【ALPINA E46 B3S】定期メンテナンス【110,000Km】
昨年、当社でメンテナンスをしたALPINA E46 B3Sが定期メンテナンスの為入庫です。
前回はトランスミッション系のメンテナンスとリアブッシュをメインに各ブッシュの交換を行いました。
今回はステアリングの振動が気になるとの事なので
基本的な作業を行いながら関連する各部のチェック・メンテナンスを進めます。
まずは基本的な定期メンテナンスとしてエンジンオイルの交換。
交換の際にはフラッシング剤を注入して内部の手の届かない場所等に堆積したスラッジやカーボンの汚れを落とします。
エンジンオイルにも洗浄効果はあるので定期的にオイル交換を行っていれば問題ないのですが、
オイル交換をしなくても走行が可能な為、交換時期を引き延ばしてしまう車輌が多く、
エンジン内部をクリーンに保つ為に当社ではエンジンオイル交換の際にはフラッシングを行っています。
使用するフラッシング剤には素早く汚れを落すだけでなく、
洗浄時の摩擦を防ぎ再付着防止効果で新しいオイルの再汚染を防ぎます。
10~15分程アイドリングを行ってフラッシング剤をエンジン内部へ浸透させて
充分に汚れを落としてからオイルを排出。
排出の際には異常な汚れや金属片等が出てないか汚れたオイルの状態も確認しておく事が大切です。
汚れたオイルを出来るだけエンジン内部に残さない様に時間をかけて滴が垂れなくなるまで排出を行います。
新旧のオイルエレメント。
フラッシングを行ったので同時にオイルエレメントも交換。
オイルエレメントはオイルを濾過して汚れを吸着しているのですが、汚れてくると目詰まりを起こして
循環するオイル量が減ってしまいます。
オイルが少なければエンジンは焼付いて故障してしまうので、この様な状態を防ぐ為にオイルエレメントには
バイパス機能が付いていて目詰まりが起きるとエレメントを介さずに汚れたオイルをそのまま循環させる様になり
エンジンに悪影響を及ぼす為注意が必要です。
通常オイル交換2回に1回の交換で十分と言われており性能面でも問題無いのですが、エレメント内部には古いオイルが
残っているので新しいオイルと混ざる事になり再汚染に繋がってしまいます。
その為比較的安価なパーツなので毎回の交換をお勧めしています。
テスターチェックを行なったところクランクシャフトセンサーにエラー表示が出ていたので外して確認。
新旧のクランクシャフトセンサー。
破損していたので交換。
センサー類は突然、センサー内部トラブルに見舞われる事も多く、
吹け上がりの不調やアイドリング不安定などを引き起こす事も多いのですが
センサーが働いているか・いないかの判断しかとれず、定期的な交換をおすすめしにくい箇所でもありますので
やはり、半年ないし一年に一度はしっかりと点検を行い、車輛状態を把握しておく事が大事かと思います。
エンジンオイル交換後はインスペクションのオイルリセットを行うのですが、次のオイル交換時期の目安になり、
定期的な交換時期の参考になるので必ず行う事が望ましいです。
インスペクションのオイルリセットを行うと表示は25,000kmになり走行をすると減っていきます。
交換の目安としては、表示が22,000Km~20,000Km、もしくは半年~1年でどちらか早い方で交換して下さい。
ブレーキを確認するとフロント・リア共に交換時期に来ていたのでそれぞれ外して交換。
新旧のフロントブレーキローター・ブレーキパッド。
一応、パッドの残りを知らせるセンサーが付いていますが、
残1~2mm程度でメーターに表示されるといったところでしょうか。
均一にパッドが減っていない事も多く、メーター内にパッド警告等が点灯し、実際に確認してみたら
裏金がローターに当たっていた・・・なんて車も稀に見ます。
当社での摩耗限界は残3mmで交換をおすすめしています。
古いブレーキローターはレコード盤の溝の様に削れてしまっています。
ブレーキパッドに付着した砂利や削られたブレーキカス等が原因でこの様な削れ方をするのですが、
これについては少なからず発生するので致し方ない部分ですね。
ですが、大きく削られてしまっている場合はジャダー現象で異音や振動が発生し
ステアリングやブレーキに影響を与える事もあります。
ステアリングからの振動が気になるとの事なので、ブレーキ以外の原因を探る為サスペンションを外して確認。
外したフロントサスペンション。
各パーツを外して新しいパーツへ交換。
スプリングコンプレッサーを使用して各パーツに分解。
交換するフロント足廻りパーツ一式。
アッパーマウント
スウィングサポート
スタビブッシュ
スプリングパッド
バンプラバー
ダストブーツ
ロアアームコントロールブッシュは前回交換済。
新旧のフレキシブルステアリングカップリング。
ステアリングシャフトの先に装着されているパーツでブッシュがステアリングの振動を吸収しています。
ブッシュはゴム製で徐々に油分が抜けて経年劣化する為、定期的な確認と交換が必要です。
各パーツを装着してフロント足廻りのブッシュ交換が完了。
前後のホイールバランスの確認と調整。
ホイールバランスの調整が適正でないとタイヤの
偏摩耗、走行中の振動が原因で各パーツの損傷、燃費の悪化等、様々な影響を及ぼします。
新しいタイヤを購入する際にホイールバランスを調整していると思いますが、
タイヤの摩耗や冬タイヤへ交換する等で着脱を繰り返すだけでも
再調整が必要になる事があるので定期的な調整が必要になります。
走行中の振動発生は様々な原因があるのですが、ホイールバランスを再調整する事で症状が改善する場合があります。
4輪共にしっかりとバランスが取れて調整が完了。
フロント足廻り。
左右のステアリングラックブーツが破損していたので交換。
このパーツはステアリングのシャフトやボールジョイントを異物から守る役割があるのですが、
破損してしまうと砂埃や泥水等が侵入し異物による摩擦や錆等で不具合を引き起こします。
ブーツ系のパーツは経年劣化で破損する事が多いので消耗品として考えた方が良いでしょう。
車検で必ずチェックされるパーツなので破損が無くても
経年や走行距離を考慮して交換しておく方が安心かもしれませんね。
パワーウィンドウの不良。
E46モデルでは定番のトラブルなので調子が悪くなっていたら要注意です。
運転席側のパワーウィンドウシステムに不具合があったのでパーツを外して確認。
新旧のインシュレーター・パワーウィンドウシステム。
インシュレーターは再利用せずに新品へ交換。
パワーウィンドウシステムは一部のパーツを交換しても
必ず他のパーツに不具合が発生する事が多いので全体のパーツを交換。
各パーツを装着しパワーウィンドウの動作確認を行ってパワーウィンドウシステムの修理が完了。
冷却水の交換。
専用の機械を使用してフラッシング剤を注入し、錆や水垢等の汚れを浮かせてから古い冷却水と共に車外へ圧送。
基本的に冷却水の交換は年に1回行い、同時に冷却経路の点検をする事で冷却水漏れやオーバーヒートの
発生率を大幅に下げる事が出来ます。
最後に4輪アライメント調整を行うのですが、
同車種でも経年やタイヤの摩耗具合で調整の数値はそれぞれ違っているので
基本的な数値を目安にテストランを何度も行いながら、
その車輌に最も適した数値を導き出していきます。
全ての作業が終わり、最終チェックの為のテストランを実施。
最終のテストランでは修理箇所のチェックやブレーキシステムの慣らし作業、4輪アライメントの微調整等、
その車輌が違和感なくベストな状態に仕上がっているか確認。
気になっていたステアリングの振動も消え、B3S本来の走行を取り戻し楽しく走行する事が出来ました。
ALPINA E46 B3Sは最終モデルでも既に10年以上が経過しているモデルなので同様のモデルを所有している方は
ゴム系のパーツの経年劣化やベルトやブッシュ類等のパーツにも注意が必要です。
2017年07月15日