第55回 ALPINA B3S
ＡＬＰＩＮＡ Ｂ３Ｓがトータルメンテナンスで入庫致しました。
距離は１９，０００ｋｍ、スウィッチトロニックのＡＴ車でまだまだこれからエンジンのアタリもつき面白くなってくる車です。
お客様と打ち合わせをした所、各オイル類のリセットと、エンジンパワーに対してブレーキがいまいち
との事でしたので、ブレーキ廻りの見直しを今回依頼されました。
まずはＡＴＦの交換です。閉店前にオイルパンを外し一晩オイルを落としておきます。
ドレンボルトを外して、オイルパン内のオイルを抜いた後、オイルパンを外します。
距離は走っていませんが汚れが目立ちます。ＡＴフィルターも新品に交換。
古いＡＴフィルターが黒くなっているのは鉄粉です。いわゆるスラッジですね。
オイルパンとオイルパン底部に設置してある磁石も綺麗に清掃し、
新しいＡＴフィルターを取り付け規定のトルクでオイルパンを取り付けます。
もちろんガスケットも新品を使用。
使用するオイルはＦＵＣＨＳ ＡＴＦ４０００。
ＢＭＷとの相性が非常に良く、高速走行を続けてもＡＴの動きがカッチリと体感できる優秀なオイルです。
デフオイルも交換。使用オイルはＦＵＣＨＳ ＨＬＳ９０。
Ｂ３Ｓのデフは本国設定にあるディーゼルターボ用のデフを使用しています。
ＡＬＰＩＮＡのしなやかな足廻りの素晴らしさは申し分無し。
ですがオーナー様の走り方のスタイルに合わなければこういった箇所にスパイスを加えるのもいいでしょう。
ＡＣＳ強化ロアアームコントロールブッシュに交換。
しなやかさの中にカッチリとした感触をステアリングに伝える為の一工夫です。
社外のスタビライザーも装着されていましたがマッチングがいまいちだったのでノーマルに変更し
４輪アライメントの測定と調整を実施致しました。
基準値に合わせテストラン。基準値に合わせていても問題がある場合は各ブッシュの状態等、
車輌状態を確認しながら調整を進めます。
ブレーキローター、パッドの見直し。
Ｂ１０Ｖ８用にはブレンボのキャリパーキットがリリースされていますが
その他のモデルはスタンダードモデルとブレーキ構造は変わりません。
ノーマルブレーキでは正直心許無いのはという声はＡＬＰＩＮＡにお乗りのお客様から良く伺います。
今回はフロントリア共にローターに６本のスリット加工をし装着。ブレーキパッドも効き優先とし、製作致しました。
リアも同様に交換。一度も点灯はしていませんがパッドセンサーもフロントリア共に交換。
装着後、ローターに焼きを入れ歪みが出ないようにしパッドとのアタリを確認します。
確かにククッとブレーキを軽く踏むと今までとは全く違うブレーキタッチで申し分の無い効き具合なのですが
あまりにレーシーすぎる音(キーキー音)の為、お客様に説明しパッドの見直し。
新しくパッドが到着し、セットした所、激しすぎる音も消えブレーキ廻りの作業は完了。
速さと優雅さを両立した車はバランス良く仕上げて行きたいものです。
余談になりますが、写真のＡＬＰＩＮＡはブレンボキャリパー装着車になります。
アルピナのホイールはオフセットの関係上、フロントにブレンボを装着しようとすると
ブレンボジャパンからリリースされているＫＩＴの場合、１０ｍｍ前後のスペーサーが必要になりますが
ローターベルとキャリパーブラケットに一手間加えることにより、スペーサー無しでの装着が可能です。
やはりスペーサーを装着してしまうとステアリングタッチやその車の持つ挙動の良さが損なわれてしまう事も少なくありません。
ちなみにアルミとキャリパーの隙間は約１．０ｍｍ。ローター径は３８０ｍｍ。色もお好みでセットアップ可能です。
しっかり止まれるということは、それなりにスピードも安心して出せると言う事。
ノーマルでは物足りない方にはおすすめです。
( 法定速度は守りましょう。)
ブレーキオイルも交換。ブレーキオイルは汚れ、吸湿により性能低下します。
定期的にチェックし、性能の低下が見られた場合は即交換をおすすめ致しております。
命に関わる箇所ですから神経質になりすぎても良い箇所だと思います。
エアコンマイクロフィルターを交換。汚れが溜まると悪臭の原因になりますし、
そのまま使用し続けるとブロアモーターの寿命も縮めますのでこちらも定期的にチェックし
汚れが見られたら交換をおすすめします。
最後にＦＵＣＨＳ ５W５０を使用しエンジンオイルを交換。
全ての作業が終わり最終チェックの為テストラン。
キーを捻ると、優雅な外観とは裏腹にＭモデルとはまた一味違う心地良いメカノイズが混じったエンジン音が響きます。
グッとアクセルを踏み込むと甲高いエンジン音が室内に響き、
華麗さの中にも一本芯の通った力強さを感じるのがＡＬＰＩＮＡの醍醐味でしょうか。
力強さと優雅さを持ち合わせた車は意外と少ないものです。
2007年08月12日