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MAINTENANCE REPORT

【E90 320i】ファンベルト断裂・エンジンオイル漏れ修理【88,000Km】

dsc09858_rファンベルトが断裂した事で走行不能になりレッカーで搬入されたE90 320iになります。
今回は走行中ではなく、エンジン始動時に切れてしまったようで、大きな事故に繋がらなくて良かったです。
ファンベルトは古い車等でエンジンの回転力を利用してエンジンを冷却するファンを回す為のベルトの事を言っていたのですが、
現在では電動ファンが主流になり、オルタネータ、ウォーターポンプ、エアコンコンプレッサー等を
可動させるベルトを昔の名称の名残でファンベルトと言っています。
ファンベルトが断裂するとベルト可動している全ての機能が停止する事で、電力停止・オーバーヒート・エアコン使用不可
パワステ使用不可等と深刻な状態を引き起こします。
まずはファンベルトが断裂した原因を探りながら作業を進めていきましょう。dsc09756_rアンダーカバーを外すと千切れたファンベルトの破片が散乱し、漏れたオイルがベットリと付着していました。dsc09861_r点検を進めていくと、エアコンのコンプレッサーが今回の断裂の原因のようです。
クラッチ部分にズレが生じており、コンプレッサーがロックしているのが確認出来ましたので取り外します。dsc09862_r新旧のエアコンコンプレッサー。dsc09863_r確認すると内部ベアリングが焼き付き、異常摩耗しているのが分かります。
これがベルトの正常に駆動の妨げになり、断裂を引き起こしたと考えられます。
dsc09864_rこのモデルになると、ドライコンテナはコンデンサー横の円筒部にカートリッジとして装着されており
交換にはエアコンコンデンサーを取り外して交換する必要があります。dsc09871_rパーツとして見ればコストは低いですが、何気にコンデンサーの脱着は手間がかかります・・・
dsc09872_r新旧のドライコンテナ。
内部に乾燥剤が入っており、液体とガスを分離して水分(湿気)やゴミ等を除去する役割をしています。
装着後、真空引きとガスチャージを行ってエアコンシステムの修理は完了。dsc09875_r新旧のファンベルトテンショナーとアイドラプーリー。
断裂の際に受けたダメージと経年・走行距離を考慮して交換。
dsc09876_r新しいファンベルト・ファンベルトテンショナー・アイドラプーリーを装着します。dsc09881_rファンベルトやテンショナー等を装着し、ベルトの張りを確認して修理完了。dsc09907_r点検時に判明したエンジンオイル漏れの修理を開始。
漏れ箇所は2箇所。オイルエレメントベースとブレーキバキュームポンプからのオイル漏れです。
E90系4気筒の車輛では良く見られる症状ですね。もうちょっと何とかならないものでしょうか・・・
まずはフラッシング剤を注入してオイル排出の準備を。dsc09928_rフラッシング作業を終え、古いオイルを排出していきます。
dsc09911_rまずはエレメントベースからの修理を開始。
カムカバーガスケットも交換の必要がありそうです。
dsc09918_rオイルエレメントベースからのオイル漏れはガスケットの劣化が原因です。
構造上、この箇所からの漏れは必ず起きますね。古いガスケットも硬化している事がほとんどです。
dsc09920_r古いオイルの色もあまり良くありませんね・・・もうちょっと交換頻度を増やした方が良いでしょう・・・
dsc09924_r新旧のオイルエレメントベースガスケット。
今回はバラバラになる事はありませんでしたが、ガチガチに硬化し弾力も無く密着性が失われていました。
dsc09931_r新旧のオイルエレメント。
交換は安価なパーツなので新しいオイルを入れる際は、同時に交換する事が好ましいです。
エレメントだけでなく、エレメントケースのOリング、ドレンボルトのワッシャなども新品に交換します。 dsc09936_rバキュームポンプの交換を進めていきます。
カムケース内部のスラッジ堆積が目立ちますね。
出来る限り清掃して汚れは落とします。
しつこいようですが、もう少しオイル交換の頻度を増やしましょう・・・
dsc09940_r新旧のバキュームポンプ。
このポンプが作動する事で負圧を作り出し、作られた負圧はブレーキマスターバックで増幅され
ブレーキを軽い力で踏んだだけで車をしっかりと停止させる事が出来るのもこのパーツのおかげですが
あまりにもこの箇所からオイル漏れしている車が多すぎます・・・
垂れたオイルがエキマニに付着し、エアコンを外気設定にしているとかなり酷い焦げ臭い匂いが室内を充満させますので
匂いに驚いて車輌を持ち込まれる方も多いですね。
dsc09943_r新旧のカムカバーガスケット。
古いガスケットは劣化してゴムの柔軟性が無くなりプラスチックの様にパリパリと割れてしまいました。dsc09944_r1番と4番シリンダーのプラグホールスリーブのOリングとフランジガスケット。
このパーツも同時に新品へ交換します。dsc09946_r液体ガスケットを併用しながらカムカバーを取り付けてオイル漏れの修理が完了。dsc09948_r規定量の新しいオイルを注入しオイル交換も完了。dsc09952_rオイルインスペクションのリセット。
次回のオイル交換は走行方法にもよりますが、この数値を目安に3,000~5,000km程で交換すれば問題有りません。
(表示の数値が減っていくので表示が27,000~25,000kmになったら交換して下さい。)
リセットされていない車輌も多く見るのですが、そのほとんどがオイル管理をされて無い場合が多く
交換時期を見逃してしまっている場合が殆どです。
交換時期の目安になるのでオイル交換後は出来るだけリセットを行った方が良いでしょう。dsc09954_rオイルで汚れていたアンダーカバーを綺麗にスチーム洗浄して汚れを落とします。dsc09949_r全ての作業完了後にテストランを行い、修理箇所やその他に不具合が出ていないか確認します。
ベルトを交換した事で安定した走行が可能になり、エンジンオイルが汚れていた影響でもたついていた反応も
交換後はスムーズな加速で本来の走りを取り戻しました。
ファンベルトの断裂という不測の事態で、当初はどこまでダメージが及んでいるか心配されましたが
エアコンコンプレッサーとベルト廻りの交換とオイル漏れの修理だけで済んだのは不幸中の幸いともいえるのではないでしょうか。
走行中に断裂していたら、オーバーヒートや切れたファンベルトがクランクプーリーに巻き付いたり、ファンなどへ当たったりなどと
もっと被害は大きくなっていたはずです。そうならない為にも12/24ヶ月の定期的な点検など実施する事をおすすめしております。

2016年11月21日