メンテナンスレポート > VANOSユニット(可変バルブ)のオーバーホールと役割

ページタイトル
過去のメンテナンスレポートはこちら
2009年01月19日

VANOSユニット(可変バルブ)のオーバーホールと役割


こんにちは。オートファイン@横浜です。

本日はVANOSユニットのオイル漏れのお話しです。

 

E36/M3、E46/M3、ALPINAで最近良く見られるVANOS周辺からのオイル漏れ。

 

 

相当量のオイルが漏れていても、上の写真の通りアンダーカバーがオイルを受け止めてしまうので

地面にオイル溜まりが出来る事も少なく、かなり進行が進んでから発見される事も多いですね。

VANOS前面だけではなく、取り付け部からも漏れている事が多いので見逃しがちです。

では、VANOSからのオイル漏れがどのような不具合を起こす可能性があるのか。

その辺りを簡単に説明致します。


VANOS機構が採用された初期は吸気側のみのシングルVANOSでしたが

現在採用されているVANOSは吸排気の各カムシャフトの位相を

連続的に変化させるダブルVANOSになります。

では、カムシャフトの位相を連続的に変化とはどういう意味なのか。

また位相を変化させる事によりどのようなメリットを生むのかを簡単に説明致します。

VANOSユニット内のソレノイドがエンジン回転数信号等々を受け取り

給排気それぞれのVANOSギアシャフトをエンジンオイルの油圧で

前後に駆動させることによりカムシャフトの進角、遅角を制御します。

カムシャフトのリフト量は給排気共に固定されている為、VANOS機構ではバルブリフト量の

連続変化は行なえませんので、開閉のタイミングのみを連続的に可変させるといった仕組みになります。

では可変させる事のメリットは?

上のエンジン断面図を参考にして説明するともうちょっと分かりやすいかと思います。

まず、このエンジンを可変バルブ機構無しの4サイクルレシプロエンジンとして見ると

クランクシャフトの動きに合わせ、吸排気バルブは交互に開閉され給排気が行なわれているのが

分かると思います。

厳密に言うと、混合気の吸気時の重量慣性や燃焼時の爆発圧力等も考えなくてはいけないのですが

複雑になるのでここでは回転運動だけを考えます。

エンジンの回転数を上げれば、当然クランクシャフトの回転数とバルブの開閉速度は伴って上がります。

混合気の流入と充填、排気ガスの排出も同様でエンジン回転数の変化のみで決定されてしまいます。

その結果どのようなフィーリングのエンジンになるか。

極端ですが、決められたある一定の回転数だけでのみフィーリングが良く、その回転域から

外れればフィーリングが悪くなるとイメージして下さい。

レース車輌のようにアクセルを踏んでいないとアイドリングしない等の

現象はこのような考え方で良いかと思います。


では、このエンジンにVANOSを装着した場合。

前述した通り、どの回転数であってもVANOSがカムシャフトを進角、遅角させ

給排気バルブの開閉時期を場合によっては早く、場合によっては遅く

更には吸気行程と排気行程を僅かにシンクロさせたりする事により

混合気の流入速度と充填、燃焼、排気ガスの排出速度等を常に全域で最適化する事により

低回転から高回転までストレス無く駆動するエンジンになります。



というように、かなりシビアな動きを要求されるパートですから

VANOSからのエンジンオイル漏れは、圧力損失によってギアシャフトの駆動を正常な動きを妨げたり

それによって、バルブタイミングの微妙なズレを引き起こしたりする可能性も考えられる場所なので

オイルの滲み程度だからと楽観視せず、発見時は早期に処置を施すようにおすすめしております。

投稿者:autofine at 15:15 | メンテナンス

過去のメンテナンスレポートはこちら