェックを実施。新旧のミッションマウント。
ゴム系のパーツは経年劣化で油分が抜けて弾力性が無くなる事で固くなり、やがて亀裂が入って破損してしまいます。
状態によっては見た目だけでは判断出来ないケースもあり、そのまま使用しても大丈夫?と思われがちなのですが、
こういった部品は同時に交換してしまうのが良いでしょう。
エンジンマウントも交換します。新旧のエンジンマウント。
重いエンジンを支えているパーツなので新しい方と比較すると潰れてしまっているのが判ります。
エンジンの振動も軽減させている為、劣化が進行してしまうと振動が大きくなったり、
異音の発生、更にエンジンが固定されない事で不安定な走行になってしまうだけでなく、
その他の各パーツへも被害を拡大させる恐れがある為、挙動の変化には注意が必要です。プロペラシャフトセンターベアリングの交換。新旧のセンターベアリング。
異常が出ると振動や異音を発生させる為、走行中に下廻りからゴトゴトと異音が出ていたら要注意。
ゴム系の劣化は一気に進行し突然破損しまう事もある為経年を考慮して交換を行い、
異常があれば早急に対応する事が大切です。センターベアリングの交換が完了。
スプライン部の錆を除去し、グリスを塗布しておきます。新旧のユニバーサルジョイント。
プロペラシャフトを車体へ戻す際は必ず新しいガスケットを使用します。新しいガスケット、適量のグリスを充填しプロペラシャフトを装着。センターベアリングを車体へ装着。
プロペラシャフトのジョイント部も経年による劣化や錆の発生等でガタついている事がある為要注意。トランスミッションを車体へ戻し、作業は完了。
ここからはフロントセクションの作業へ入ります。
新旧のフロントスタビリンク、スタビブッシュ。
特にスポーツ走行をする方はスタビリンクの負担が大きくなる為、ブーツ部が破損して内部のグリスが出てしまうと、
異音の発生だけでなく、他の足廻りパーツに大きく負担が掛かる為、定期的な点検・交換が必要です。ロアコントロールアームブッシュ(ロアコンブッシュ)の交換。
E46で使用されているブッシュの中でも一番交換頻度が高いパーツになり、
劣化が進行すると直進性が失われ足廻りがふらつく等で安定しなかったり、
ブレーキ操作時にガクンと左右どちらかに振られたりする為、
この様な症状等が出ていたら早目の交換が必要です。SSTを使用してロアアームからロアコンブッシュを抜き取ります。今回はオーナーの意向で強化ブッシュを装着。プレス機で古いブッシュを打ち抜いた後に強化ブッシュを固定する専用のアルミ製パーツを圧入。ブラケットにアルミパーツを装着し強化ブッシュを圧入。コントロールアーム側にはブッシュ装着。SSTを使用して斜めにならない様にアームに対して垂直に装着。
入らないからと無理矢理に装着してしまうと破損の原因になり、
斜めに装着してしまうと折角交換したのに短期間で破損してしまう為、
慎重に装着する事が大切です。
全ての作業を終えたら4輪ホイールアライメント調整を行うのですが、
その前に各ブッシュや足廻りパーツはリフトに乗せた状態で装着を行っている為、
全て仮止めの状態なのでタイヤを接地させて軽くテストランを実施し、
各ブッシュを馴染ませた後に本締めを行います。
4輪ホイールアライメント調整はメーカーの基準値を
元に何度かのテストランを行ってその車に最適な数値を導き出していきます。
パーツを新しく交換したとしてもアライメント調整が適切でなければ本来の走行が出来ないばかりか、
不安定な走行になってしまう為、非常に重要な工程で的確な判断が必要です。調整は各パーツの走行距離・経年やタイヤの摩耗・空気圧の違いだけでも数値が変化してしまう為、
同じモデルだとしてもそれぞれに数値は異なり、
同じ車輌であったとしても以前計測した数値と同じ数値になる事はありません。
計測時の車輌の状態に最も適した数値を導き出して調整を行う事が大切になる為、
4輪ホイールアライメント調整は、各車種の特性を熟知した経験豊富な工場で行うと良いでしょう。
現状で走行時に不安定さを感じたり、左右どちらかに車が流れてしまう、
ステアリングのセンターがずれている、タイヤの偏摩耗等の症状が出ていたり、
タイヤを段差に激しくぶつけた・乗り越えた又は長年調整を行った記憶がない方は、
アライメントの数値が変わってしまっている可能性が高い為、掛かりつけの工場へ相談して下さい。
全ての作業を終えたら最終のテストランを行って、修理箇所やその他に違和感等がないかチェックを行います。
リフレッシュした事でM3本来の走行を取り戻しただけでなく、
オーナーの意向に沿った仕上がりで、経年を感じさせない完成度の高い走行を体感する事が出来ました。オーナーへ分解整備記録簿、4輪ホイールアライメントデータ等をお渡しし、
今後のメンテナンス等をお話しして納車となりました。

今回はE46 M3のフルブッシュ・クラッチ交換を行いました。
ショックアブソーバーの交換時期でもありましたが、ショックアブソーバーをどういったタイプにするか
をお考えになりたいとの事だったので、今回は無しです。
しばらく走り込んでみて最適なタイプのアブソーバーをチョイスしてみて下さい。
またのご来店お待ちしております。

2020年06月01日