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MAINTENANCE REPORT

【ALPINA D3 Bi-Turbo】フルブッシュ交換【50,000Km】

9月です。暑さも一段落でしょうか。
入庫予定はビッシリです。一段落しませんね。有り難い事です。
平日は出たり入ったりとデスクに向き合う時間もありませんが、本日はへばりつきます。

今回のメンテナンスレポートはALPINA D3 Bi-Turboのフルブッシュ交換です。走行距離は50,000Km。
突き上げ感が強くなってきた事もあり、今回はショックアブソーバーを含め交換していきます。
当社としてもF系3シリーズのフルブッシュ交換は初めてだったような。
歴代モデルと変更されているところも多いので、確認しながら進めて行きましょう。
今回交換する足廻り部品やブッシュ一式。
車体からリアアクスルキャリアを降ろす為、先にマフラーを外しておきます。マフラーを外したら次にプロペラシャフトを外します。ユニバーサルジョイントが2箇所ですね。
各部の現状を確認しながらリアアクスルキャリアを車体から降ろします。各ブッシュが適切に可動しているか、余計な負荷が掛かる等で潰れたりやヒビ割れ等の異常が出てないか状態を確認。見落としがない様に慎重に各部を点検・分解していきます。アーム類は大きな負荷による歪みや亀裂等の発生が無いか確認。基本的に作業の流れは変わりませんが、各部品のサイズが大きいですね。
E39モデルのようなボリューム感。
パーツを取り外す際は単に取り外すのではなく、錆の発生や各部の状態の変化を見逃さず作業をする事が大切です。ケーブル類等の劣化も要注意。各パーツを取り外し、洗浄を終えたリアアクスルキャリア。
汚れた状態のままではクラック等の微細な異常には気付き難いだけでなく、
ブッシュ類の交換を行う際にも砂埃等が混入するとブッシュの効果を妨げて劣化を早めてしまう恐れがある為、
作業前にしっかりと泥や砂埃を落としておく事は作業を行う上で非常に重要です。リアアクスルキャリアブッシュの交換の前に現状では問題無く機能していたのか、
クラックの発生の有無等、状態の変化を確認しておきます。SSTを使用してリアアクスルキャリアからブッシュを抜き取ります。新旧のリアアクスルキャリアブッシュ。
特に大きな異常は見られませんでしたが、劣化は確実に進行しており、
異常が出てから交換するより経年を考慮して交換をしておいた方が、
パフォーマンスを維持するだけでなく、異常による故障のリスクを軽減させる事に繋がる為、
掛かりつけの主治医と相談しながら管理をしておくと安心ですね。アクスルキャリアに直接圧入されているデフマウント。
なかなか強敵でした・・・
リアナックルのボールジョイント。リアナックルからボールジョイント、マウントブッシュを取り外して交換。新旧のボールジョイント、マウントブッシュ。
リア廻りの動きに対して重要なパーツの為、劣化や破損には要注意。左右共に新しいパーツを圧入して交換が完了。新旧のキャンバーアーム。
ブッシュ単体でのデリバリーは無し。
新旧のトラッキングアーム、コントロールアーム、ガイドアーム、トレーリングアーム。
各アーム類を新品へ交換。新旧のスタビブッシュ、スタビリンク。各パーツをリアアクスルキャリアに装着していきます。新旧のスプリングパッド(アッパー・ロア)
コイルスプリングは状態を確認し、問題が無ければそのまま使用します。コイルスプリング、スプリングパッドを装着。新旧のリアアッパーマウント、アッパーマウントガスケット、リアショックアブソーバー一式。
残念ながらアルピナ専用シャーシキットの設定はこのモデルでは存在しません・・・
リアアクスルキャリアを車体へ戻したら、
同時にショックアブソーバーを仮止めで装着し、リアセクションの作業が完了。ドライブシャフトのセンターベアリングを取り外して交換。
現状のユニバーサルジョイントに経年によるクラック等の異常が出てないか確認。プレス機でドライブシャフトから古いセンターベアリングを抜き取ります。新旧のセンターベアリング、ユニバーサルジョイント。
新しいセンターベアリングを装着。
リア側の作業を終えたらフロントセクションの作業に入ります。
作業を行う前に異常等がないか各部の現状をチェック。各アームの状態やブッシュ、ステアリングラックブーツ等に異常が無いか確認。
取り外したショックアブソーバー一式。
状態を確認しながら各パーツに分解して交換。スプリングコンプレッサーを使用してショックアブソーバーからコイルスプリングを取り外します。ロア側のスプリングパッド。
走行中に巻き込んだ砂埃や砂利が付着し、スプリングが噛み込む事でダメージを与えたり劣化を進行させる為、
自身の走行環境や走行方法等を考慮しながらメンテナンスを行う事が大切です。新旧のショックアブソーバー。
新旧のフロントアッパーマウント、バンプラバー、スプリングパッド(アッパー・ロア)。
ショックアブソーバーを交換する際は一式セットで交換して下さい。新しいショックアブソーバーへ新しいパーツを装着。完成したショックアブソーバーを車体へ戻します。左右のプルストラットアームのブッシュを打ち抜いて交換。古いブッシュをプレス機で打ち抜いて新しいブッシュを圧入。新旧のコントロールアーム。
こちらはASSY交換。新旧のフロントスタビリンク。
ASSY交換。各アームを車体へ装着しフロントセクションの作業が完了。
足廻りパーツは仮止めの状態にしてテストランを行って各部交換パーツをしっかりと馴染ませてから本締めを行います。足廻りの作業を終えたら最後に4輪ホイールアライメント調整を行います。
4輪ホイールアライメント調整は真直ぐに安定した走行をする為に必要なのですが、
足廻りパーツの脱着やパーツの経年劣化、タイヤの摩耗、
縁石を激しく乗り越えたりする等で数値が変わってしまう為、
長期に調整を行っていないケースでは再調整が必要です。
症状として真直ぐに走行しているのにステアリングが斜めの状態になっていたり、
ステアリングを離すと左右どちらかに車が流れてしまう、タイヤが偏摩耗している等、
心当たりがある方は早急に再調整を行って下さい。
数値はタイヤやパーツの経年劣化の進行具合によって様々に変化する為、
同じ車種だとしても同じ数値にはなりません。
その為、メーカーの基準値を元に何度もテストランを行いながらその車に最も適した数値を導き出していきます。全ての作業を終えたら最終のテストランを行って修理箇所やその他に異常や違和感が無いかの確認を行い、
特に問題が無ければ全ての作業が完了となります。
後日オーナーへ分解整備記録簿、4輪ホイールアライメントデータをお渡しして納車となります。

今回はALPINA D3 Bi-Turboのフルブッシュ交換を行ったのですが、
現状ではどのブッシュも大きく破損した状態もなく不具合等も出ておらず、
まだまだ使える状態なのでは?と思われた方も多いと思います。
ですが、オーナーが求めるフィーリングに合致しているかと言えばそうではありませんでした。
もちろん、これから乗り続けていく期間も考慮しつつ、打ち合わせさせていただき
フルブッシュ交換が妥当だと双方が納得し、今回の作業となりました。
今回のような足廻り施工後の変化をご存知の方は、納得のいく作業かと思います。

2020年09月16日