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第62回 B8 4.0 Limousine

 

 
 
 
 
 
今回のメンテナンスレポートの主役はALPINA B8
それも4.0。日本に4台のみ正規輸入されたディーラー車の一台です。
4.6は意外と良く見ますが4.0は非常に珍しい。オーナーのこだわりを感じます。

メンテナンスメニューを提案する為、お預かりしオーナーの許可をもちろん取った上でテストラン。
高速、一般道と状況を変えながら距離にして150km程走ります。
分解点検だけで分からない事は実際に走る事により解決策が見つかる事も多いのです。
もちろん車輌特性が分かっていなければ全く意味が無いですけどね。

走行距離も40,000kmと魅力的。パッと見ただけであればコンディションも良好で
3シリーズのボディにV8DOHC315馬力のエンジンを乗せている為、その圧倒的なトルクとパワーで
誤魔化されてしまいそうですが、細かく車輌のチェックを進めていくとやはり経年による劣化が多く見られました。

このままでも乗用車として乗れない事は無い良い車。
でも乗用車としてのみ乗るのであればALPINAじゃなくても良い訳です。
オーナーはALPINAらしさを求めてご来店されました。

オーナーと打ち合わせし、プロショップとしての視点から見た現状の状態と
その改善策をお伝えし、その結果作業に移らせて頂きました。
 
 
 
 
まずはエンジンから。
コンパクトにまとめたV8ユニットですが、エンジンルームは窮屈に見えますね。
正直、整備性は他のモデルと比較して決して良いとは言えないレイアウトです。
 
 
 
 
 
カムカバーガスケットからのオイル漏れ修理。プラグホール内にオイルが溜まっているのが分かります。
 
 
 
 
 
 
 
 

新旧のガスケット。ゴムが随分ヤセてしまっているのが分かりますよね?
同時にカムカバーボルトガスケットももちろん交換。

 
 
 
 
 
クランクシャフトシールからもエンジンオイル漏れ。
なかなか気付き難い箇所でもあります。
 
 
 
 
 
シャフトシールを交換し、その周辺に付着したオイルも綺麗にスチームで落とし作業は完了。

金属と金属が重なり合う箇所には必ずガスケットが使用されており、経年や走行する事により必ずオイル漏れは起こります。
しつこいようですが、早期に発見し、処置を施す事により二次的被害を食い止めてあげる事が大事。

考え方は人それぞれなので押し付けはしませんが

M3、ALPINAといった車と良い付き合いをして行く為の最低限のエチケットであるのではないかと思います。
 
 
 
 
低速域でノッキングが目立った為、フューエルライン、インジェクターの洗浄、
フィルターの交換。燃焼室の洗浄を施工。
アクセルのピックアップも変わり、明らかにレスポンスが良くなるのが分かります。
 
 
 
 
 
もちろんフューエルフィルターも同時に交換。
外観からその汚れ具合は確認出来ないですが

交換後、中身を見たい方は言っていただければ、お見せしますのでお気軽に。
 
 
 
 
 
燃焼室の洗浄。バルブ廻りのスラッジの除去。
エンジンを掛ければ必ずスラッジは溜まります。定期的に施工し、コンディションを整えることが大事。

DMEテスター診断した所、トリガーコンタクトにエラーメッセージが出ており、リセットしても改善されない為、交換。
トリガーコンタクトはエンジン回転数を検知しDMEに信号を送ってあげる為のセンサー。
このセンサーに異常が生じると、DMEからの信号とセンサーからの信号のズレが生じ突然エンジンストールする事も。

DMEテスターもバージョンアップし、診断結果もPCからプリントアウト出来るようにセッティングしました。
結果表が見たい方は言ってくれればプリントアウトしようと思います。
(但し、預かっての修理の場合のみ。その場にいれば画面で見られますし。)
 
 
 
 
 
プラグも交換しました。ずいぶんと長い間交換された形跡がありませんでした。
オイルとスス汚れで真っ黒なのが分かってもらえると思います。
 
 
 
 
カムカバーガスケットを交換するのに、エアコンホースを外さないと交換出来ない。

整備性が良いとは言えないと言った訳はこのような箇所。
他にも何点かドイツ車としては強引とも思えるようなレイアウト配置がありましたが車の特性上致し方が無いでしょう。
その欠点を上回る魅力があるのですから良しとしましょう。

エアコン内部の真空引きをし、エアコンガスを注入し作業完了です。
 
 
 
 
 
強力なパワーを支える足廻りとブレーキ。
フロントはB8専用ブレーキシステムを備え、リアはM3Bのリアアクスルキャリアを使用している為、M3Bのキャリパーを使用。
B6やB3とは比較にならない程のストッピングパワーを誇ります。
 
 
 
 
今回、私が最も走行中気になったのが足廻りの状態。
1速から小気味良くシフトアップさせていくと、轍に異常に取られ、車体が安定せず
アクセルを踏み込む度、ステアリングが左右にガクッと持っていかれる状態。

折角のB8の良さを生かしきれていない状態。

各ブッシュの見直しと、ショックの交換。
B8は専用パーツが多いですが、車輌台数が少ないので日本にストックされているパーツは少ないのですが、
本国アルピナに発注でも、早ければ1週間。遅くとも2週間程でどのパーツでも入荷致します。
その他車種も同様です。
 
 
 
 
フロントアッパーマウント。赤印を付けた箇所の角度を見てもらえれば消耗の度合いはわかりますよね。
B8の場合、フロント重量は通常の6気筒モデルより重いですから、早めに見直しされた方が良いでしょう。
 
 
 
 
もちろんリアアッパーマウント。ロアアームコントロームブッシュも交換。
 
 
 
フロントリアのスウィングサポート、スタビブッシュも交換。

今回交換したブッシュはキレやワレ等目視で損傷が認められる箇所が少なかったですが
足廻り全体のブッシュパーツとショックアブソーバーに万遍無く消耗が進み、
その結果B8の持つ瞬発力をしっかりと受け止める事が出来ない状態になっていました。

目視でキレやワレ等の消耗が見られなくても、その消耗具合を判断し、的確な作業を実施するのが私達の仕事です。

その判断をする為に時間がかかってしまう場合もありますが、ご来店いただく
多くのオーナーの皆様にはご理解頂き、非常に有り難く思います。
 
 
最後に4輪アライメントを調整し、規定値に合わせた上で細かく調整を加え、最後にテストランを実施。
最終テストも100km程走行し問題が無いことを確認し、作業は終了。

希少な車に数多く乗る機会が訪れるのは私達の数少ない特権でしょうか。
その車の良さばかりに目が行きがちになりますが、その欠点も冷静に、把握分析し、
今後のメンテナンスの知識として蓄えることを忘れることは有りません。

もちろんですが今回の主役であるB8の総合的なコンディションは随分と底上げされています。
ALPINA特有の足廻りの秀逸さは口で説明するのが難しいほど。

B10V8のようなエンジンフィーリングを持ち合わせながらもそのボディは3シリーズ。
その良さも欠点も、醍醐味として味わえるのはオーナーになった方のみの特権でしょう。
 
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