【ALPINA E21 C1 2.3】パワステポンプ・ギアボックスオーバーホール・エンジンオイル漏れ修理【54,000Km】
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今回のメンテナンスレポートはALPINA E21 C1 2.3のパワステオイルとエンジンオイル漏れ修理です。
当社でレストア作業を行ってから丸6年を迎えますね。
そこまで距離は伸びてはいませんが、時間の流れと共にポツポツと不具合箇所が現れてきたので
手を入れていきましょう。
リフトアップして下廻りを確認すると、ステアリングギアボックス・ポンプ廻りに若干のオイル溜まりを発見。
パワステ機構のオイル漏れ放置は内部のラック・ピニオンやポンプローターなどが傷付いたり
摩耗してしまうと交換が必要になるケースもあり、ASSYでのデリバリーがされていれば別ですが
すでに廃番になっているモデルもありますので、早めに手を打った方が良いでしょう。
通常オイル漏れが発生すると、走行中に塵や埃等が漏れたオイルに付着してオイル漏れ箇所等が汚れてくるのですが、
オイル溜まり付近には汚れが付着していない所から推測すると、最近になって漏れてきた事が推測できます。
ステアリングラックブーツをめくってみると…本来であれば出て来ないはずの
パワステオイルがダラダラと流れ出て来ました。
ステアリングギアボックスから漏れたパワステオイルがステアリングラックブーツ内へ溜まり、
ブーツ部分から少しずつ浸み出ている状態と思われます。
これはギアボックスを取り外し、各シールの交換が必要な状態です。
ポンプにもオイル漏れがある為、こちらも分解してオーバーホールしていきましょう。
現状を確認しながらポンプとギアボックスを取り外していきます。
取り外したパワステポンプ。
これから分解しオイルシール等の消耗品を交換。
汚れを落して綺麗な状態にし、各部の状態を確認しながら作業を進めて行きます。
取り外した内部パーツに異常等がないか状態を確認。
取り外したスプリングなど飛んで行かないように注意しながら進めて行きます。
様々な箇所にOリングが使用されている為、分解の際は交換漏れがない様に各部をチェックしながら、
慎重な作業が必要です。
1点1点分解する手順を確認しながら作業を進めます。
本体から取り外せるパーツは全て外して状態を確認。
更に分解を進めます。
パワステポンプ内部へアクセスし、更に外していきます。
Oリングは経年劣化で弾力性が失われて固くなると潰れてオイル漏れを発生させる為、経年を考慮して交換が必要です。
作業の取りこぼしなど無いようにセクション毎に撮影していきます。



全てのパーツを取り外して各部の状態を確認し洗浄を行います。
パワステポンプのシャフトシール交換。
古いシャフトシールを外します。
古いシャフトシールを外し、装着面に残った塵や埃、オイル汚れ等を綺麗に落としておきます。
汚れたままの状態でシャフトシールを装着してしまうと、汚れの影響で密着度が薄れて再びオイル漏れを発生させたり、
無理に斜めに圧入してしまうと短期間でオイル漏れを発生させる為、装着の際は注意が必要です。
斜めに入らない様に慎重に装着し、パワステポンプのシャフトシール交換が完了。
新旧のパワステポンプのOリング。
ゴム系のパーツは経年劣化してしまう為、経年を考慮して交換が必要です。
新しいOリングを装着。
外した手順と逆の手順でパワステポンプを組み立てていきます。
パワステポンプのオーバーホールが完了。
パワステオイルポンプを装着。
リフトアップをした際はパワステベルトの劣化やポンプ異音など発生していないか確認しておきましょう。
古いモデルはASSYでのデリバリーが少なくなってきている為、現状のパーツを良い状態で維持していく為にも、
日頃からのメンテナンスが重要ですね。
部品の入手といえば最近、E30モデルのカムカバーガスケットやE46 B3のインテークマニフォールドガスケットなど
が廃番になったそうです。B3は再生産のリクエストが多そうなので復活するような気もしますが
どうなっていくのでしょうか。
取り外したステアリングギアボックスを分解する前に、付着したオイルや汚れ等を綺麗に洗浄。
洗浄しておく事は、綺麗にしておく事で作業時の汚れを気にしなくて済むだけでなく、
汚れ等で見えなかった異常に気付く事が出来たりもしますからね。
洗浄を終えたら異常が無いか各部の状態をチェックし、オーバーホール作業へ入ります。
オーバーホール作業を行う前に、作業工程が多くなる際は必ず部品の装着位置・作業手順等を確認する為、
各部の撮影を行っておきます。
ステアリングシャフトに繋がるドライブピニオンの摩耗具合を確認。
リングの位置を確認。
逆側のリング位置も確認。
撮影して記録を残しておく事で装着ミスなどを防ぎます。
洗浄で落としきれなかった汚れ等は丁寧に軽く研磨して除去しておきます。
ステアリングラックのハウジングを外して内部の状態を確認。
Cリングの状態や位置を確認。


この箇所のOリングは経年劣化により弾力性が無くなって潰れた状態になっており、
この状態ではOリングとしての効果はありません。
樹脂部品は経年劣化で割れてしまう等のトラブルが発生する事がある為、状態の変化には注意が必要です。

ハウジングからステアリングラックを取り外します。
取り外したステアリングラック。
洗浄をして付着している汚れを綺麗に落とし、腐食痕などが無いかを入念にチェック。
ステアリングコラムに繋がるドライブピニオン側のギアボックスを取り外します。
損傷や腐食等の異常がないかハウジング内部の状態を確認。
取り外したドライブピニオン本体を分解して内部の状態を確認。
ピニオン部や内部パーツに摩耗等が発生してないか確認していきます。。
ピニオン本来をケースから取り出して状態を確認し、内部で使用されているOリングを交換。
取り出したピニオン
大きな摩耗、腐食痕も見当たらないのでまだ使用出来るでしょう。
分解したパワステステアリングギアボックス一式。
洗浄を行ってオイルシールやOリングを交換していきます。
交換するオイルシールやOリング一式。
傷が付くと一気にオイルが漏れ出て来るので装着は集中しながら。


ピニオン本体のOリングを交換。
オイルシールやOリングを装着する際にゴミや埃等が挟まってしまうとオイル漏れの原因になってしまう為、
装着部を綺麗な状態にしてから装着する事が大切です。
ピニオン本体のOリングの装着が完了。
新旧のピニオンケースのオイルシール・Oリング。
オイルシール・Oリングの装着が完了。
特にオイルシールは斜めに圧入してしまうと破損してしまったり、
短期間でオイル漏れを発生させる為、慎重な作業が必要です。
ラックやピニオンに適量のグリスを補充し、オイルシールやOリングを交換したパーツを
取り外した逆の手順で組み立てていきます。
新旧のピニオンケースのオイルシール。
装着面を綺麗にしてから斜めに入らない様に慎重に圧入してオイルシールの交換が完了。
新旧のテンショナー部のOリング。
パイプラインのOリングも全て新品へ交換し、ステアリングギアボックスのオーバーホールが完了。
ステアリングギアボックスへタイロッドエンドを装着し、車体へ組込みます。
パイプラインやステアリングラックブーツ等を装着して
パワステポンプ・ステアリングギアボックスのオーバーホールが完了。
新しいパワステオイルを規定量注入し、ステアリング操作を行ってオイル漏れがないか状態を確認し、
パワステオイル漏れ修理が完了。
バックランプが点灯しないとの事でバックランプスイッチを確認する為にマフラーを降ろします。
マフラーを降ろし、バックランプスイッチを取り外して状態を確認。
新旧のバックランプスイッチ。
ミッションオイル交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し、内部で発生するスラッジを効率良く落として排出させやすくします。
走行を行ってフラッシング剤を循環させて内部の汚れを落し、
ミッションオイルを温めた状態にしてから一気に排出を行います。
ドレンボルトにのマグネット部に付着したスラッジの状態を確認。
ドレンボルトにはオイル漏れ防止のシールテープを巻いておく事が大切なのですが、
巻き方の向きを間違えてしまうと逆にオイル漏れを誘発してしまう為、作業の際は注意が必要です。
排出には時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで行います。
排出を終えたら規定量のミッションオイルを注入し、ミッションオイルの交換作業が完了。
デフオイル交換。
作業の前にフラッシング剤を注入し、内部で発生したスラッジを落として排出させやすくします。
しっかりと温めた後にフラッシング剤で落とした汚れと共に一気に排出を行います。
デフオイルは固めのオイルを使用しており、オイルをしっかりと温めておかないと排出に時間が掛かるばかりか、
内部で発生したスラッジを上手く排出する事が困難になってしまう為、
特に気温の低い冬場の作業では注意が必要です。
しずくが垂れなくなるまで排出を行います。
排出を終えたら規定量のデフオイルを注入してデフオイル交換が完了。
カムカバーからのエンジンオイル漏れがある為、カムカバーを取り外して状態を確認。
オイルフィラーキャップ部からもオイル漏れ。
カムカバーの縁部分も漏れたオイルの影響でしっとりと濡れています。
カムカバーを取り外してカムカバーガスケットを交換。
カムカバーガスケットは密着度が低下する事でオイル漏れを発生させるのですが、
オイル管理が悪いと内部で発生したスラッジやカーボンがガスケットを傷付けて劣化を早めてしまう為、
オイル交換時期を引き延ばしたり、管理を怠っている方は特に注意が必要で、
オイル漏れに悩まされている方はオイルの管理方法を見直してみる事も重要です。
ロッカーアームシャフトのブラインドプラグ(4箇所)を交換。
ブラインドプラグはシャフトの両端に付いており、必ずカムカバーガスケットとセットで交換が必要です。
キャップからのオイル漏れは、オイルフィラーキャップ内のパッキンの劣化の他に、
カムカバーを塗装した際にキャップの装着面まで塗装されていた影響で、
キャップの装着面がしっかりと密着出来無くなっていた事が関連していると思われる為、
今回はキャップの装着面の塗装を丁寧に研磨して表面を整えて密着性を高めます。
キャップの装着面の研磨が完了。
新旧のロッカーアームのブラインドプラグ。
新旧のカムカバーガスケット。
カムカバーガスケットを装着する前にブラインドプラグを両端に装着
装着面に付いた塵や埃等は丁寧に除去しておく事が大切で、カムカバーの装着面もオイルストーンを用いて、
丁寧に表面を研磨して綺麗に整えておきます。
カムカバーガスケットを装着。
漏れやすい箇所には液体ガスケットを併用して装着を行います。
オイルフィラーキャップ内のパッキンを交換。
カムカバーを装着を終えたら、エンジンオイル交換を行います。
交換の前にフラッシング剤を1本分注入し、内部で発生したスラッジやカーボンを落とし易くさせます。
フラッシングは単発でもある程度の効果は発揮されるのですが、定期的に行う事でエンジン内部をクリーンな状態に保ち、
良い状態をキープする事に繋がる為、当社ではオイル交換毎のフラッシングをお勧めしています。
10分~15分程アイドリングを行ってエンジン内部の手の届かない箇所までフラッシング剤を浸透させて汚れを落し、
落とした汚れと共に一気に排出。
廃油はそのまま処分してしまうのではなく、廃油に異常な汚れや金属片等が含まれて無いか確認を行って、
エンジン内部の状態を探ります。
古いオイルを出来るだけ残さない為にも、しずくが垂れなくなるまで時間を掛けて排出を行います。
新旧のエンジンオイルエレメント。
内部にフィルターがある為、見た目では汚れ具合は判断出来ないのですが、
エレメント内には約ジュース1本分の古いオイルが残ってしまっている為、古いオイルによる再汚染を防ぎ、
新しいエンジンオイルの性能を発揮させる為にも、当社ではオイル交換毎のエレメントの交換をお勧めしています。
オイルエレメントを装着し、規定量のエンジンオイルを注入。
新旧のヒューズボックスカバー。
ヒューズボックスカバーの交換が完了。
全ての作業を終えたら最終のテストランで修理箇所やその他に異常や違和感等が無いかチェックを行って、
特に問題が無ければ後日、オーナーへ作業に際に気になった事や今後のメンテナンス等を伝えて納車となります。
今回はALPINA E21 C1 2.3のパワステオイル・エンジンオイル漏れなどの修理を行いました。
基本的に設計自体が古いモデルの為、レストアを行ったと車だとしても、小さなトラブルは付きものです。
最初は小さなトラブルも気付かなかったり、気付いたとしても安易に放置をしてしまうだけで
一気に被害が拡大してしまうケースもある為、掛かりつけの主治医と相談しながら長期のメンテナンスプランを立てて、しっかりと管理をして対応していく事が大切ですね。
2021年07月07日