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第69回 E30 M3 Right Steering

 

 
 
EU並行車のM3です。
この時代のM3はディーラー割り当て台数も現在より少なく、並行車も多く目立つモデルです。
 
 
 
 
右ハンドルのE30M3。
珍しいモデルです。オーナー自身がイギリスモデルを日本へ持ち込んだ車輌です。

右ハンドルでありシフトパターンがクロスミッションなので運転すると最初は非常に違和感がある感じ。

ですがオーナーのこだわりが感じられ、こういった車は非常に興味がわきます。

今回の入庫は、車輌のトータルチェックを行い、メンテナンスを施していく内容。

わざわざ遠方よりご来店頂き非常にありがたく思います。
 
 
 
 
まずはテストランと下廻り、足廻りのチェックから開始。

テストランは100km程走行して、車の挙動やレスポンス等のチェック。
何人かで乗り、そのインプレッションをまとめます。

次に目視と分解による点検。

まず目に入ってきたのがデフからのオイル漏れ。
各部にオーナーが万遍無く手を入れているようですが、中途半端に手直しを加えている箇所も多く
やり直し的要素の強い作業も今回はある程度発生しそうです。
 
 
 
 
リアのハブベアリング部は走行中異音が大きく点検した結果、赤矢印のように
一度、手直しを加えた形跡があります。分解点検をした結果、
ハブベアリングとドライブシャフトの交換が必要なほどのダメージがありましたので
交換予定として考えます。
 
 
 
 
ミッションシャフトシール部からもオイル漏れがあり、良く確認すると、コーキングが打たれていました。

これではいけませんね。

ユニバーサルジョイントも未交換でしたので二度手間にならないよう交換パーツリストに入れます。
 
 
 
 
 
 
 
 
至る所から水漏れがありました。ジョイント部のゴムが痩せと劣化により収縮してしまっている状態です。

エンジンルーム内の冷却ホースは全て交換が必要なようです。
 
 
 
 
シリンダーヘッドからのオイル漏れも確認出来ました。

一通りの不具合箇所をピックアップし、メンテナンスメニューとしてまとめお客様に内容をお伝えする準備だけでも
1週間程度かかってしまうケースもあり、非常にご迷惑をおかけしますが
適切なメンテナンスメニューを作成する為にはどうしても必要な事なのです。
幸い皆様にはご理解を頂いておりますので非常に助かっております。
 
 

今回の修理内容は

各オイル漏れの修理。

足廻りブッシュ類の見直し。

リアドライブシャフト部の修理。

エンジンヘッドオーバーホールとエンジン調整等

車輌のコンディションの底上げを考えメニューを提案させて頂き、作業を進めることに致しました。

 
 
 
 
 
 
まずは足廻り部とドライブシャフト部。

ロアアームはASSYで交換。写真の通りブーツが切れ全くその機能を果たしていません。
このまま放ってしまうと、この部分だけでは無く、他の部分にも悪影響が出ます。
 
 
 
 
 
 
 
 
ステアリングタイロッドエンドも交換。M3はこのパーツを交換する事により
クイックなステアリング操作としっかりとフロントが接地しているダイレクト感が戻ります。

フロントスウィングサポート、フロントスタビブッシュもこうなってしまうとその性能に期待は出来ません。

リアスタビブッシュ、リアスウィングサポート、ロアコンブッシュはオーナーが手直しを加えていた為、今回は未交換です。
 
 
 
 
リアメンバーブッシュは交換。
タイヤの偏磨耗が目立ったり、直進安定性が得られない場合は交換が必要です。
 
 
 
 
 
 
左リアのハブベアリングとドライブシャフトは交換。ベアリングが焼き付き異音がしていたようです。
 
 
 
 
プロペラシャフトベアリングも交換。
過剰整備はおすすめしませんが、同時に施工された方が良い場合は交換を強くおすすめしております。
後になってプロペラシャフトを外す作業だけでも一仕事です。
 
 
 
 
 
 
ミッションシャフトシールの交換。
常に力が加わる箇所なので比較的オイルは漏れやすい箇所でもありますが
コーキング等はせず、オイル漏れが見つかった場合は交換しましょう。
 
 
 
 
 
 
 
 
デフのサイドシールも交換。
併せて、デフマウントの交換も実施。
デフケース内もギアスラッジが目立ったので洗浄致しました。
 
 
 
 
最後はエンジン部。
当初はオーナーとの打ち合わせでステムシールの交換とバルブクリアランスの調整を含めた
ヘッドオーバーホールの予定のみでした。
 
 
 
 
ヘッドが外され、ピストンヘッドが確認出来ますね。
カーボンの堆積が目立ちます。
 
 
 
 
ピストンヘッドのアップです。このカーボン落とすだけでアクセルピックアップが軽くなりそうだなぁなんて思っていると。
 
 
 
 
シリンダー内壁に傷が。。。

もちろんこの部分はオイルで潤滑されているとはいえ鉄と鉄が合わさっている部分ですから
細かい傷は絶対に付いてしまいます。

もちろん許容の範囲であれば、そのままヘッドオーバーホールのみを実施し
元に組み上げますが、ツメでなぞると引っかかるくらいの傷でしたのでオーナーに現状の説明をし
腰下までのオーバーホールのご提案をさせていただいた所、快諾していただきました。

私達もこのように症状として表面化していないトラブルを分解時発見することは稀にあるのですが
それをお客様に黙ったまま作業を進めたり、言われた通りの作業のみだけを実施する事はありません。
作業をするしないに関わらず、お伝えするのが義務だと考えます。
 
 
 
 
ピストンは本国に大至急で日本に送らせるよう発注し、その間にヘッドの作業を完了させておきます。

まずは洗浄です。カーボンスラッジはただ単に洗ってるだけでは落ちませんので
ワイヤブラシ等を使い長年のカーボンスラッジをこそぎとって行きます
 
 
 
 
最初の状態と比べると随分綺麗になりました。
 
 
 
 
排気ポートもエンジンに火を入れればすぐにこのような色になってしまうのですが、
堆積したカーボンが厚ければそれだけ排気干渉しますからアルミ地が見えるまでしっかりと取り除いてあげます
 
 
 
 
 
 
インテークバルブとエギゾーストバルブ。
曲がりも無く、このまま研磨し使用しますがエキゾーストバルブはフェイス面が
若干荒れていた為、ブロックのホーニングと同時に修正する事に致しました。
 
 
 
 
エンジンも下ろし、分解し各パーツの洗浄とチェックを同時に進めます。
 
 
 
 
今回は燃焼室内に加工を施しました。

鏡面仕上げにする事により、カーボンの付着の減少、耐ノッキング性を向上させます。

この作業はチューニングの部類に入る作業で、
凝り出すと燃焼効率や空気や燃料の流量係数等の少々複雑なお話になり非常に長くなるお話になってしまいますので
機会があれば、また詳しくお話し致します。
 
 
 
 
ご存知の方も多いとは思いますが、研磨の際はバルブシートを傷つけないよう、細心の注意が必要です。
バルブシートを傷つけたりしてしまうと、バルブと燃焼室の密閉性がなくなり圧縮漏れを起こします。

もし傷つけてしまったら、シリンダーヘッドを面研に出す際にシートカットしてもらいましょう。

今回はシリンダーヘッドの面研はしない予定でしたから慎重に作業を進めました。

左の写真が研磨前、結構段差が目立ちます。コレを取ってあげるだけでもカーボン付着は大幅に減少致します。
 
 
 
 
人間の心理か、光りだすとココがもうちょっと、アソコももうちょっと、とキリがなくなりそうですし
今回は本格的なヘッドチューンでは御座いませんので ある程度の所で作業は終了。

もちろん各燃焼室の容積合わせをし、燃焼のバラツキが起きないように施工しています。
 
 
 
 
 
 
エンジンを下ろした時には必ずエンジンルーム内も洗浄。
洗浄したからと言って機関のコンディションの上下があるわけではありませんが

施工する側のこだわりの問題でしょう。
 
 
 
 
クランクシャフトの曲がりをダイヤルゲージで測定し、ジャーナル部の傷、磨耗を点検し異常が無い事を確認。

コンロッドも異常は見られないのでそのまま使用。
 
 
 
 
ニューピストンは純正93.755MMピストンを使用。オーバーサイズですが目視では全く分からないレベルですね。
 
 
 
 
シリンダーブロックもホーニングから戻ってきました。
非常に綺麗に仕上がっています。

右の写真はヘッドボルトのネジ山を切り直してあげている所。
 
 
 
 
クランクメタルとコンロッドメタルは傷と磨耗が多く見られましたので、当然交換致しました。
 
 
 
 
新しいメタル類は軽く研磨し組み込みます。
 
 
 
 
全てのパーツを組み込む準備が出来ましたので、個々のパーツを組み上げ
一基のエンジンを完成させます。
 
 
 
 
組み込む前にピストンとコンロッドの重量合わせを実施。

わずかな重さを無視し、エンジンを組み上げていくと、そのわずかな重量の違いが
体感できるほどのレスポンスロスにつながります。
 
 
 
 
こうやって腰下部を組み上げて行きます。
とても簡単に書いておりますが、地味でもあり非常に時間がかかる作業なのです。
 
 
 
 
バルブも全てカーボンを除去し、フェイス面を修正しました。綺麗でしょう?
 
 
 
 
ステムシールも新品に交換し、バルブスプリングコンプレッサーを使い組み上げていきます。
 
 
 
 
M3のエンジンはピストン部、バルブ部、カムシャフト部と3段で構成されているので
スタンダードと違い若干、手間がかかってしまうわけです。
チェーンガイドも新品に交換。ここまでくればエンジンルームに収まるのもあと一息です。
 
 
 
 
ちょっと外出している間にエンジンが載っていました。
新しいリフトが配置されてからは重整備も非常にスピーディに進める事が出来るようになりました。

補機類を元に戻し、車の血液ともいえる各オイル、冷却水を入れ
プラグを挿さずにクランキングを繰り返し油圧を上げていきます。
油圧が上がれば、プラグを装着しエンジン始動です。

M3特有のメカニカルノイズの混じったエンジン音がピット内に響き渡ります。
何度経験してもピンと空気の張り詰める瞬間でもあります。

1時間程アイドリング状態で待機。
乱れの無い一定のリズムでエンジンが運動している音は良いものです。
 
 
 
 
最後に一気筒ずつタペット調整をし、エアコンガスも真空引き後充填し作業は完了。
 
 
 
 
エンジン組み上げ後の慣らし運転もオーナーから依頼され、しばらく乗せて頂きましたが
非常に軽くて良い感じ。工場長よりリミット3000rpm厳守と言われていましたが
あっという間にエンジンが回ってしまい、慌てる事も多々ありました。

後半は上まで回しましたが、非常に良いですね。
乗らされている感ではなく、乗っている感が非常に強く
いまだに根強いファンが大勢いる事に納得出来るモデル。
現在所有しているオーナー達が現代のモデルに目もくれず所有し続ける気持ちが分かります。

現在E30 M3を所有している方。大事にしてあげて下さい。

もし、売却をお考えの場合は、まず当社にご相談いただければと思います。(笑)
 
 
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