【E46 M3】足廻りショックアブソーバー・スプリング交換&VANOSオーバーホールetc,,,【62,000Km】
9月も本日で終わりです。何となく涼やかな毎日で秋を感じはじめていますが
業務は変わらず忙しくやらせてもらっています。手が空きそうだな・・・という事が全く無く、
あっという間に時間が過ぎ去っていく毎日です。
本日のメンテナンスレポートは、E46 M3の足廻りショックアブソーバー・スプリング交換とVANOSのオーバーホール、
その他に油脂系の交換を行います。走行距離は62,000Km。
足廻りに関して今年初めにフルブッシュ施工を済ませショックアブソーバーは次回に。という事だったので
今回施工していきましょう。VANOSに関しては、ギアユニット部に使用されている、
フィリスターヘッドボルトの交換をメインにオーバーホールを行います。
先ずは足廻りの交換から作業を行います。
足廻りは大きく分けるとショックアブソーバー、コイルスプリング、アッパーマウントの3点から構成されており、
それぞれ走行環境や走行方法により交換時期が変わる為、的確な交換時期を明記する事は難しいので
その時々で状態を確認していく必要がありますね。
走行時に異音の発生や乗り心地に違和感を感じたり、ステアリングが取られたり、
車高が下がりすぎている等の症状が1つでも出ていれば、出来るだけ早目に掛かりつけの主治医へ相談し対応する事が大切です。
新車から10年以上が経過している車輌は症状が出ていなくても確実に劣化が進行している為、
しっかりとした点検・交換を行う必要があります。
前後共に現状の足廻りに異常が無いか点検を行いながら、各パーツを取り外していきます。
リア側、バンプラバーはもう機能していなさそうです。
それではフロントショックから交換していきましょう。
フロントストラット一式を取り外します。
取り外したフロントショックストラット。
分解してそれぞれのパーツを交換。
アッパーマウント、スプリングパッド(上下)、ダストブーツ、バンプラバー。
フロントショックアブソーバーの消耗パーツをセットで交換。
新品のショックアブソーバー、コイルスプリング。
今回はSACHS(ザックス)のショックアブソーバーにVOGT LAND(フォクトランド)のダウンスプリングを装着し、
見た目だけでなく走行性能を向上させます。
スプリングコンプレッサーを使用して各パーツに分解し、適正に使用されていたのか状態を確認。
新しいショックアブソーバーにバンプラバー等の消耗パーツを装着。
新旧のコイルスプリング。
VOGT LANDのローダウンスプリングは純正パーツと比較するとストローク量は短くなりますが、
車種やグレード毎に測定され、スプリングのバランスや相互作用を調整している為、
快適な乗り心地を極力損なわずに、スポーティ且つ ダイナミックなハンドリングが楽しめます。
新しいパーツを組んでフロントショックアブソーバーが完成。
完成したフロントショックアブソーバーを車体へ装着し、フロント足廻りの交換が完了。
装着は仮止めの状態でタイヤを接地させ、軽くテストランを行ってから本締めを行います。
リアショックアブソーバー一式。
リアアッパーマウント、スプリングパッド(上下)、ダストカバー、バンプラバー。
フロント側と同様にリアショックアブソーバー消耗パーツ一式をセットで交換。
新しいショックアブソーバー(SACHS)、ローダウンスプリング(VOGT LAND)
新しいショックアブソーバー一式をボディへ装着し、リアショックアブソーバーの交換が完了。
こちらもフロント側と同様に仮止めの状態で、テストラン後に本締めを行います。
VANOSのオーバーホールを行う為、関連する各パーツを取り外していきます。
次にカムカバーを取り外し、VANOSへアクセス。
SSTを使用して取り外す準備を進めます。
VANOSから取り外したソレノイドバルブユニット。
VANOSユニットを外します。
取り外したVANOSユニット。
分解しながら各部に問題はないか確認し、同時にパーツの洗浄を行います。
次にフィリスターヘッドボルトを交換する為、スプロケットなどを取り外していきます。
インテーク側。
ギアユニットカバーを固定している6本のボルトを取り外します。
エキゾースト側。
インテーク側のギアユニットカバーを取り外すと、交換するフィリスターヘッドボルトが現れます。
問題となっているフィリスターヘッドボルトですが、脆弱なロットが存在しており、
走行中にボルトが破断してバルブとピストンが干渉する事でエンジンが壊滅的な状態になってしまった事例があり、
E46M3のオーナーでしたらご存知の方も多いのではないでしょうか?
破断までいかなかったとしても傷が入っていたり、
ボルトがかなり緩んだ状態で、異音を発生させていたケースもある為、
現状で問題が無かったとしても、対策パーツへ交換しておく必要があります。
交換した記憶の無い方や中古車として購入した方等は、
VANOSのオーバーホールを含めたメンテナンスを行って下さい。
エキゾースト側のギアユニットカバーを取り外します。
インテーク・エキゾースト共にギアユニットカバーが外れました。
問題のフィリスターヘッドボルトを交換していきます。
旧型(対策前)のフィリスターヘッドボルトはヘキサゴンタイプ。
新旧のフィリスターヘッドボルト。
対策前はヘキサゴンタイプですが、対策後はトルクスタイプへ変更されています。
新しいフィリスターヘッドボルトには高強度、耐熱用のロックタイト(緩み止め)を塗布してから装着。
インテーク側、エキゾースト側共にボルトを装着する順番を守り、適正なトルクで締め付けていきます。
取り外したギアユニットカバー。
ギアの噛み合わせが傷付いていたり、摩耗等が発生してないかインテーク側、エキゾースト側それぞれを確認。
新旧のVANOSユニットガスケット。
VANOSからのオイル漏れは比較的多いトラブルなのですが、
このガスケットが劣化してオイル漏れする事が多く注意が必要です。
ガスケットは自身が潰れて密着性を高めている為、一度使用したガスケットは再使用出来ません。
新しいガスケットを使用してVANOSユニットを装着。
オイルが漏れやすい箇所には液体ガスケットを併用してオイル漏れを防ぎます。
VANOSユニットを装着し、ソレノイドバルブユニットを装着していきます。
ソレノイドバルブユニットのシーリングプレートは新品へ交換し、
VANOSユニットへ装着してVANOSのメンテナンスが完了。
カムカバーガスケット、プラグホールガスケット、ラバーシールを新品へ交換。
ミッションオイル交換。
交換を行う前にフラッシング剤を注入し、内部で発生したスラッジを落としやすくします。
ミッションオイルを充分に温めた後、
フラッシング剤で落としたスラッジと共に一気にミッションオイルを排出させます。
ドレンボルトには新しいシーリングテープを巻き直しておきます。
巻く方向が決まっているので、安易に作業を行ってしまうと逆にオイル漏れの原因になる為要注意。
出来るだけミッション内部に古いオイルを残さない様にする為に、
時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで排出を行います。
排出を終えたら、規定量のミッションオイルを注入してミッションオイル交換が完了。
デフオイル交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し、内部で発生したスラッジを除去して排出させやすくします。
デフオイルは粘度が高く、冷えた状態では上手く排出出来ないばかりか、排出に時間が掛かってしまうので、
オイルを温めフラッシング剤を循環させてスラッジを落とす為にテストランを実施し、
落としたスラッジと共に古いオイルを排出させます。
出来るだけ内部に古いオイルが残らない様に、しずくが垂れなくなるまで時間を掛けて排出を行います。
オイルの排出を終えたら、規定量のデフオイルを注入してデフオイル交換が完了。
エンジンオイル交換。
当社のエンジンオイル交換はフラッシングとセットになっており、
定期的にオイル交換・フラッシングを行う事でエンジン内部を綺麗な状態に保つ事に繋がります。
使用するフラッシング剤は汚れに素早く浸透して汚れを落すだけでなく、洗浄の際の摩擦を抑え、
一度落した汚れの再付着を防止する再付着防止効果で新しいオイルの再汚染を防ぎます。
10~15分程アイドリングを行ってエンジン内部の手の届かない箇所までフラッシング剤を浸透させて汚れを落し、
古いオイルと共に一気に排出させます。
廃油はそのまま捨ててしまうのではなく、異常な汚れや金属片等が含まれて無いか確認し、
エンジン内部の状態を探る事が大切です。
オイルエレメントの交換。装着に使用するパッキンやワッシャ等も新品へ交換。
新しいオイルエレメントを装着し、エレメントの交換が完了。
装着の際はオイルエレメントケース内部の汚れも除去しておく事が大切です。
今回使用したエンジンオイルはFUCHS TiTAN SuperSyn 5W-50。 
M3やALPINAのオーナーからの支持があり、リピート率も非常に高いオイルで、
真冬の低温時から真夏の高温時まで安定した性能を誇り、
オイル消費量を抑えカーボンやスラッジ等の汚れの集約性能も高く、
低回転からもたつく事無く軽く一気に吹き上がるエンジンに驚かれる方も多い、
高性能車からクラッシックモデルまで、幅広いオーナーにお勧めの100%化学合成のエンジンオイルです。
しずくが垂れなくなるまでオイルの排出を終えたら、規定量のエンジンオイルを注入し、エンジンオイル交換が完了。
オイルインスペクションのリセットを行います。
リセット後は25,000kmの表示になり、走行距離だけでなく様々な条件を元に数値が減っていくのですが、
0km表示になるまでオイル交換をしなくても大丈夫という訳ではありません。
今回の交換は25,000-2,1300=3,700kmでの交換となりますが…
排出したオイルやエレメントを見ると数値以上に汚れが気になりました。
エンジンオイルの交換時期ですが、3,000km(インスペクション表示22,000km)が過ぎたぐらいから交換を意識し、
5,000km(インスペクション表示20,000km)までに交換を終えておく事が理想です。
本来の性能を発揮させ快適な走行を楽しむ為にも、
定期的にオイル交換を行ってエンジン内部に汚れを堆積させない事が大切です。
オイルインスペクションのリセットを行ってエンジンオイル交換が完了。
全ての作業を終えたら最終のテストランを行って、修理箇所やその他に異常が無いか確認を行います。
入庫時のテストランでは不安定だった足廻りを改善し、更にVANOSをオーバーホールした事で、
低速時から高速時まで一気に吹け上がるトルクフルなM3本来のエンジンパワーを発揮し、
小気味良いエンジン音を奏でながらコーナーリングをスムーズに駆け抜ける爽快感等、
M3ならではの走りを体感する事が出来ました。
後日、分解整備記録簿をオーナーにお渡しし、今後のメンテナンス等を伝えて納車となりました。
2020年09月30日