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MAINTENANCE REPORT

【E46 318i】クラッチ交換整備etc,,,【86,000Km】

E46 318iがクラッチ交換整備の為入庫です。
オーナーによるとクラッチペダルを踏むとジャダーが・・・との事。
数年間乗りっぱなしでメンテナンスもほとんどしていないとの事なので
今回は総合的に点検し、作業内容をオーナーと打ち合わせさせていただきました。エンジンルームを確認してまず目に止まったのがラジエターキャップからの冷却水漏れ。
現状でポタポタと出ている訳では有りませんが、漏れた形跡がしっかりと白く残っています。
恐らく冷却水温度が上がっている時に、漏れだしているのでしょう。
冷却システムは冷却効果を高める為に冷却水に圧力を掛ける仕組みになっていて
その圧力の調整をしているのがラジエターキャップになります。
ラジエターキャップには加圧弁が付いており、
圧力の状況によって弁が開閉して冷却水をリザーバータンクへ出し入れさせて圧力を調整しているのですが、
その効果が失われると圧力調整が不十分になり高圧になった冷却水が今回のように噴き出てしまう事があります。下廻りを確認するとロアホースに達する程、
冷却水が噴き出ていた様でホース類も経年や劣化を考慮して交換が必要そうですね。ロアホースと同様にアッパーホースも交換。新旧のラジエターアッパーホース・ロアホース。
E46モデルからジョイント部がワンタッチになり、取り外しの利便性は良くなりましたが
ジョイント部分の硬化による水漏れが多く見られるようになりました。
こういった箇所は、全体的な消耗の度合を判断し、トラブルが発生する前に交換した方が良いでしょう。新旧のラジエターキャップ。
キャップには加圧弁の他にラバーシールが漏れを防いでいるのですが、
常に高温・高圧に晒されている為、定期交換が必要な消耗パーツと考えた方が良いですね。
エア抜きと冷却水の交換。
専用の機械を使用してフラッシング剤を圧送して
冷却経路の錆や水垢等の汚れを落とし古い冷却水と共に車外へ排出します。
古い冷却水を排出後、新しい冷却水を規定量注入してエア抜きを行い冷却水の交換は完了です。新旧のアイドラプーリー・ベルトテンショナー。
エンジンルームからの異音はヒューンとベルト付近からだったので
ベルトの劣化を疑いましたがベルトは交換済みとの事。
確認するとプーリーとテンショナーは交換されておらず、交換とさせていただきました。新しいアイドラプーリー・ベルトテンショナーを装着して交換が完了。
プーリーは内部にベアリングが入っているのですが、徐々に摩耗して異音を発生させます。
摩耗を放置しておくと音だけでなく最悪プーリーとしての機能を果たせずに
ベルトの駆動を妨げ断裂や外れたりと良い事はありません。
そうなると断裂したベルトの破片がウォーターポンプに巻き付きロックしたり、ファンブレードを破損させたりと
冷却システムやエンジン内部にも影響を及ぼす可能性が有る為、
出来るだけベルトの交換と同時にプーリーやテンショナーの交換をした方が良いでしょう。
エンジンオイル交換。
10分~15分程アイドリングを行い古いオイルを排出。
オイルはフラッシング剤で落とされた汚れと共に真っ黒な状態で排出されました。
エンジン内部に古いオイルを残さない様にする為、
排出には出来るだけ時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで行います。
オイルの管理がされている車輌はフラッシングをしても汚れの排出はやはり少ないので、
エンジン内部をクリーンな状態に維持する為にもオイル交換サイクルをしっかり守る事が大切です。
新旧のオイルエレメント。
交換の際に使用するパッキンやOリング等も新品へ交換。
古いオイルを排出後、新しいオイルエレメントを装着し、
規定量のエンジンオイルを注入してエンジンオイルの交換が完了。エンジンオイル交換後は必ずオイルインスペクションをリセットします。
表示を見ると数値がマイナス…?
今までリセットしていなかった様でこれではオイル交換時期の目安になりません。
オイル交換時期を示す為に装備されている機能なので、
オイル交換後は出来るだけリセットして交換サイクルを把握しておいた方が良いでしょう。リセット完了です。
走行していると数値は徐々に減っていきます。
22,000Km~20,000Kmになったらエンジンオイルの交換時期になります。
新旧のフューエルフィルター。
フューエルフィルターに交換された形跡が無かったので交換。
燃料に含まれた不純物を取り除きクリーンな燃料をエンジンへ供給させるので定期的な交換が必要になります。
頻繁に交換する事は無いのですが、走行距離などを目安に交換する事が必要になります。クラッチの交換作業に入ります。
ミッションを降ろす前に遮熱板、マフラー、プロペラシャフトを取り外し、
同時に下廻り他箇所に問題が無いか確認します。外したプロペラシャフト。センターベアリングの状態などチェック。
車体からミッションを降ろしました。
クラッチ交換作業の前にスチーム洗浄を行い綺麗な状態にしてから作業を進めます。レリーズベアリングを外し、その他のパーツやハウジング内に問題が無いか状態を確認します。外したクラッチディスク・クラッチカバー・レリーズベアリング。
不具合無く正常に作動していたのか歪みや摩耗具合を確認。
クラッチカバーとディスクのアタリが悪く、部分的に接触面が焼けたような色になっていたので
歪みも出ているようです。
各パーツを装着する前にハウジング内も綺麗に洗浄。新品のクラッチディスク・クラッチカバー・レリーズベアリング。
三点をセットとして交換する事がクラッチ交換の基本になります。車体に装着する前にスプラインにグリスを塗りディスクの作動をスムーズに行えるようにしておきます。
こういった一手間がディスクの引きずりや貼り付きを防止するわけです。
センターを合わせクラッチ一式を装着しミッションを車体へ組んで、ドライブシャフトやマフラー等の
パーツを全て戻したらクラッチ交換作業が完了。
その後、テストランを行い修理箇所やその他に不具合が出ないか確認します。
異音も消え、クラッチ操作もスムーズになりジャダーも解消された事で安定した走行が可能になりました。

今回はクラッチとエンジン部からの異音で入庫したのですが、
点検により冷却システムの異常を発見する事が出来ました。
最悪な場合、オーバーヒートで走行不能やエンジンにダメージを与える可能性もあったので
トラブル発生前に発見出来た事は良かったと思います。
近年の車輌はコンピューター制御で管理され、不具合が出ればエラー表示で教えてくれるのですが、
それだけで全てのトラブルををカバー出来る訳では無く、実際に確認しないと判断出来ない事もあります。
やはり、定期的に目視で各部をチェックしていくというプロセスはどの年代の車輛も一緒ですね。

2017年04月02日