【E70 X5】ショックアブソーバー・リアエアサス交換【85,000Km】
旧店舗での整備レポートもまだまだ残っているので、まだまだしばらくは混在です。
今回はE70 X5のショックアブソーバー・リアエアサス交換です。走行距離は85,000Km
X5の2世代目であるE70は2007年~2013年まで生産されたモデルなのですが、
初代モデル同様にエアサスペンションがウィークポイントで、経年によるエア漏れ等のトラブルが多く、
悩まされている方も多いのではないでしょうか?
今回は、リアエアサスを含めた足廻りのリフレッシュを行います。
まずはリアセクションから作業開始です。
テスターでエアサス内のエアを抜いていきます。
エアが抜け、リアショックを取り外す準備が整いました。
リアスタビリンクを交換。
取り外したリアショックアブソーバー一式。
適正に使用されていたか状態を確認しながら分解し、新しいパーツへ交換。
今回はオーナーとの打ち合わせで、リアは大掛かりなブッシュ交換はせずにフロント部分を中心に
アーム類などを交換していきます。
アッパーマウントを取り外し、バンプラバーの消耗状態を確認。
新旧のリアショックアブソーバー。
今回はショックアブソーバー・エアサス共にビルシュタイン社製へ交換。
ショックアブソーバーの劣化の症状は様々で、乗り心地の低下や走行が不安定になったり、異音の発生、
タイヤの偏摩耗等々…
走行していて最近気持ち良くコーナーリングを楽しめないなと感じたら
早めに掛かりつけの主治医へ相談するのが良いでしょう。
アッパーマウント、アッパーサポートマウント。あまり見慣れない形状で、案外単純な構成ですね。
といっても、内部ゴム部品はそのまま使用するようなことはせずに必ず交換しましょう。
新旧のアッパーマウントガスケット、ダストカバー、バンプラバー、サポートマウント(アッパー・ロア)
リアショックアブソーバー一式。
新旧のエアサスペンション。
劣化によりヒビ割れや小さい穴が開く等でエア漏れを発生させる事例が多く、
エア漏れが発生すると、充分に車体を支える事が出来なくなって車高が下がってしまいます。
小さい穴やヒビ割れだからと放置してしまうと、コンプレッサーに負担を掛ける事で、
故障してしまう等の2次被害へ発展するケースもある為、エアサスに異常が出ていれば、
被害が拡大する前に早めに処置しておく事が大切です
新旧のリアスタビリンク。
ゴム製のブーツは経年劣化で固くなるとヒビ割れて破けてしまう事があり、
内部ベアリングを潤滑するグリスが出てしまったり、砂埃等の異物がブーツ内に混入してしまうと、
ベアリングにもダメージを与えて充分に作用しなくなってしまう為、
状態を考慮して新しいパーツへ交換して下さい。
リアショックアブソーバーを装着。
装着時は本締めを行わず、仮止めの状態にしておき、タイヤを接地させて軽くテストランを行って、
馴染ませてから本締めを行います。
新しいリアスタビリンクを装着。
こちらも仮止めの状態で後から本締めを行います。
新しいエアサスを装着し、エアを抜いた時と同様にテスターで動作確認を行ってリアセクションの作業が完了。
次にフロントショックアブソーバーの交換作業へ入ります。
フロントは各アーム類の交換とショックアブソーバーを交換していきます。
リア側よりもフロント側は、エンジンの重量や制動時に大きく負担が掛かる影響で、
消耗が早いケースも多いですね。画像でもお判りだと思いますが、
アッパーマウントのサポートマウントが粉々になっているのが確認出来ますね。
ちょっとしたところの観察でこういった不具合箇所が分かることもありますので
定期的な点検はしておいた方が良いでしょう。
ショックアブソーバーを交換する為、車体から取り外すのですが、
関連するパーツも同時に状態を確認し、交換していきましょう。
各アームのブッシュの劣化を確認。この足廻りは新しいうちは乗りやすいですが
駄目になると一気に乗り心地を損ないますね。
取り外したフロントショックアブソーバー一式。
エンジンルーム側から確認出来た箇所になりますね。
各アーム類を取り外し、交換を行います。
新旧のプルストラットアーム、ロアコントロールアーム。
Xシリーズは車重がありブッシュに掛かる負担が大きくなる為、ブッシュのヘタリが早い傾向で、
ブッシュに異常が出て来ると、路面からの衝撃を吸収出来無くなる影響で、
ステアリング操作性の悪化を顕著に感じるモデルでもあります。
お問い合わせでショックアブソーバーのみの交換を・・・と仰る方もおりますが
しっかりと交換の必要性の有無を見極め作業を進めないと二度手間になりますので、
交換前のチェックはしっかりと行った方が良いかと思います。
新旧のアッパーコントロールアーム。
新旧のフロントスタビリンク。
スプリングコンプレッサーを使用して分解していきます。
上部のワッシャを外してみるとアッパーサポートマウントは、ボロボロで粉々になっている状態。
Xシリーズではわりとメジャーなトラブルですが、見逃されている事も多い箇所です。
新旧のアッパーマウント、アッパーサポートマウント、ロアサポートマウント、バンプラバー、ダストカバー、
スプリングパッド(アッパー&ロア)
バンプラバー、上からのぞいた時は一見大丈夫そうでしたが
柔軟性が無くなってボロボロの状態。
こうなってしまうと効果は全く期待出来ませんね。
フロントショックアブソーバーが完成。
ショックアブソーバーを装着し、その他の新しいアーム類を装着。
何気にアッパーアームの脱着に時間のかかるモデルでした。
プルストラットアーム、ロアコントロールアーム、フロントスタビリンクを装着。
この時点での足廻りのパーツは本締めを行わず、全て仮止めの状態で、
タイヤを接地させて軽くテストランを行ってブッシュ等を馴染ませて本締めを行ってから、
4輪ホイールアライメント調整を行います。
足廻りの脱着を行うと調整した数値が変わってしまう為、4輪ホイールアライメント調整が必要です。
4輪ホイールアライメント調整は、ステアリングを維持してなくても直進性を保つ様にする為に、
また気持ち良くコーナーリングを楽しめるよう、何度かのテストランを繰り返しながら
4輪全ての角度や向き等の調整を行います。
足廻りの脱着を行わなくても各部の消耗やタイヤの摩耗によってもアライメントの数値が変わってしまう為、
長期に調整を行わなかったりすると、タイヤの偏摩耗、ステアリングのセンター位置が変わってしまったり、
ステアリングを維持してないと左右どちらかに車が流れてしまう等、走行が安定しなくなる為、楽しく走れませんし
場合によっては危険でもあります。
基本的に調整は同車種だとしても様々な条件に影響される為、同じ数値になる事は無く、
メーカーの数値を基準値として、その車に適した数値を導き出していく事が重要で、
当社では車種の特徴を把握したスタッフが、走行テストを繰り返しながら最適な数値へ調整を行います。
全ての作業を終えたら最終のテストランを行って、修理箇所やその他に違和感等が無いか確認を行い、
特に問題が無ければ、後日オーナーへ分解整備記録簿をお渡しし、
整備の詳細や今後のメンテナンスで気になった点等をお話して納車となりました。
今回はE70 X5のショックアブソーバーとリアエアサスの交換を行いました。
エアサスを使用しているモデルはエア漏れやエアを送るコンプレッサー等のトラブルが多く、
特に古いモデルでは注意が必要で、x5シリーズでは初代のE53や2世代目のE70だけでなく、
3世代目のF15でもトラブルが多いようですね。
車輌の経年や使用方法、消耗等を考慮して大きなトラブルが発生する前に対応しておくと安心です。
足廻りの不具合は車高が下がる等の見た目で判断が出来れば判りやすいのですが、
なかには気付きにくいトラブルもあり、タイヤの偏摩耗や乗り心地や操作性に少しでも違和感を感じたら、
大きなトラブルへ発展する前に早急に対応する事で、
その車の楽しさを継続的に感じる事が出来るのではないでしょうか。
2021年07月05日