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MAINTENANCE REPORT

【E30 320i】24ヶ月法定点検&車検整備【120,000Km】

今回はE30 320iが24ヶ月法定点検と車検整備の為入庫しました。走行距離は120,000Km。
E30は3シリーズの2世代目として登場し、今回入庫した320iは1987年~1991年まで生産された2ドアモデルで、
経年も約30年と各部の状態が気になる所ですが、
現役で走行している車輌はオーナーによる整備がしっかりとされている事が多く、
経年車とはいえ大きなトラブルを抱えての入庫は少なくなっている印象です。
今回は基本的な油脂系の交換の他、各部の点検等を行っていきましょう。各部点検を行っていた所、フロントタイヤにガタつきが出ていた為、
タイロッド、タイロッドエンドを外して状態を確認。ステアリングラックブーツを外してボールジョイントの状態や消耗を確認。
タイロッド、タイロッドエンドはボールジョイントで可動しており
ジョイント部にはグリスが充填されているのですが、
経年によりステアリングラックブーツが破損して異物が混入したり、経年でグリス切れを起こしてしまうと、
ボールジョイントが錆びたり摩耗してしまう事でガタつきを発生させ、
症状が悪化してしまうとボールジョイントが外れてステアリングの操作が不能になり、
大きな事故へ発展する恐れがある為注意が必要です。新旧のタイロッドパーツ一式。
ステアリングラックブーツを固定するブーツバンドや
ステアリングロックプレートは再使用せずに必ず新品へ交換します。
再使用されている車・・・正直良く見ます・・・
新しいタイロッドを装着し、サイドスリップ調整を行って交換作業が完了。
基本的に左右対称にあるパーツでは、片側のみに何らかのトラブルが発生していたとしても片側のみの交換は行わず、
必ず左右同時に交換を行う事が大切ですね。若干の消耗度合の差はあるとしても、
片側だけというのはナンセンスです。
エンジンマウントを確認するとお饅頭のように潰れているので交換しましょう。
重いエンジンを支えるだけでなく振動を吸収し軽減させているパーツなので、
劣化が進むと変形するだけでなくゴムの油分が抜けて固くなる事で徐々にヒビが入り、
何らかの衝撃で一気に破損してしまう事がある為、定期点検時には必ずチェックですね。
新旧のエンジンマウント。
左右セットで交換。
弾力性が無くなっている為、本来の性能は期待出来ません。
新しいエンジンマウントを装着し交換が完了。
新旧のミッションマウント。
比較して見てもエンジンマウントの様に大きく潰れていませんが、
こちらは横の力による捻じれの消耗を見ていき、交換の判断としています。
酷いものは真横に断裂している事も。
新旧のマフラーハンガー。
マフラーを吊って支える事で振動を吸収しているパーツなのですね。
E30モデルまでは定番消耗部品でしょうか。
ブレーキフルードの交換。
ブレーキフルードは新油の状態では無色透明なのですが、吸湿性が高く劣化が進行すると、
紅茶色へ変化し徐々に黒味を帯びてきます。
多くの水分を含んでしまうと錆を誘発し、
錆がブレーキのピストンを固着させてブレーキの引き摺りや片利き等を発生させ、
ブレーキの熱で含まれた水分が沸騰してしまうとブレーキラインに気泡を作り出して油圧が伝わらなくなり、
ブレーキペダルを踏んでもスカスカとブレーキが利かなくなる、ベーパーロック現象を発生させる為非常に危険です。
油脂関連は出来るだけ長く持たせるのではなく、ある程度劣化を見越して状態が酷くなる前に交換する事が大切です。専用の機械を使用しブレーキラインで発生した水垢や錆等の汚れを古いフルードと共に車外へ圧送させます。
排出されたフルードに異常な錆や汚れが無いか確認しておく事が大切で、もし異常が見つかれば原因を突き止める為、
ブレーキシステム全体を取り外す等の大掛かりな作業が必要になります。適量の新油を注入しエア抜きを行ってブレーキフルードの交換が完了。
交換時期は車の走行環境や使用状況によっても様々違ってくる為、
フルードの劣化具合を判断して交換する事が大切です。
ご自身でもリザーブタンクの蓋を開ければ確認が可能なので定期的に状態を確認しておくと良いでしょう。冷却水の交換。
フラッシング剤を注入し、専用の機械で冷却経路の錆や水垢等を浮かせて古い冷却水と共に一気に車外へ圧送させます。
特に経年車は水廻りのトラブルが多く、悩まされている方が多いと思いますが、
年に1回この様な作業を行って水廻りのメンテナンスを行う事で飛躍的にトラブルを軽減する事が出来るので、
新旧モデルを問わず水廻りのトラブルに悩まされている方にはお勧めのメニューです。
排出を終えたら規定量の冷却水を注入しエア抜きを行って交換作業が完了。
新旧のスパークプラグ。
電極の焼け具合や消耗度を確認し交換を行うのですが、単品では行わずに必ずセットで交換を行います。
一昔前はスパークプラグの焼け具合を見る為に簡単に取り外せる車輌が多かったのですが、
最近のモデルによっては直噴になっていたりすると事前に取り外すパーツも多く、
簡単に状態を確認する事が出来ないばかり事も多いですね。
新旧のエアエレメント。
エンジンは燃料の他に空気を取り入れ、混合気としてエンジン内部で爆発させて動力を得ているのですが、
空気を取り入れる際に空気中に含まれた塵や砂埃、
昆虫等の不純物がエンジン内部へ混入してしまうと不具合を発生させる為、
不純物を除去しているのがエアエレメントです。
汚れが溜まり目詰まりを起こすとパワーダウンや燃費の低下、
経年劣化でエレメントが破損してエンジン内部へ入ってしまうと、
エンジンを破損させる事にもなりかねない為、定期的に状態を確認し交換が必要です。
新しいエアエレメントを装着し交換が完了。
交換の際は単に交換を行うのではなく、事前にエアエレメントケース内の砂埃等の汚れを除去しておく事が大切です。
湿式等の車外品等を使用している方は、思っている以上に汚れていたり
経年劣化が進行してトラブルに発展するケースがある為、
定期的に点検を行って早目のメンテナンスを心掛けて下さい。車検に備えてスチーム洗浄で下廻りに付着した砂埃やオイル汚れ等を綺麗に落としておきます。全ての作業を終えたら修理箇所やその他に異常が無いか最終のテストランを行います。
直列6気筒が奏でるエンジン音が心地良く、
不安定だったハンドリングも安定し、軽やかにコーナーを駆け抜け、
グングンと加速する爽快感に30年の経年を感じさせない運転する楽しさを実感する仕上がりとなりました。後日、オーナーへ車検証、定期点検記録簿、車検ステッカー、定期点検ステッカー等をお渡し、
今後のメンテナンス等を伝えて納車となりました。

今回は基本的な定期点検の他に経年劣化によるメンテナンスを行いました。
古いモデルは消耗品だけでなく、経年で劣化してしまうパーツにも注意が必要で、
経年を重ねていく事により、一箇所に不具合が出ていたとしても想定した以上に被害を拡大してしまう事が多い為、
定期点検の際には各パーツの劣化具合を確認し、
劣化が気になるパーツは多少早い段階でも交換してしまった方が安心です。
特に経年車のオーナーは、急なトラブルを事前に防ぎ、メンテナンスコストを削減させる為にも、
掛かりつけの工場と相談しながら優先順位をつけて少しずつメンテナンスを行っておくと良いでしょう。

2020年09月16日